第10話 ダンジョンエラー

 かねてより見据えていた目標を超えてなお、僕の自死は続く。

 この場所で達成できる条件には限りがあったのか、【痛縛の強制】以降、新しいスキルを獲得することはできなかった。

 だけどそんなこと、今の僕にはどうでもよかった。



『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』



 心臓を突き刺して死んで。

 生き返って、魔物を殺して、時には死体を喰らって。

 そしてまた、自死を行う。

 そんな地獄のような日々をただひたすらに繰り返していた。



『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』



 言葉では表せられないほどの苦痛だが、それでもやめようと思ったことはない。

 体が再生されると同時に、復讐心はさらに純度を増して膨れ上がってくる。

 体だけでなく、心すらも再生するのが【無限再生】の真価なのだろう。


 ……『魂の再生成』とはよくいったものだ。



『攻略報酬 SPを10獲得しました』

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『攻略報酬 SPを10獲得しました』

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 ただ、無限再生とやらも決して万能ではないらしい。

 最も重大な復讐心を蘇らせる代わりに、それ以外の感情は少しずつ切り捨てられているようなのだ。

 嬉しさ、悲しさ、楽しさ――そういった、人間が当たり前に持っている感情が少しずつ薄れていくのを感じる。

 残ったのは怒りや憎しみといった、復讐に必要な動力源エネルギーのみ。



『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

『攻略報酬 SPを10獲得しました』

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 故郷で過ごした家族との日々も、記憶だけははっきりしているのに、あの時に抱いたであろう感情だけは思い出すことができなくなっていた。


(ごめん、みんな……その代わり、仇だけはきちんと取るから)


 その誓いだけが今日の僕を突き動かし、また自死を行う。




 殺して。


 殺して、殺して、殺して。


 殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して。




 無限の死を繰り返す中で、僕の憎しみは際限なく湧き上がる。

 

 僕をパーティーに誘い、優しく接してくれたリーダーのアルト。

 常日頃から意思の強さの重要性を語ってくれた戦士のガレン。

 いつ何時でも、美貌と優雅さを保ち続けていた聖女のシエラ。

 誰よりも知性と誇りを大切にしていた賢者のセドリック。

 そして――あの場にはいなかったが、


 彼らとの暖かい思い出は、この地獄にて全て反転する。

 アイツらだけは絶対に、僕の手で――いや、




――絶望のどん底に突き落としてやる」




 何か、大切なものが塗り替えられてしまったような感覚のまま――俺はもう一度だけ、誓いを口にした。



 ◇◆◇



 そんな中。

 いつものようにブラック・ファングを倒した直後、初めての現象が訪れた。



『ダンジョンエラーが発生しました』


『挑戦者はこれ以上、攻略報酬を受け取ることができません』


『ダンジョンエラーが発生しました』

『ダンジョンエラーが発生しました』

『ダンジョンエラーが発生しました』

『ダンジョンエラーが発生しました』

『ダンジョンエラーが発生――――



 それは耳をつんざくほどの、甲高い警告音とともに鳴り響いていたのだった。

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