第二十四話「アイスクリームづくり」

「まずは、コンロの上に鍋を置く」


 カエデは、鍋と調理器具を持って来て、コンロの上に鍋を置いた。


「ほぉー」


 コテツは、カエデの行動を興味深そうに見ながら、観察していた。


「コテツ。アイスクリームを、たらふく食べたいか?」


「うん!」


 カエデは、コテツの元気が良い頷きに、笑みを見せる。


「なら、牛乳を一本丸々使おう!」


 カエデは、二リットルの牛乳を鍋の中に入れた。


「すごい」


 アカネは、感心した様子で、カエデの作業を見守っている。


「次は、蜂蜜を大さじ八杯入れる」


 カエデは、鍋と一緒に持って来た計量スプーンを取り出した。そして、大さじ八杯分の蜂蜜を鍋に加える。


「ここで、コンロのスイッチを入れて、火を点ける」


「火を点ける? 火種なんか、見当たらないぞ?」


 コテツは、周囲を見渡している。


「コテツ。もしかして、コンロを見たことがないのか?」


 コテツは、カエデの問いかけに頷いた。


 子供に、火を使わせるのは危ないが、俺とアカネがそばにいる。経験として、コンロの火を点けてもらおう。


「コテツ。ちょっと来てくれ」


 カエデは、コテツをそばに来るように読んだ。


「来たぞ」


 コテツは、カエデのそばに座る。


「これから、コテツには火を点けて貰う。このコンロに付いている、つまみを持ってくれ」


「これか?」


 コテツは、カエデの言われた通りに、コンロのつかみを掴んだ。


「時計回しに、回してみろ」


 コテツは、カエデの言われた通りに、つまみを時計回しで回した。


 チチチチ。ボン!


 コンロは、音を鳴らし、火が点火された。


「うわ!? 火が突然現れた!」


 コテツは、後ろにひっくり返りそうな勢いで、倒れそうになる。


「これが、コンロだ。人間の家には、必ず一台はあるぞ」


「す、すごい」


 コテツは、声を震わせながら、火が付いているコンロを見ている。


「話は、脱線してしまったが、アイスクリーム作りの続きだ」


 カエデは、一緒に持って来た調理器具の一つ、木べらを取り出した。


「この二リットルの牛乳を中火で煮詰めていく。時間は、二十分以上。目安は、鍋の中にある牛乳が、半分ぐらいの量になるまでだ」


 カエデは、コンロの火を中火に調整して、牛乳が入った鍋を煮詰め始めた。


「ここからは、体力勝負だ。牛乳は、温度が高くなってくると、空気が触れる表面に膜を作り出す。その膜は、アイスクリームにはいらない物だから、できるだけ作らないように、木べらを使って混ぜ続ける」


 カエデは、鍋の中にある牛乳を木べらで、かき混ぜ始めた。





「とろみが出て来たな」


 牛乳を煮詰め始めてから、十分が経過した。


 とろみが出てきているおかげで、木べらが少し重くなってきている。


「アカネ姉ちゃん。とろみって、美味いのか?」


「私も、わからない」


 コテツとアカネは、十分間、カエデの行動を見守り続けていた。


「くっ」


 本来のレシピは、牛乳一リットルに蜂蜜を大さじ四を入れるレシピだ。煮込む時間も増えている分、腕が疲れて来た。


 カエデは、牛乳をかき混ぜている木べらを、反対の手に持ち替えて、かき混ぜる作業を継続する。


「カエデ、貸して」


 アカネが、カエデが持っている木べらを手に取った。


「アカネ待ってくれ、招き入れたのは俺だ。俺が、最後まで作る」


「ううん。カエデが、頑張っているなら、私にも頑張らせて」


 アカネは、着物の裾をめくり、木べらで牛乳をかき混ぜ始める。


「ア、アカネ姉ちゃん。僕も手伝うよ」


 コテツは、アカネが木べらを使い、牛乳が入っている鍋を、かき混ぜ始めたのを見て、アカネの傍に来た。


「ありがとう。疲れたら、お願いする」


「わ、わかった」


 アカネは、黙々と牛乳が入っている鍋を、混ぜ続ける。





「ぶくぶくしてる」


 アカネが、鍋をかき始めてから、さらに十分が経過した。


 鍋に入っている牛乳が、ぶくぶくと煮始めている。


「アカネ。大丈夫だ。このまま、作業を続けてもいい」


「わかった」


 アカネは、真剣な表情で鍋をかき混ぜ続ける。


 アカネも、そろそろ疲れ始めている頃だ。そろそろ、俺が変わろう。


「アカネ姉ちゃん。僕にもやらせて!」


 カエデが、声をかけようとしたら、コテツがアカネに声をかけた。


「……わかった。コテツ、変わってくれる?」


「うん!」


 アカネは、コテツに木べらを渡す。


「こういう風に、混ぜればいいのか?」


 コテツは、恐らく料理自体が初めてなのだろう。不器用な感じで、木べらを使っている。


「もう少し、かき混ぜやすい持ち方にした方がいい」


「わ、わかった」


 コテツは、持ち方を変えて、鍋をかき混ぜ始める。


「その調子だ。できるだけ、鍋の側面にある牛乳から、かき混ぜると良い」


 コテツは、頷いて、鍋の中にある牛乳を、かき混ぜ始めた。


「よし、後は俺達三人で、交代しながら、鍋の中にある牛乳が半分になるまで、かき混ぜ続けよう」


 カエデ達は、疲れたら交代しつつ、鍋の中にある牛乳が半分になるまで、かき混ぜ続けた。

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