第二十三話「スーパーという名の」

「ここって」


 カエデの前には、アカリから教えてもらった、スーパー的な店の前にいた。

 都会にいた時、仕事の行き帰りで、良くお世話になった店だ。看板に六の数字が見える。


「シックス・イレブンブンじゃないか」


 目の前にあるのは、スーパーではなくコンビニだ。もしかして、霧隠れ村の人は、コンビニをスーパーだと思っているのか?


「とりあえず、入ってみるか」


 カエデは、コンビニの中に入ってみた。


「いらっしゃいませー」


 コンビニの中は、いたっていつも通りの内装だった。おにぎりに、パン。ドリンクや雑誌まで揃っている。


「コンビニでもないのか」


 コンビニには、必ず置いてあるはずのアイスや、冷凍食品など、冷凍関係の物が一切置いてなかった。


「すみません」


 カエデは、コンビニの店員に話しかける。


「どうしましたか?」


「このコンビニには、アイスが置いていないのは、どうしてですか?」


 カエデは、思った疑問を、コンビニの店員にぶつけた。


「えーと、自分も店長に聞いた話なんですが、冷凍食品を本土から持ってくるには、コストが高すぎるらしいです。申し訳ございません」


 コンビニの店員は、頭を下げて謝った。


「あ、謝らないでください。自分も、ただ気になっただけなので」


 冷凍食品を本土から持ってくるのは、手間がかかるのか。


 カエデは、コンビニの店員と別れて、コンビニの中を見て回る。


「あるもので、アイスクリームが作れるか調べてみよう」


 カエデは、携帯を開いて、コンビニにあるもので、アイスが作れないか調べてみた。


『材料は、二つで簡単! お手軽アイスクリーム!』


 材料が二つ!? これなら、作れるのではないか?


 カエデは、動画に書いてあった材料を見てから、コンビニの中を調べてみた。


「書いてあった材料が揃ってある。これなら、作れるかもしれない」


 カエデは、コンビニの中にあった、材料二つを手に取った。





 ピンポーン。


 夜になり、人間は寝始め、妖怪が活動を始めた頃。カエデの家のチャイムが鳴った。


「はーい」


 カエデは、玄関の扉を開く。


「連れて来た」


「お、お邪魔します」


 扉を開けると、目の前にアカネとコテツが立っている。


「連れて来てくれて、ありがとう」


 今日、コンビニからの帰り道、赤い首輪をした白猫の姿をしたアカネを見かけた。


『夜になったら、コテツを家に連れて来てほしい』


 アカネじゃなかったら、ただの猫にお願いした人になっているとこだった。アカネで良かった。


「気にしないで」


「そういえば、昼間にあった時は、言葉を喋らなかったな。何か理由があったのか?」


 よくよく考えてみてみれば、何で妖怪が夜型の生活をしているかも、わかっていない。知らないことだらけだ。


「太陽が出ている間。妖怪は、妖力が使えない。猫の姿で喋る時、妖力を使う」


 妖力が使えなかったから、喋れなかったのか。


 カエデは、コテツの方に目を向ける。


「アイスが、あったのか?」


 コテツの目は、輝いていた。


「いや、霧島にはアイスは置いてなかった」


「そうなのか」


 コテツは、落ち込んでいる様子を見せた。


「そこで、俺は考えたんだ。アイスを食べる方法」


「どうすればいいのだ?」


「作ればいい」


「作る?」


 カエデの言葉に、コテツは首を傾げた。


「家の中に入ってくれ」


 カエデは、コテツとアカネを、家の中に招き入れた。





「なあ、アイスって俺達でも作れるのか?」


 居間の中に入ったコテツは、興味津々な様子で、カエデに訪ねた。


「少し手間は、かかるが作れるぞ」


 カエデは、居間に置いてある机の上に、ガスコンロを置いた。


「カエデ。それは、ガスコンロ。アイスなのに、火を使うの?」


 アカネは、カエデがガスコンロを出したことに驚いている。


「アイスって、冷たいと聞いているぞ」


 コテツも。不思議そうな顔をして、カエデの顔を見ている。


「火は、俺が作るアイスに、必要不可欠な要素なんだ」


「なぁ! 何のアイスを作るんだ?」


 コテツは、目を輝かせながらカエデに聞く。


「俺が、作るのは、アイスクリームだ」


「アイスクリーム?」


 コテツは首を傾げた。


 そうか、コテツはアイスクリームの形を知らないんだったな。名前だけ、言われてもピンと来ていない様子だ。


「実際に、作ってみて食べてみよう」


 カエデは、部屋の隅に置いてあった袋の中から、牛乳と蜂蜜を机の上に出した。


「カエデ。その二つで、アイスクリーム作れるの?」


 アカネは、カエデの出した材料を、まじまじと見ている。


「今回作るのは、牛乳と蜂蜜で作る。お手軽アイスクリームだ」


「牛乳と蜂蜜で、作れるアイスクリーム?」


 コテツは、カエデの言葉を聞いて、首を傾げた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る