第2話 おら転生さしただ
「う……う~~~ん……」
うめき声をあげる田吾作。意識が少しずつハッキリとし始めたところで、色んな疑問が浮かんでくる。
お、おらぁ死んじまっただ? だ、だども、死んじまったってわりにゃあ、すっげえ気分がすっきりしてきたような気がするだ……。
ゆっくりと目を開ける。すると田吾作の視界に入ってきたのは、どこまでも広がる爽やかなスカイブルー、一色の光景。
「はえ〜……綺麗な空だなやぁ……」
その時吹きすさぶ、爽やかな一陣の風。その風によって、さわさわと音を立てる草の音。田吾作の鼻腔をくすぐる、草いきれの香り。それらから考えて、田吾作はどうやら草原で寝そべっているようらしい。
「変だなやぁ……。おらぁ、崖から落ちて……」
死んだはずだ。それなのに、なぜか生きている。しかも気分爽快。こんな気持ちさ生まれて初めてだってほどに清々しい。もしかしてこれが天国ってところだか?
ゆっくりと身体を起こし、周囲を見渡す。
一面に広がる大草原。おかしい。こんな場所、おらんとこの近くにゃねえだ。ってことは、やっぱりおらぁ、おっちんじまっただか……。
田吾作がまたも絶望に飲み込まれそうになった、その時である。
「も~やっと起きてくれたよぉ」
という、半ばあきれたような声が聞こえてきた。
びっくりして辺りをもう一度見回してみる田吾作。しかし、人の姿などどこにもない。
あんれぇ、空耳だか……と思ったところで、
「上だよ、上~!」
という声が聞こえたので、頭上を見上げてみる。
すると、どうだろうか! そこにいたのはなんと、羽の生えた小さな少女の姿であった。
「な、なんだぁ? おらぁ、夢でも見てっだか? んでもって、目が覚めたらいつもの布団の中さ寝てるってぇオチってやつだか?」
「はぁ? 何言ってんのよ! せっかくあたしが助けてやったってのに!」
不服そうな顔をして田吾作の顔の前まで下りてくる少女。よく見ると少女は、なかなか際どいレオタード姿をしている。そんな少女の姿を見て、女性慣れしていない田吾作は思わず赤面。
「はえぇ……めんこい娘っこだなやぁ……」
「何言ってるかよくわかんないけど、まずは私にお礼を言わなきゃいけないんじゃないのかな? 私はあなたの命の恩人なんだから!」
そんなことを言われても事態がよくのみこめない。だが、この少女にはどこか逆らってはいけないような気がしたので、とりあえず言われた通りにお礼だけは言っておいたほうがいいようだ。
「た、たすけていただいたそうで、す、すまんこってす……」
深々と頭をさげる田吾作を見て、羽の生えた少女は小さな胸を、ふんっ! とこれでもかとのけぞらせながら言った。
「ふっふっ~~ん! 苦しゅうないぞぉ! さて、満足したから本題に入らせてもらおっかな。と、その前に自己紹介させてもらうね。あたしの名前はリリー。見ての通りの妖精よ」
「よ、妖精?」
首をかしげる田吾作に、妖精ことリリーが急き立てる。
「ほら! 今度はあなたの番! 自己紹介!」
「え? あ、ああ、わ、わかっただ。おらの名前さ、たごさ、くと言うだ」
あまりの急展開に、思わず変なところで名前を区切ってしまった。すると今度はリリーが首をかしげてみせる。
「タゴサ・クーなんて、妙な名前ね。呼びにくいからタゴって呼ぶことにするわ」
「い、いや、おら……」
田吾作が訂正しようとしたが、リリーは聞く耳を持たず、
「タゴ――生まれ変わった気分はどう?」
という、信じがたい言葉を投げかけてきた。
「生まれ――変わった?」
「そうよ。タゴ、自分の身体をよく観察してみてよ」
リリーから促され、しげしげと自分の身体に視線を落とす。
「こっ?! これはっ?!」
驚くべし! 身長も低く、ちんちくりんな体型と田舎臭い格好だった田吾作の姿が、筋骨隆々とした高身長のタフガイとなっていたのだ!
着ているものも、スマートなジーパンと無地のティーシャツという、田吾作の今の肉体を美しく誇示するようなものとなっていた。
田吾作が驚きの声をあげていると、リリーが笑顔で田吾作に告げた。
「転生おめでとう。そしてよく来てくれたわね――あなたが救うことになる世界へ、勇者タゴサ・クー」
田吾作クエスト〜農業でレベルアップ?! おらこんな村いやだと思ってたら転生したので、異世界さ救ってみるだ〜 日乃本 出(ひのもと いずる) @kitakusuo
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