第2話 旅立ち(白目)

 俺のスキルは柔道。あ、そうか。この異世界は魔法が無い本格ファンタジーなんだろうな。なんだ、それならまあ、納得はできないけど、とりあえず我慢しよう。


「それで、柔ちゃんのスキルなんだけど。」

 どうせ、柔道だろう。俺より数倍強そうだし、現役だと。

「柔ちゃんは、すごいわよ。まず、基本ジョブが魔法使い。そしてサブジョブがモンクね。レベルで言うと、すでに5つ星級の力を持っているわ。あ、この世界でトップクラスの人間は7つ星が限界って言われてるわ。」


 は?魔法使い?モンク?何言ってんのこの女神。ジョブとかサブジョブとか。俺に入っていないでしょ。俺柔道とか現実的な格闘技なんですけど。それになに?おれより明らかに全盛期は柔道強そうな人が何で柔道スキルじゃなくて魔法使いとかそういうやつなの?

 しかもかわいいよ。正直、めっちゃかわいいよ。目はクリっとしていて、鼻はスラット高いけど大きくない、チョンと鼻先があがってて、唇も少しポタっとしてる。ずるいよ。体系もくびれがあって、めっちゃスタイルいいし、もう負けなしだよ。


 女神は道太郎を見て、まるで汚物を見るように話しかけた。

「道太郎、あんたの今の考えてること気持ち悪いわ。私一応女神だからわかるのよ。そして何よりネガティブすぎ。」

「女神、仕方ないだろ。これは仕方ないことなんだ。清廉潔白になるほどの高潔なスキルでもあれば違ったね。」

 女神はじっと睨みつけていたが、ため息をついて話し出した。

「道太郎、あんたのスキルはJUDO。正確には柔道ではないわ。正直初めて見たわ、こんなスキル。役に立つかも知らない。ちなみにジョブもサブジョブもない。スキルだけあるの。技のスキルは1つ星。」


ひどすぎるんですけど。


「とにかく、まあ、柔ちゃんに同行しなさい。そのスキルだけだったらまず一人では生きていけないわ。」

「道太郎さん、よろしく」

 ばあちゃんなのにかわいい。くそ、ずるい。


「わかったよ。俺がんばる。」

「その意気よ!道太郎!」

「一緒に頑張るんじゃ!!」


 みんなのやさしさが、つらかった。


 しかし、もう仕方ない。こうなったら、この世界を楽しむしかない!

「ありがとうみんな!ところで、柔さんのスキル一個くらい見せてくれないかな。ほら、俺もいずれスキル覚えるかもしれないし、目標的に、ね?」へへへと笑う

 女神の哀愁ある目はとりあえず見なかったことにしておこう。


「柔ちゃん、ステータス画面出して。手を空にかざす感じで出るわ。慣れてきたらノーモーションで出来るわよ。」

 柔ちゃんは手をかざした。半透明のステータス画面が出てきた。俺も出るのか…あとでやってみよう。

「いろいろ書いてあるが、あんまりわからんのう。カタカナばっかりじゃ。」

 そうか、中身はおばあちゃん、ゲームなんてやらないもんな。俺が補佐してやらないとな…

 柔ちゃんは、何か気づいたような表情をした。

「読めるのあったぞい」

「え~、いうぞ。…獄炎っ。」

 女神の表情が変わる。

「まっ…!!」

 待って、と言いたかったんだろう。でもすでに遅い。


 視界が光り輝き、熱風が渦巻く。俺は四肢がバラバラにもげたかのような衝撃を受ける。死ぬ。ぜったいに死んだこれは。そう確信した。


 しかし、意識がある。体中は火傷だろう。見る気にもなれない。恐る恐る目を開けてみる。空を飛んでいる。炎の柱が遠くに見える。周りには薄い膜が貼ってあり、おそらくバリアの役目だろう。女神がとっさに俺に対処してくれたんだな。しかし、守ってはくれたものの、衝撃波には対応していないのか吹っ飛ばされているということか。

 そんなことを考えていると、ようやく地面に着地した。バリアは地面への接地を和らげてくれたが、それでも衝撃を感じ、全身に痛みを感じた。


 なるほど。異世界でダメージ(瀕死)あり、スキルほぼなしで、始まるわけだ。俺の旅は。というか、さっき死んで、またこれ死ぬことになるんじゃ…

 道太郎は意識が薄れていった。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る