第13話 殺害された組員たち


 こうして…組員たちを退治した『シ-クレット・ソサエティjP』一同は、その時、その場から一目散に逃げる指揮を取っていた組長の跡を追った。


 そして…とうとう組長を捕まえた一同は、この事件の一部始終を聞き出した。


「テメエ!白状しねえとバラバラに切り刻んでクレルワ!さっさと一部始終を話しやがれ!」蘭舞留が声を荒げて組長に詰め寄ている。


「………」


「だんまりを決め込むつもりだな。そんな事が通用すると思っているのか。ハン!……ようし組員たちのように切り刻んでクレルワ!」


「ああああああ……わわっ分かった……はっは話すよ。実は…山住組は覚醒剤で全体の売り上げの30%もの収益を出していたのだが、警察に目を付けられ麻薬密売が出来なくなった。その為大きな損失を出してしまった。そこでその穴を埋めるべく模索していたところ、恵梨香ちゃんが媒体で大々的に取り上げられ話題になっていた。『これだ!』と思た我々は丁度その頃倒産した塚本家具店がテレビで取り上げられて、『アキハラホールディングス』に強い恨みを抱いている事を知った。その理由は、甘い話で近づいて来て、塚本家具店の技術やノウハウを盗んだ挙句、倒産に追い込まれた塚本家具を救うと言っておきながら『アキハラホールディングス』は、M&Aという名目でまんまと騙した。その事情を知った私は一緒に憎き『アキハラホールディングス』をやっつけましょうと会社社長と偽って近づいた。『あっ!これだ!アキハラホールディングス』に強い恨みを抱いている塚本一家を利用して恵梨香ちゃんを誘拐しようと思い立った」


 日本のトップに君臨する暴力団事務所の、覚醒剤年間売上高は3兆円強とも言われている。


 一方で2013年〜2022年のマカオの年間カジノ売上高の推移に目を通すと、コロナ過で極端に売上高は減少したものの、マカオの年間カジノの売上高は2019年のコロナ発生以前までは平均5兆円~6兆円という巨額な金額を叩き出していた。


 この統計からも分かるように世界各国至る所にカジノは存在するが、カジノとは法外な収入を叩き出すという事が分かった。


 こうして…恵梨香ちゃんを世界各国のカジノに連れ出し、賭博でぼろ儲けした山住組。恵梨香ちゃんの透視能力のお陰で、赤字続きだった山住組は息を吹き返した。何とその金額は年間5兆円にもなった。まさに金の卵、山住組は何としても恵梨香ちゃんだけは手放したくない。


 だが、用済みとなった塚本元社長と妻八重子の存在は、ただの足手まといでしかない。


 ★☆


 それでは恵梨香ちゃん誘拐事件はどのようにして行われたのか?


 その誘拐事件とは次のようなものだった。

 塚本家具社長は借金取りから逃げる為に、名前を変えて身元を隠し身元不明者でも雇ってくれる日雇いの仕事や住み込みの仕事で食い繋いでいた。例えば土木現場や水商売の高級クラブやホストクラブにキャバクラなどの裏方仕事で掃除や皿洗いなど点々としていた。だが、そこに甘い話で近付いてきたのが、山住組長だった。


「僕も懇意にしていたが、塚本さんと同じで散々酷い目に遭った。憎き『アキハラホールディングス』に仕返しをしてやろうじゃないか?『アキハラホールディングス』社長の一番大切な孫娘恵梨香ちゃんを誘拐してギャフンと言わせてやろう。借金返済の資金は一切こっちが出してやる。その代りに恵梨香ちゃんを誘拐してくれ!」こうして…話は付いた。


 恵梨香ちゃんは5歳位から、透視能力のある天才少女として媒体で騒がれていた。

 復讐に燃えていた妻子の元に行方不明の夫から連絡が入った。


「俺達を救って下さる善良な社長さんが現れた。そこで憎き『アキハラホールディングス』に復讐を考えている。社長宅で家の様子を探ってくれ!」


 こうして…早速塚本家具元社長の奥さんと娘美憂ちゃんが、秋原邸のお手伝いとして住み込みで働き出した。やがて美優ちゃんは恵梨香ちゃんとすっかり仲良しになり、誘拐に至った。


 だが、友達と言っても恵梨香ちゃんにとっては美優ちゃんは都合のいい「しもべ」で召使のような存在。


 祖父と両親が教育熱心で甘えることが出来なかった恵梨香ちゃんは、どんな事も聞き入れてくれる美優ちゃんと八重子さんだけが、唯一の救いとなって行った。そんな事情も有って誘い出すのも簡単だった。


「恵梨香ちゃん今春休みでしょう。私をお供にどこに行きたいのですか?ごめんなさいね。私お父さんが行方不明でしょう。春休みだからお母さんと行方不明のビラ配り手伝う話になっているの……」


「嗚呼……そういう事ね。日にちをハッキリ教えて欲しいって事ね。分かった。じゃあ?3月29日に2人で映画『オバケ名探偵ルフィ』観に行きましょう。嗚呼……美優ちゃん、あなたのお母さん八重子に車で送って貰いたいの。言っといてね」


「分かったわ恵梨香ちゃん」


  ★☆


「美優ちゃん今日は映画見に行く日よ。私のバック車に運んでおいて」


「ハイ!恵梨香ちゃん」

 こうして…車は一路映画館へ向けて走り出した。


「今日は外食してから映画観ようね?八重子も一緒にお食事お付き合いして下さいね」


「ハイ!分かりました」


「あれ?いつも行くショッピングモ-ルのある場所とは逆方向じゃないの。八重子道間違えている。しっかりしてね💢」


「フッフッフ!私達はあなたのお爺ちゃんで社長に身ぐるみはがされました。私達がどんな酷い目に遭ったか、御存じないようね?これからたっぷりと私達が味わった苦しみを知っていただこうと思いまして……」


「美優ちゃん何とか言いなさいよ。私がこんな酷い目に遭っているのに……」


「あなたのお爺ちゃんのお陰で塚本家具は倒産に追い込まれて、恵梨香お嬢様には奴隷のように顎でこき使われて……もうコリゴリ。あなたも私達が味わった苦しみを味わいなさい」

「なっ何を言っているの?私を助けるのがあなたの役目でしょう?」


「いい加減にして!」


「キャ————————————ッ!」


 こうして恵梨香ちゃんはマンマと誘拐された。

 

 あの日身代金引き渡し場所に現れた美優ちゃんが、何故嬉しそうにニコニコしていたかという事だが、それは…お父さんとまた一緒に生活できるようになったからなのだ。


 ★☆


 それでは『シ-クレット・ソサエティjP』一同は、正義の為と言えど、何故多くのヤクザを殺害したのか?それは日本では絶対許されない行為。何故そんな事をしてしまったのか?


 それは簡単な事だ。しつこく悔い改める様に説得したが全く聞く耳を持たなかった。それどころか、反対に反撃して来て悔い改める様子が微塵も感じ取れなかった。


 悪に染まった悪党どもを、このまま野放しにしては被害者が跡を立たないと悟った『シ-クレット・ソサエティjP』一同は、死に行く悪党どもに最後のチャンスを与えた。

 

 この永平島では『シ-クレット・ソサエティjP』一同が戦いに勝利した事で、山住組の組員たちの火の玉、人魂(ひとだま)が宙を舞い闇夜に恨めしそうに彷徨ている。それは…むらさきの闇夜を物憂げに彷徨う何とも幻想的で怪しげな火の玉たちだった。 

 

 それでは最後のチャンスとはどの様なモノなのか?

 そのお役目はエリック博士。


「散々悪事を繰り返して来たお主たちだが、最後にひとつだけチャンスを与えよう。あのなぁ?お前さんたちは残念なことに前世では殺害されて死んでしまったが、あの世で妖怪となって復活して困った人々を助ける気持ちは有るか?」


 すると人魂が早速エリック博士の元にフワフワと現れた。1人目の組員Aが人魂となってエリック博士に救いを求めた。


 ※人魂:人が亡くなったり、亡くなる2~3日前に、魂が体から離れて飛ぶことを火の玉や人魂(ひとだま)という。 この世に心残りがあるために、さまよい出てくると、昔から考えられている。


「エエエエエエェエエエエエッ!唯一生まれ変われるって妖怪になるって事?俺イヤだなぁ。気味の悪い化け物なんか……」


「罰当たり目が!お主は死ね————ッ!」


「あっ!ちょっと待った。こんな半端もんになっちまったが、子供のころの夢は飛行士だったんだ。空飛ぶ妖怪て何かいる?」


「嗚呼……居るには居るが?例えば……天狗とか、空亡(そらなき)とか、人魂とか、一反木綿とか、どれにしなさる?」


「天狗は赤い顔で目付きが鋭く鼻が妙に長くて絶対に嫌だ。人魂も不気味だし……」


「じゃ~空亡はどうじゃ?」


「じゃ~それでお願いします。どんな妖怪?」


「そうそう……な~んか?闇と黒雲、炎をまとった巨大な球体の姿で、太陽の様な……それが真っ赤というより、どす黒い赤で……巨大な妖怪らしいが?」


 ※空亡:百鬼夜行(日本の説話などに登場する深夜に行進する鬼や妖怪の群れ)の終わりに出現する強大な妖怪。


「な~んか太陽は良いが、闇と黒雲と聞くと暗いいイメ-ジ……チョット?」


「じゃ~一反木綿はどう?それこそしょっちゅう出てきている妖怪だが、木綿のようなものが、夕暮れ時に飛んできて、人を襲うらしい。でも夕暮れ時に上から長い紐で土瓶をスルスル・・・と降ろしてくる。良い所もあるみたいじゃ」


「嗚呼……じゃあ一反木綿になって生まれ変わったら、人助けの協力をします」


「はぁ!さようか?じゃあ……それ一反木綿にな~れ」

 こうして組員Aは妖怪となって妖怪村に復活した。


「おうおう凄い!火の玉の行列ができておるわい。じゃあ次の火の玉」


 今度は組員Bだ。


「今話は聞いた。俺は男だが、親が仕立て職人だったので裁縫が好きだった。だから……糸で反物を縫ったりしたい」


「嗚呼……さよか?それじゃあ……土蜘蛛がピッタリだと思うが?どうじゃ。巨大なクモで……人を糸で巻き付けるらしいが、それでも良いか?」


「ともかく糸を使いたいので……もし悪い行為をしそうになったら注意お願いします」


「分かった!分かった!どうも…人を食う妖怪らしいが?」


「はぁ?分かった!分かった!ハッキリ聞こえたが最後に何か小さな声で……人を何て言ったんですか?」


「そうか。聞こえなくて結構」


 まぁ妖怪は大概悪さはスルが、その反面人助けをする事も有る。だが、この妖怪村の妖怪たちは正義の為に活躍する妖怪たちばかりだ。


 次回最終話







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