第10話 犯人の正体⁈



「塚本さん話を詳しく聞かせて下さい」


「実は…私は塚本家具店を経営しておりました。だが、まんまと噓で塗り固められた『アキハラホールディングス』に散々騙され続けたのです」


「それは気の毒に…私に任せてください。悪いようにはしません。それでは、どんな被害に遭ったのですか?」


「最初は美味しい話で釣って来たのです。私は根っからの職人肌でモノづくりに一生懸命で、経営には向いていなかったのです。結局本人たちの言う事を真に受けて『アキハラホールディングス』の、思いのままになってしまったのです」


「それはどういう事ですか?」


「『アキハラホールディングス』は最初は、中途半端な家具を自分で見様見真似で作って下町で細々と店を出して、家具を売っていたのです。安くて質の悪い商品でも貧乏人はお金が無いので買います。そんなインチキ商法でも安く売っていた事で店舗を拡大して行ったのです。そしてこの私の商品に目を付け、高値で取引の話を持ち掛けて来たのです。最初は高値で商品を買って転売してくれるので、利益は上がりました。その内商品をもっと急ピッチで作ってくれと矢の催促。とうとう製品が間に合わないので、手伝い目的で手伝ってくれるようになったのです。こうしてまんまと技術やノウハウを盗まれてしまったのです。ここで済んで居ればまだ許せました。我が社は元々値は張るが、技術力に優れた高品質な商品として売っていた会社です。だが、『アキハラホールディングス』は、品質もそこそこで薄利多売を売り文句に業績を上げて行ったのです。こうして追い込まれた我が社はⅯ&Aの話に乗ったのです。だが、元々買い主企業である『アキハラホールディングス』に売却代金を支払う気など、さらさらなかったのです。私はM&A詐欺に引っ掛かったのです。分割払いの1回目は支払ったものの、2回目以降は一方的に我が社にクレームを入れたり、支払わないための言い訳を作ったりして支払わなかったのです。こうして我が社塚本家具は倒産してしまったのです。絶対に許せません」


 ※Ⅿ&A:「企業の合併・買収」のことで、2つ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)。


「それは酷い話ですね。私が助けてあげましょう」

 

 こうして…恵梨香ちゃん誘拐事件は起きた。


 って事は……この相談に乗ってくれた相手が、恵梨香ちゃん誘拐犯人という事?

 いやいや待て待て、この塚本家具元社長が犯人て事だって十分に考えられる。憎き『アキハラホールディングス』社長の孫娘を八つ裂きにしたい気持ちも分からなくは無い。


 ★☆


「ドラキュラ伯爵」が山梨県の恵梨香ちゃん引き渡し場所であった別荘で、待機していると動きが有った。


 ある日50代の目付きの鋭い男が、黒塗りの外車で別荘にやって来た。だが、いかにも慣れた様子で鍵を開けて入ってきた。という事はこの別荘はこの怪しい男の別荘だったのだろうか?


 その男はリビングのソファーに座ると早速誰かに電話をした。

「オウ……どうだ。話は進んでいるか?」


「あっ!ハイ上手く行きそうです」


「嗚呼……そうか……それは良かった。ウッフッフッフ!バカな男よのぅ?」

 そう言いながら葉巻を取り出して吸い出した。


 暫くすると玄関のドアが開いて”ドタドタ”と誰かが入って来た。


「ドラキュラ伯爵」は人間から見えないので、隅で様子を伺っている。


「ボスあの男、塚本元社長はまだ生かして置いて大丈夫でしょうか?」


「フッフッフ……そうよのぅ?これ以上あの男が生きていて良い事は一つも無い。殺せ!」

「ハイ!分かりました」


 ★☆

「オイ!大変な事実が判明した。皆直ぐに来てくれ。山梨の別荘近くにある。いつも皆でランチした「レストラン」すずらんで待ち合わせだ。大体1時間半位で着くだろう。チョット遅い昼飯にはなるが一緒にランチを食べながら話し合おう。いいな?」


「分かったぜチーフ。ガッテンダイ!」


 ワゴン車でやって来た一同は、早速腹ごしらえのランチを食べて、車に乗り込み別荘に向けて走り出した。


「それで……チーフ事実が判明したって……何が判明したって言うんだい?」


「それがどうも…この誘拐にはやはり美憂ちゃんのお父さんが絡んでいた。だが、そのお父さんも命の保証が無い。実は…美優ちゃんのお父さんと言うのが、塚本家具の元社長で『アキハラホールディングス』に、散々騙された相手だったんだ。それで……相談した相手というのが、とんでもない人物だったって訳さ。いつ殺されても不思議ではない。そこで一反木綿さんに跡を付けて貰ったんだ。するとその車は神戸最大級の暴力団事務所に入って行ったというんだ」


「嗚呼……あの『山住組』ね。って事は美優ちゃんのお父さんは、『アキハラホールディングス』社長に騙されて、今度は親切を装って近づいて来た日本最大級の暴力団『山住組』の餌食になってしまい、用済みになったので生き証人を跡形もなく消そうって訳?そこで…塚本元社長が命の危機にあるって事ね。これでは生き証人も跡形もなく消されて、全てを知ってしまった美優ちゃんの親子と恵梨香ちゃんの命も、分かったものではないって事ね?」


「それでも…恵梨香ちゃんと美優ちゃん親子は一体何処に匿われているのやら。ようしこの『山住組』で姿の見えない『ドラキュラ伯爵』に張り込みをして貰い恵梨香ちゃんたちの居場所を聞き出して貰おう。チ-フまた張り込み頼んますぜ」


「それと……やはり空からの追跡、怪しげな行動を取る組員さんを追跡する。それが一番早くて便利ね。空を飛べる妖怪さん達にも手伝って貰いましょうよ。先ず空で見張ってもらい、居場所が特定出来たら教えてもらう。一反木綿さんたちの他に天狗さんや、踊り首さん(空中を踊りながら飛ぶ)たちにも協力してもらい、どこかで恵梨香ちゃん達を見かけたら教えて貰いましょう」


 すると早速連絡が入った。

「どうも…塚本社長たちは、島に拘束されているらしい。それもやっぱり東京から見て西方向の福井県の孤島に、拘束されていると言うんだ。そして早速塚本元社長だけが連れ出されたと言うんだ」


「エエエエエエェエエエエエッ!命の保証が無いって事ね❕これは大変急がないと……」




 ※踊り首:争って互いに首を斬り落とした三人の武者の首がくっついて、空中を踊りながら飛ぶ。妖怪となっても大きな声で争っている。


 ※天狗:山奥に棲んでいて、神通力や超能力で、人間に恐怖を与える。真っ赤な顔で鼻が長く、山伏のような姿をしている。背中に翼があり、空を自由に飛べる。カラス天狗は天狗(大天狗)の子分で、烏のようなくちばしがある。天狗は人を八つ裂きにしてしまうほど力が強く、手に持っている羽団扇は一振りで何本もの大木を薙ぎ倒してしまう。山で起きる不思議な出来事はほとんど天狗の仕業であるという。





 









 







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