バッファローよ、幸いあれ
星見守灯也
バッファローよ、幸いあれ
全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。
柵を壊し、木を薙ぎ倒し、止まることなく街を破壊する。
どうしてこんなことになったのだろう。
俺は早く眠りたいだけなのに。
はじめは一頭ずつ数えていたのだ。
軽快なステップでやってくるバッファロー。
バッファローが一頭、バッファローが二頭……。
バッファローが十頭、バッファローが百頭……。
いつしかバッファローは巨大な群れをなしていた。
盛り上がった肩に曲がった太い角。
それらが塊となって、まるで雨が降る直前の黒雲のようだった。
バッファローが千頭……。
もうここまでくると数えたバッファローなのか、まだなのか区別がつかなくなってくる。
俺はバッファローを追いかけ回して数を数えた。
まだ寝れない。
ごろりと向きを変えて、バッファローを数える。
バッファローが千五十頭……。
雷鳴。
一頭のバッファローが動き出した。
その動きは群れ全体に伝わり、千頭以上のバッファローが駆け出した。
ドドドドという地響きをたて、バッファローは行く。
ビルを破壊し、電車を破壊し、高い塔を破壊した。
森を破壊し、河を破壊し、山を破壊し、なおもバッファローは突き進む。
バッファローの群れはようやく止まった。
地球には、もうこれ以上破壊できるものがなかった。
バッファローは思った。
神が言ったのだ。
はじめにバッファローあれ、と。
ここに世界が生まれた。
世界はバッファローから生まれた。
世界はバッファローでバッファローは世界だった。
世に幸いあれ、バッファローに幸いあれ。
ピピピピピと電子音が鳴り響く。
ほとんど自動的に手が目覚まし時計を止めた。
六時半。
なんだ、夢か。
バッファローによって壊されたはずの街は、いつもどおりの形を保っていた。
「今日の星占い。ごめんなさーい、最下位は牡牛座のアナタ! とんでもないことに巻き込まれそう」
占いは信じていないが、朝っぱらからテンション下がるなあ。
「ラッキーアイテムは……バッファローです!」
バッファローよ、幸いあれ 星見守灯也 @hoshimi_motoya
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