【KAC20241/+】ある一般男子大学生の憂鬱

クソゲーで時間を溶かしてしまった僕が悪いんだけどさ

　僕には三分以内にやらなければならないことがあった。

　朝起きてすぐ取りかかれば二時間以上猶予があったんだけど、まあまだ余裕だろうと昨日SNSのタイムラインで話題になっていたゲームをダウンロードして遊んでいたら、時間ギリギリになっていたのだった。

　一般男子大学生の自己管理能力なんて、そんなもんだろう。

　講義用のノートPCを立ち上げる。

　時間がないのに起動中は何もすることがなくて焦れる。ちら、とゲーム用のデスクトップPCの方を見た。

　下らねえと笑って遊んでいたけど、結構中毒性のあるゲームだったのかもしれない。バッファローの群れを扇動して、街やら車やらを破壊していくゲームだ。

　っと、PINコード入力画面になった。慌ててミスるとタイムロスになる。素早く丁寧に。一頭でも多く国境を渡らせるために、ミスは許されない。

　いや、そんな作業は今していない。

　通常起動画面。早くしろ、バッファローに踏み潰されたいのか！

　……朝からクソゲーを脳いっぱいに浴びてテンションがおかしいな。

　ようやくブラウザが立ち上がり、僕は講義ページのログイン画面を開く。間に合……

　うわあ！　間に合わなかった！！

　もう先週分の資料はどこにもなかった。たった今迎えた正午に、今週の資料に切り替わっていた。DLした証明に入力しなければならない出席簿も、今週の分だ。

　僕はバン！と乱暴にノートPCを閉じた。

　どうする？　欠席減点を甘んじて受けるか、今から教授に泣きつきに行くか。

　仕方なく家を出た。

　ああ、クソ、情けなくて苛々する。そもそもなんで時限式システムなんだ？　先週のうちにDLしようが期末に纏めてDLしようが、僕がこの教科にかける情熱は変わらねえのに。つまり、底辺だってことだけど。

　来いよ、バッファロー。教授の部屋を蹂躙しろ。

　ついでにそこの吸殻捨てた奴も、あそこの横断歩道に路駐してる車も。

　全部全部破壊してしまえ。

　……憂鬱な日本の冬は、バッファローには似合わなかった。