ミルコとセイラ 一
狼顔の白毛魔獣の生命活動が静かに終えてゆくのを確認した
閉ざされた扉は人間が通るには大きく、
緑青色は器用にかがみ込みな姿勢で扉を押し開き、礼拝堂の中へと移動する。
約十八メートルはある礼拝堂の中の吹き抜けた天井は高く、手狭な扉とはうってかわりに四メートルの巨躯も悠々と起こせる程だ。
吹雪の荒ぶ外気を塞ぐ建物の中は幾分かマシな静けさというものがあるが、
鉄同士のぶつかる重い音と振動と共に地下へと降りると、
「ちょいと、あたしが寝てる間に何しに行ったんだよッ」
同時に頭上から掠れているがよく通る聞き馴染みな声が耳に喧しく響く。
「魔獣、来てたから仕留めた」
「だったら起こしてくれりゃいいでしょうがっ。アンタは無茶なことすっから監視しとかねえと落ち着かねえんだ」
「起こしても起きやしねえ」
女の寝癖の悪さは理解としている
「それに、俺は〈エアンヴィエ〉に無茶させてるつもりはねえよ」
魔獣戦に汚れた外装も一戦を交え勝利を収めた勲章であると口髭生やしな口元を笑わせるとまた大股でゆっくりと歩き出す。
「おい「ミルコ」あたしが言ってる無茶はそっちじゃ──あぁ、いいやめんどくせぇ。あたしんとってもこの〈エアンヴィエ〉は大事だ。無茶に壊されたら
女は頭に被った
「おい、この「セイラ」さん特製の
「邪魔だから投げた」
実際は近接攻撃に移る賭けに出たための緊急判断で両手開けに投げたのであるが、ミルコは説明するのがめんどくさいと簡潔な言葉で済ませた。
「おいコラ、投げたってどういう事だよッ。魔騎装銃は
案の定、丹精込めて仕上げた武装を雑に扱われては立腹とするものだ。必死に仕上げてくれた事を理解し、すまないとは思うミルコではあるが、詳しく説明したところでセイラの小言は三倍と帰ってくる事は百と言わず承知であるため、説明はいつも簡潔と省いてしまうのがミルコの悪癖だ。それ以前に単純と口下手である事も理由ではあるのだが、セイラの小言を背に受けながらミルコはダンマリと
「キレイにすんならあたしもやるからな〈エアンヴィエ〉は
「一人の方が楽だ。おまえさんは静かに寝てろよ」
「
細めた眼をジロリと見上げながら
(
と、毎回喉から出かかる言葉はめんどくさくなりそうだと口の中で噛んで飲み込み、この口の悪い割と付き合いだけは長めな一応の相棒に清掃用具を雑に放り投げて渡した。
「汚れ落としたら寝て食って外をキレイにするか」
「は、外? ミルコおまえが散らかしたまんまてどんだけの
ミルコの呟きを聞いてどこかワクワクとした弾む声と共に清掃用具を肩担ぎにしたセイラは〈エアンヴィエ〉の元に向かうミルコの背を早歩きに追いかけた。
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