間に合ってくれ!
奈那美
第1話
私には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは、書いた小説をサイトにUPすること。
時間はあった。
あるはず、だった。
だけど、お題が出た途端に怒涛の数の投稿が押し寄せ、通知の赤い丸マークがつきっぱなしになったのだ。
通知をオフにすればいいじゃないか?
そう、進言してくださる方もいるのだろう。
でも、そうはしたくなかった。
フォローしている作家様たちの面白い作品群を読みこぼすなんてことは、私にはできないのだ……それでも取りこぼしはあったと思うが。
自分の作品も書かなくてはいけない!
そんな焦りは、あった。
スルーして、読む専門に徹してもいいんじゃない?
そんな内側からの悪魔のささやきもあった。
──でも!書きたい!!
それが書く人間の、譲れない欲望なのだ。
だけど……いろんな作者様の作品を読むうちにどんどん『読む沼』にハマり、書くのをそっちのけで読み続けてしまった。
これではいけないと読みの隙を縫ってなんとか一本の小説を書き上げた。
最低の文字数縛りが少ないから、きっとこの文字数でも大丈夫。
タイトルは『こんなオレでも異世界に行った。そして無事に帰ってきた!文句があるか?野郎ども!?』だ。
私にしては珍しいバリバリの異世界もの──こんなチャンスでもないと書かなかっただろう。
それにしても、なかなか書くのは大変だった。
なんといっても書き出しの文章が指定されているから。
いつもだったら、色々設定を頭の中で考えて。
ふと頭の中に浮かんだ文章がカチッと音を立ててはまった状態からでないとかけない私なのだ。
そして今日が締切日。
苦心惨憺して書き上げたこの小説をUPするのにあと三分しかない。
なのに肝心のPCときたら、さっきから動きがすこぶる悪い。
苦悩の末、再起動をかけた。
無事に再起動できたが、残り時間は一分と三十秒。
あせる気持ちとはうらはらに、今度はサイトが開かない。
なんなんだよ?通信料だったら、ちゃんと払ってるよ?wifiの動作も問題ないよ?
……残り時間、一分を切った。
自分のページを開く。
小説の概要その他は、書き上げたときに確認済みだ。
よし!間に合え!!
私は公開ボタンをクリックした。
と同時に、つけっ放しのラジオが正午を知らせた。
よかった……間に合った。
ホッとした私はPCの画面から目を離した。
(今日の昼ごはん、なに食べようかな)
昼食に行くためにPCをシャットダウンしようとPCに目を戻した。
そこに記されている文字を見て、私は目を疑った。
【公開できませんでした】
「そ……そんな!!」
pipipipipi……
耳元でスマホのアラームがなった。
間に合ってくれ! 奈那美 @mike7691
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