P4-cultrosso-


ドロリス討伐から2日後…

私とチャールズはプロセルフィナ横に隣接している国、カルトロッソに足を運んでいた。


カルトロッソは繊維業で盛んな国であり多くの衣服店が軒を連ねている。


「レヴィ様、どのお店に入りたいですか?」

「んー、チャールズが人街に買い物に来たかったんだから自分の好きなお店を選びなよ」

「分かりました!じゃあ、あのお店に行きましょう!」

「切り替えが早いね…、あんな王族が行きそうな店がいいのか?」

「レヴィ様のお洋服を選ぼうと思いまして!主人が着られるお洋服は良い代物でないといけませんから!」

「私はボロボロじゃなきゃなんだっていいんだけどさ、まぁチャールズが行きたいなら行こうか」

「はい!」



ルンルンのチャールズと一緒に建物に入ろうとする。すると、

「お待ち下さい、レディ。ここは王族しか利用する事が出来ないサロンで御座います。王族のブローチはお持ちですか?」


サロンに常駐しているカルトロッソの騎士に止められてしまった…

横にいるチャールズの人相が段々と悪くなっていく。


「ブローチはもっていませんが、このお方をそこら辺の王族と一緒にされるのは我慢なりません。……人を見る目がない騎士がいる店になんて、入る気にもならないですね。別のお店に行きましょうかレヴィ様」

「お気持ちを害してしまい、申し訳ありません。ですが、王族の紋章が刻まれたブローチがないとお通しできない決まりなんです。」


機嫌が悪くなったチャールズに対して、騎士は意外にも落ち着いた態度で接する。


「ブローチがあればいいんだろ?じゃあ、はいコレ」


私は懐から紋章付きのブローチを出し、騎士に見せつける。ブローチを見た騎士はすんなり中に通してくれた。

横を歩いているチャールズは驚いた顔をしていた。


「王族のブローチをなぜレヴィ様がお持ちなんですか?盗んだんですか?」

「おい、失礼だぞ。さっき横を通って行った男の懐から拝借しただけだ」

「盗んでるじゃないですか」

「言い方を変えればそうだが、入れたんだからいいだろ?それに身分的には王族より上だしな」

「それはそうです!私たちを誰だか知らないとはいえ王族と一緒にするなんて無礼です!」

「まあ、管理者だと言った方が面倒臭くなりそうだからいいさ、それより服を選ぶんだろ?じゃあ行こう」


中に入るとメイド達が出迎えてきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのような品をお探しでしょうか」

「特に目的はないんだ、だから適当に見て回ろうと思ってるんだけどさ。取り敢えずドレスや普段着を置いてる所はどこかな?」

「作用で御座いますか。ドレスはこちらで御座います」


メイド達の後について行くと、壁中がドレスで埋め尽くされた大部屋に案内された。


「普段着ですと、左の壁に掛かっているものになります。ドレスは中央と右の壁に掛かっているものがそうです。上層にあるドレスを見る際はゴンドラに乗ると上まで行けますのでご利用下さいませ」

「ああ、ありがとう。あとは、自由に見るから下がっていいよ」

「かしこまりました、何かご要望があればお声掛け下さい。…それでは失礼致します」


メイドが下がったのを確認すると、早速チャールズが動き出す。


「見て下さい!レヴィ様!これ可愛くないですか?」

「いいんじゃないか?早速着てみなよ」

「何言ってるんですか?着るのはレヴィ様ですよ」

「えぇーー」


それからと言うもの、チャールズの買い物について来たのに何故か着せ替え人形のごとく様々なドレスを着させられる。チャールズが楽しそうなので何も言わないが、もうそろそろ帰りたくなってきた。


「チャールズ……もうそろそろ帰らないか?ドレスも沢山買ったし満足だろ?」

「そうですね!自分のも買えたし、レヴィ様の分も買えたので満足です」

「……レヴィ様も袋を持っていますが、ドレスを買ったんですか?」

「んーいや?自分のじゃなくて、帰ったらリジー達に着せて遊ぼうと思って買ったやつ」

「ちゃっかりそんなものを買っていたんですね。ご愁傷様です。リジー……」



長い買い物のお陰でアンデットなのに疲労感が凄い。もう暫くは買い物をしなくていいと思ったが、自分の趣味用にも買えたから良かったのかもしれない。

そんなことを思いつつ、帰路に着く。

チャールズとギザに戻る頃には辺りは暗くなっていた。



私はギザに戻った後、寝室のベッドでぶっ倒れていた。


「ああー疲れた。なんか精神的に疲れた…」

「…吸血鬼が疲れるなんておかしいですね。血が足りないのではないですか」

「居たんだ、リジー。……それもあるのかもねー。半年以上飲んでないし。またユルルンの所に行くかな」

「居ましたよ。ずっと。…ユルルン様の所より私から吸った方が早いと思いますが」

「珍しいね。自分から吸ってもいいって言うなんて。それに、ユルルンの事あんまり好きそうじゃないもんね」

「…………それより、吸うのか吸わないのかどちらですか」

「吸わせていただきます」

「……承知しました」



リジーはそう言い、私の上に跨ってくる。


「こんなに乗り気な君は久しぶりだね、リジー。熱が上がるよ」


私はそう言いながら、リジーの首に腕をまわし顔を近づける。そして鼻を首筋に擦り寄せ、ゆっくりと唇を肩の方へ滑らせていく。位置を定めるとそこへ軽くキスをし噛みついた。

リジーが一瞬眉を寄せていたが、私は構わず血を吸い出した。血を吸いながらリジーのスカートに手をかけ肉厚な太ももをさらけ出す。


すると、ドアをノックする音が室内に響いた。

ドアの外からチャールズが声をかけてくる。


「レヴィ様、休憩中に申し訳ございません。王族と思わしい男がダンジョン内に現れました。プーシィが対応していますが、奪った物を返してほしいとのことで訪問してきたそうです」


奪ったもの……んーもしかしたらサロンの時盗んだブローチの事か。


「入っていいよ、チャールズ。中で話そう」


私はそう言い、チャールズを寝室に招き入れる。リジーが入れるなと言う顔をしていたがその方が面白そうなので無視をきめる。


「失礼致しま…す………リジー…あなた等々身売りまでして、レヴィ様の興味を引くようになっていたのですか…そんな淫乱なやつだったなんて…」

「チャールズに言われるなんて心外だ。お前も時々レヴィ様の寝室に忍び込んで一緒に寝たりしているだろう」

「え?そんな事していたのかチャールズ…」

「…っもう!なんでバラすんですか!しかも今このタイミングで!?リジーのクソ!あなたなんてメーテルと同等です!!」

「言葉が汚いぞ、チャールズ。それにタイミング悪く来たお前が悪いんだ。あと、メーテルと一緒にするな。あそこまで単細胞じゃないぞ」


メーテルの言われようが酷いが、今はそんな事を言い合っている場合じゃないな。チャールズを部屋に入れたのは私だけど…


「まぁ、チャールズのしていた事なんて可愛いことだろ。それより王族にブローチを渡すつもりはないと伝えてくれ。…ここはダンジョンだ。だから欲しいなら攻略してくれないとね、醍醐味がなくなるだろ?」


私は悪い笑みを浮かべながら、もう一つチャールズに言伝を頼んだ。


「あぁそれと、もし王族がブローチを諦めるようならそのまま帰してやってくれていい。ただ戦闘体制を取るようなら、そのままプーシィに相手をさせろ」

「承知致しました。プーシィにはそのように伝えておきます。………それでは、私はこれで失礼致します」


退出する前にチャールズとリジーがひと睨みしていたが、すぐにリジーは凛々しい態度に戻る。


「………レヴィ様。面白がってチャールズを部屋に入れましたね?チャールズのせいで疲労が増えてしまいました。…なので、その責任は取って下さいますよね?」

「私はもう十分血を吸ったから満足だ」

「…………ッチ」

「おい。主人に舌打ちする部下なんてお前だけだぞ?……ほんっとにユルルンと言い勝負だよ。…まぁ、また吸わせてもらうからその時に楽しもう」


私はそう言いリジーに軽いキスをし、その場から退席した。




一方、ギザ一階層では…


戦闘冥土であるプーシィがギザに訪れた王族の対応をしていた。


「先程から申し上げておりますが、ブローチはお返ししませんし、欲しいのなら戦って下さい。それ以外にブローチを取り戻す方法はありません」


「私は自分のモノを返して欲しいと言っているだけだぞ?ただ返すという簡単なこともここの管理者は出来ないのか。それとも知能の低い魔物だから仕方がないのかな?ん?」


丸々と肥えた白髪の男がプーシィを挑発する。

男の周りには1人の使用人と15名程の騎士、そして20名程のアサシンと思われる黒服の男達がいる。


「メルボルン様、管理者はレディ・メイデンの創造物です。我々よりも尊い存在を卑下する物言いは控えた方が宜しいかと思われます」


メルボルンと呼ばれる男の横に控えていた使用人が男の口調に対して反論した瞬間、メルボルンは自ら使用人の男を殴った。


「お前の主人は誰だ?ぁあ?一国の王の持ち物を盗んだ罪人の所にわざわざ私が出向いてやってるんだぞ?俺の方が被害者であるというのにお前は俺が悪いっていうのか?」

「…っ申し訳ございませでした」



「…………もうそろそろいいかな?お前達の茶番に付き合うこっちの身にもなって欲しいね、ほんとうにさ。それに私の主人を馬鹿にしたお前を私は許さないし、そっちも戦う気があるから物騒な奴らを連れてるんだよね?」


しびれを切らしたプーシィが男達に向かって歩き出す。


「あと、盗まれたとか言うけど。私達には関係ないよ。盗まれる程の軽装で出かけていたお前が悪いんだし、返して欲しいなら私に勝てばいい。ただそれだけでしょ?」


「ふざけるなよ!盗んでおいてその態度か!まともな神経じゃないな!おい!早くコイツを殺してブローチをうば…」


『じゃあ始めるよー』


メルボルンの言葉を待つことなく、プーシィが戦闘を開始した。



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補足説明

≪プーシィ(女)≫

第一ダンジョン(ギザ)所属

レディーズ・メイド

種族:龍人

武器:????

性格:わがまま、素直な所もある、短気

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