P2-ephesos-
私とチャールズ(レディーズ・メイド)
の2人で馬鹿を連れ戻しに、各ダンジョンを繋ぐワープゲートを通ってエフェソスに来た。
※リズヴェスはレヴィの代理人なのでダンジョンを管理する為に残った。
ゲートを通った所で、ユルルンのレディーズ・メイドが私たちを出迎えた。
「レヴィ様、お久しぶりで御座います。あと、チャールズも。リズヴェスから今日こちらに来られると連絡を頂いておりましたので、すぐに主の所へご案内致します。」
「ありがとう、ヴィー。……そう言えば最近ドロリスの動きが活発らしいんだけどね、エフェソスにも来た?」
「いえ、6年前に現れてから見ておりませんね…。
ドロリスは地中から地上に出てくる周期がまばらですから、いつどこに現れるのか把握しづらいですよね」
「それをメーテルの"粗ちん"が逃したと」
「こら!チャールズ。せめて"貧弱"にしてあげなさい。」
「お二人とも………それよりも"不能"の方が宜しいかと。」
そんな下品な会話に花を咲かせながら歩いていると、ユルルンの部屋に着いた。
チャールズとヴィーを外に待機させ中に入る。
「………半年ぶりの再会だね。ユルルン」
「…早い再会だったな、レヴィ。あと…」
「ユルルンじゃなくて、ユイね。分かってるけどそんなに名前が嫌なのか?可愛いじゃないか!」
「俺に可愛いは要らないんだよ。それより、要件はメーテルのことだろ?あいつならダンジョンの手伝いをさせているところだ」
「まあ、当然だろうね。よそ様の領域に勝手にお邪魔してるような不届者だ。置いてもらうなら働かないとね」
「………それはそうとレヴィ、今日はメーテルのことで来たのは分かっているが、吸血はしていかなくていいのか?俺は別に構わないぞ」
「んーー半年前に来た時、吸わせてもらったからまだ平気。それよりユイは欲求不満なの?半年前に散々まぐわったけど?」
「いや、俺も精気は足りている。ただお互い"必要"な事だから行為を繰り返しているが、たまには"それ"抜きでレヴィと寝たいと思ってね。」
「だったら遠回しに言わないで最初からそう言えばいいだろう…」
「そんなに飢えてる奴だと思われたくなかったんだよ」
「でも飢えてるじゃん。」
「まあね。」
「……………」
「んーーでも、今回はパスかな。メーテル捕まえて早く"ギザ"に戻らないと…最近ドロリスが活発でいつ現れるか分からないからね……」
「そうか。……なんだか都合の良い言い訳をされて逃げられたな、ユイ悲しい。」
「言い訳じゃありませんーー。それに、私じゃなくて別のやつに頼めば良いだろうが!いちいち演技までして……」
「レヴィがいいから君に頼んでるんだよ。ほんとに鈍いね君は……頭の栄養全部、胸に取られてるだろ。」
「自分の要望が通らないとすぐ言葉のナイフで攻撃してくるなお前。……でも今回はなんて言われようがダンジョンに戻るぞ?ドロリスは面倒臭いから早々に仕留めておきたいんだよ。」
「………まぁそれは俺も同意だから、今回は駄々を捏ねないですんなり身を引くことにするよ」
「どこがすんなりだ!今駄々捏ねまくりだったろ!」
「……それより、早くギザに戻らなきゃいけないならメーテルを早く見つけたらどうだ?」
「………………ほんとに私より面倒だな。絶対に場所知ってるのにわざと教えない所が腹立つ!」
「管理者は面倒臭いやつの集まりだから仕方ない。諦めろ。それに、ダンジョンは自分で攻略するのがミソだろ?」
ユルルンがニヤついた顔でそう言ってくる。余計に腹が立ったが、私は大人だからこれ以上反論するのは我慢した。
(大人だからな!)
何度も心の中でその言葉を繰り返しながらイラつきを抑えた。
「そうだねぇー。じゃあそうするんでもう行くねー。」
「ああ。またな。それとドロリスに宜しく。」
「……………今度はエフェソスに来るかもな?ユルルン♡」
バタンッ!
嫌味を言われると対抗して言い返してしまう所が我ながら幼稚だとは思ったが…気持ちを切り替えて、私は外で待機していたチャールズを連れメーテルを探しに出た。
「………レヴィ様、ユルルン様のお部屋を出られてからずっと仏頂面ですが何かあったんですか?」
「あの色欲魔の態度がムカつくだけさ、鼻につく顔をしやがって…ドロリスが自分のところには来ないことも確信してるっぽいしね」
「あー、ドロリスの今回の目的は"アルフレイム"っぽいですもんね…」
「そうだね。6年も地上に出てなかったから腹が減ってるんだろう。好物のエルフを狙ってまたくる可能性が高い」
「じゃあギザに戻ってもゆっくり休めそうにありませんね……うわぁー…戻ったら人街で買い物しようと思ってたのに…」
「ドロリスを殺すまで気が休まらないから、私も憂鬱だよ、チャールズ」
『はぁー』
2人揃って溜息を吐く。
(そもそもメーテルが仕留めていれば、こんな手間をかける必要もなかったのに!ほんとにあいつ……」
……………
「チャールズ…そういえば今日エフェソスは何の日だ?」
「今日は三日月なので"狩猟の日"ですね!」
「そうか…じゃあメーテルは"貯蔵庫"かもしれないね」
「そうですね!メーテルは≪狩人≫より≪待ち人≫の方が適していますから」
≪第三ダンジョン・エフェソス≫
ユルルンの管理下にあるダンジョンであり、
月の満ち欠けによってその日のダンジョン構造や特色が変わる奇妙な仕組みをしている。
-三日月-
狩猟の日:ダンジョン侵入者は狩人により貯蔵庫と呼ばれる場所に追い詰められ、そこには待ち人が待ち構え侵入者達を一掃し、生き残った侵入者は淫魔達により精気を吸われる。
-半月-
貞操の日:性を司る淫魔にとって1番耐え難い日。貞操の日になると精力が半減し、淫魔達の気性が荒ぶれる為、侵入者は襲いかかって来る淫魔達の対処で体力を大幅に削られてしまう。
-満月-
月の日:エフェソス内の魔物達の精力が満ち溢れる日。半月の日は気性が乱れ暴れまわる淫魔達だが、この日は精力が通常の何倍にもなり、より狡猾な動きをするようになる。より手強くなる為、侵入者達は満月の日を避けてくる者も多い。
………
侵入者を狩っていた狩人達の跡をつけ、貯蔵庫に到着する。
貯蔵庫はコロシアムのような形状をしており、中央に待ち人(メーテルの馬鹿)が待機している。
メーテルは武器である"オルクス"を振りかざし敵を一掃していく。
メーテルのオルクスは本人と同寸程の大きさをした大鎌の武器であり、握ったものの魔力量により大きさの上限が変わる。刃に黒曜石が埋め込まれ非常に切れ味が良いが強度はイマイチ。その為、メーテルは強度を補うためにグルクンの牙をオルクスの基盤として使っている。
グルクンは火山地帯に棲む巨大な蜘蛛のような姿をした魔獣であり黒曜石を取り込んで成長する為、グルクンの牙と黒曜石を組み合わせた武器は非常に強度が上がる。
(メーテルのやつ、凄い活き活きしながらオルクスを振り回していますね、レヴィ様)
(そうだね。単細胞はすぐに記憶をなくしちゃうのかもしれないね)
(自分がミスを犯した自覚なんてほんとにあるんでしょうか?これだから馬鹿は困りますね)
(ほんとにねー)
チャールズと小声で話しながらメーテルの様子を陰から伺う。
(あっ。あの冒険者やりますね。メーテルがオルクスを振りかざしたタイミングで懐に飛び込んで行きましたよ!)
チャールズが言うようにメーテルの武器は細かい動きが取れない為、隙が生まれやすい。尚且つメーテルは魔力量が多い為、デカくなったオルクスを振る時に大振りになってしまう。ドロリスのように集団で動く能無しタイプは殲滅しやすいが、視野の広いタイプや少人数で動く冒険者などとは相性が悪い。
(まあ悪い点があっても、使い手によって良し悪しも変わるけど…メーテルは意外と柔軟だから、気をつけた方がいいぞ?あの冒険者)
と、様子を見ていた時。
メーテルがその場で飛び上がり、冒険者の剣をかわす。そして即座にオルクスのサイズを変え、冒険者を背後から真っ二つに切り伏せた。
(うわぁーめっちゃ満足気ですよメーテルのやつ)
チャールズが冷めた目でメーテルを見つめながらそんなことを言っていた。
「そろそろ行こうかチャールズ」
「はい。レヴィ様」
ある程度の侵入者が片付いたタイミングでメーテルに背後から気配を消して近づく。
「…メーテル君♡」
「…っ…………罰は嫌です。レヴィ様」
「何言ってるんだ?罰確だよ?」※罰確定
後ろからそっと抱きつき声をかけるとそんなことを言うものだから、現実を突きつけてやった。
「懺悔は後にしてもらっていいですか?メーテル。私もレヴィ様もさっさと帰りたいんです」
「チャールズちゃん…お慈悲を……」
「レヴィ様、早く帰ってこの哀れな奴に罰を下してやって下さい!」
「そのつもりだ!」
「鬼しかいないのか………」
「自業自得だろ!馬鹿め」
そして、即座にチャールズがメーテルの首に首輪をかけリードを私に渡してくる。
「また逃げられたら困りますからね!」
「よし、帰るぞ!メーテル」
「はい……」
しょぼくれたメーテルを連れて、私達はギザに戻った。
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補足説明
≪アルフレイム≫
ギザにあるエルフ達の棲家。
MEMO:ギザはエルフの他に、アンデットや龍人がいる。
≪チャールズ(女)≫
レヴィ・レヂィ配下
第一ダンジョン(ギザ)所属
戦闘冥土(レディーズ・メイド)
種族:エルフ
武器????
性格:天真爛漫、時に毒舌、メーテルには特に。
≪ヴィー(女)≫
ユルルン・インペラトル配下
第三ダンジョン(エフェソス)所属
戦闘冥土(レディーズ・メイド)
種族:淫魔
武器:????
性格:温厚、働き者、時に冷酷、そして時に下ネタを言う
≪メーテル(男)≫
レヴィ・レヂィ配下
第一ダンジョン(ギザ)所属
戦闘冥土(バトラー)
種族:レヴァナント
武器:オルクス(大鎌の武器)
性格:温厚、時に馬鹿な行動をするが本当の馬鹿ではない、怒ると怖かったりもする
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