ダンジョンメイド-dungeon made-
BB
P1-bloody lady-
中央大陸に属する豊穣の国"プロセルフィナ"
七つのダンジョンのうちの一つがその国にある。
「おはようございます。レヴィ様」
「おはよう。リジー…………今は…朝か?」
「はい。朝でございます。起きるのがお辛いようでしたらもう一眠りなされますか?」
「いや…いい。今日は気分がいい方だからダンジョン近くを散歩でもしてくるつもりだ。……その…1人で行くつもりだから……護衛はいらないぞ?」
バトラーであるリズヴェスにそう告げると、氷のように冷たい顔に笑みが浮かぶ。暖まっていた身体が一気に寒気立つ。やばいな…嫌な予感がする……
「……レヴィ様、以前から何度も言っていますが、管理者であるお方が1人で外を出歩くなんてことはあってはいけません。」
「だけどな、リジー。私は赤ん坊でもないし、何かあれば1人で対処することだってできるんだぞ?………………そう怖い顔をしないでくれよ……じゃあどうしたら1人で行かせてくれるんだ?」
ずっと笑みを浮かべたままのリジーになんとか反抗する。これじゃあ主従関係が分からないな…と思っていると
「でしたらレヴィ様、私の服を変えてくださいませ。男であるのにメイド服を着ているのは違和感があると…前々から言っていましたよね?
「………無理。それだけはいやだ!美男子であるお前がメイド服を着るからいいんじゃないか!それに、ここのダンジョンのバトラーは全員メイド服だぞ。仲間がいるんだから別にいいじゃないか…」
リジーに本音をぶつけると苦虫を噛み潰したような顔をされた……何気にショックだ……
「なぜ、仲間がいればいいとお思いなのですか?
私個人として嫌なのです。何度バトラーの服を新調しようともレヴィ様が破きにかかるから…私も諦めていましたが……良い機会ですし、メイド服はやめましょう。」
「私の城で私の部下に好きなものを着せて何が悪いんだ!………なんどだってバトラーの服を破いてやる」
と、我ながら我儘なことを言い残し逃げるようにして私はその場から立ち去った。後ろからリジーの呆れた声が聞こえたが,無視した。
ダンジョンの外にある森の中を日傘を差しながらゆっくりと歩いていく。
(ダンジョンにいると中々1人にはなれないからなー
たまに外に出るくらい許してほしいところだね。)
「ただ急いでいたから寝巻きのままっていうのが気掛かりだな……」
とボソボソ言いながら森の中を歩いて行く。
すると、甘い独特な匂いが漂ってくる。
しばらく歩いて行くと魔獣と人間のガキが居た。
襲われているようだったけれど、めんどくさいのでその場を後にしようとする。すると…
「まっでぇえ!みずでないでくだざいぃぃ!たずげでくだざいぃぃぃ!」
後ろからガキが走ってきて私にしがみついてくる。
(結局めんどくさいことになったな…)
「…………分かったから、鼻水を私につけないでくれ。あと、魔獣を殺すのに君は邪魔だからさがっていなさい。」
ガキを離れさせ、黄色い魔獣を見る。
(あれは…バナナンだな。あいつが匂いを出して獲物を誘っていたのか。…………でもなんでここにバナナンがいるんだ。あいつは南東の大陸に生息しているはずなのに………まぁ今はとりあえずいいか。)
すると、バナナンが皮を剥き口を開く。可愛い名前とは打って変わってキモいし臭い。私は「きもぉ」と言いながら、こちらに走ってきたバナナンをすぐに斬り殺す。
「うわぁ!凄いでずね!ありがどうございまじた!」
先程まで涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた顔を拭いながら子供がお礼を言ってくる。
「いいよ。別に。」
そう言ってその場を去ろうとすると子供が後をついてくる。
「なんでついてくるんだ。早く家に帰ればいいだろ」
「だって…漏らしちゃったから…このまま帰ったらおかあちゃんに怒られちゃいます……」
「それは私には関係のないことだし、なんで、漏らしたら人のあとをついてくることになるんだ。近くの川で洗えばいいだろ」
「だって!漏らしたままにしといたら蒸れて痒くなっちゃうもん!!」
返答になっていないと思ったが、
そういうと子供はうつむいたまま何も言わなくなってしまった。
(あぁぁーほんとにめんどくさいなぁーもぅー!)
「分かった。洗ってやるからついてこいクソガキ」
乱暴な言葉ではあったものの子供は嬉しそうにしながら後をついてきた。
私は川に着くと子供のズボンを引っ剥がし、子供を川水につけた。すると冷たさで子供の竿が縮こまったので、
「……元々小さかったが、さらにミニサイズになったな」と言うと子供は顔を真っ赤にした。その様子を見て、ふふっと笑うとさらに赤くなった。
(恥ずかしいなら、尚更自分で洗えばいいのに…)
と、そんなことを思いつつ子供とズボンを洗ってやった。
「もういいだろ。早く帰りな。」
「ほんとにありがとうございました!僕シャルルって言うんですけど、あなたのお名前はなんですか!」
去り際に子供が名前を聞いてきた。だから私は…
「ブラッディ・レディ」
とダンジョン外で使われている名前を教えた。
(人間達からはこの名前で有名だから、すぐに私が管理者ってことに気づいただろうな…)
そう思いながら私は帰路についた。
「お帰りなさいませ。レヴィ様。外は楽しかったですか?」
「最悪だった。ガキの漏らしたズボンを洗う羽目になったし、外なんか出るんじゃなかったよ……」
「なぜそうなったのか存じ上げませんが、だからバトラーかレディーズ・メイドをつけた方がいいと言ったでしょう。言うことを聞かないからそう言う目に遭うんです。」
「はいはい。悪かったですぅー。…………ところでリジー。バナナンが外に居たんだが何か知ってるか?」
「……………」
「リジー……まさか…私に伝え忘れていたのか?」
「申し訳ありません…」
「まぁいいさ、だけどこれでメイド服の件はなしだな!」
「チッ」
リジーが悔しそうななんとも言えない顔をしていたのが面白かった。
「で?なんでバナナンがいるのか教えなさい」
「はい。…半年程前に"訪問者"が来ました。レヴィ様はご不在だったのですぐにお伝えできていなかったのですが………くっ…」
「…もう悔しそうな顔をするのはやめろ!そんなにメイド服が嫌なのか?」
「はい。」
「でも変えてやらん。」
リジーが凄い剣幕で見てきたが無視した。
「で、"どの"訪問者だ?」
「"繁殖のドロリス"です。」
「えぇーー……ドロリスかぁー……まだ知能がある訪問者の方が会話が出来るから気が楽なんだけどねー」
「そうですね。会話ができればダンジョンに何を求めているのか分かって対策も立てやすいですから」
≪繁殖のドロリス≫
訪問者(ルナ)は通常2つのタイプに分かれる。
知能があるタイプか、ないタイプか。
ドロリスは後者である。
そして、ドロリスは元々植物の魔獣であったが地母神≪レディ・メイデン≫から繁殖の恩寵を授かった訪問者であり、誕生から100年足らずしか経っていない若手の訪問者でもある。
ドロリスは"繁殖"の名の通り植物類の魔獣を生み出し使役する。ドロリスが産み出した魔獣を殺してもまた産まれてくる為、埒があかない。なのでドロリス本体を殺すしか、魔獣の増殖を止める手立てはない。
「じゃあ、外に居たバナナンはドロリスが来た時にに産み出された奴の生き残りか………」
「…………」
「1つ質問なんだけどねリジー、その時ドロリスの対処は誰が行った?」
敵意がある訪問者、そして尚且つ"能無し"の場合はダンジョン外にも影響が及ぶ可能性がある為、全滅させるのが鉄則である。
(今回はバナナンだったからまだいいが、もっと極力な魔獣が人街の方面まで影響を及ぼしていたらプロセルフィナの女王がうるさいだろうからな………それにドロリスを取り逃し、バナナンを外に出してしまった罪は償わないといけないだろうしな)
と、そんなことを思いながらつい顔がニヤついてしまう。その様子を見ていたリジーが引いた顔をしていたのも無理はない。
「ドロリスの対処は"メーテル"が適していたのであいつに任せました。」
「流石だね。リジー。ちゃんと見る目があるお前は好きだよ。」
「……いえ、当然のことですので」
(好きって言うと耳が赤くなるリジーを見れるし、いつもの態度とのギャップがあって可愛いんだよね。)
「メーテルなら広範囲の攻撃が可能だからドロリスを追い詰めることなんて用意だろうに……彼らしくないね……まあ、私の趣味の時間(罰)ができるから個人的にはいいんだけど」
「で、そのミスった彼はどこにいるんだ?」
「"ユルルン"様のダンジョンに逃亡しました」
「……あいつは馬鹿なのか、逃げたらより罰が重くなるだけなのにな」
「レヴィ様の罰は特殊ですからね。私もメーテルの立場なら逃げたくもなります。まあ、罰が重くなるのが分かっているので私は逃げませんが」
「……語ってるところ悪いが、お前もドロリスの情報を伝え忘れるって言うミスをしてるのを忘れるなよ?メイド服の件でチャラにしただけいいと思え」
「………さぁレヴィ様メーテルをさっさとしばきに行きましょうか!」
自分に都合が悪くなると話を逸らしやがって…。
まぁもう終わったことはいいけどさ。
「じゃあさっさと第三ダンジョン(エフェソス)に行って馬鹿を連れて戻るぞ」
「かしこまりました。」
P1end,→nextP2
補足説明
≪ユルルン・インペラトル(男)≫
第三ダンジョン(エフェソス)の管理者(ランド・スチュワード)
別名:????
種族:淫魔
性格:冷静、戦闘・酒好き、やられたらやり返すタイプ
MEMO:色男。名前と種族を好んでいない。たまに口が悪い。
≪レヴィ・レヂィ(女)≫
第一ダンジョン(ギザ)の管理者(ランド・スチュワード)
別名:ブラッディ・レディ
種族:吸血鬼
性格:大雑把な時もあるが案外真面目、意外と面倒見が良い、口が悪いが仲間想い、オンオフがある、やられたら倍返しするタイプ
MEMO:巨乳。変態な部分あり。1人の時間が好きだが、ほっとかれると時々悲しくなる面倒臭いところあり。自分の名前は気に入っている。
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