第17話 集まった
沈黙もいつかは終わる。
そのときは、突然訪れた。話題の提供主は、由鷹。
「犬内って、小説は書く?」
「ああ、ネットにあげてるわ」
「そうなんですね!」
自然と会話は弾んだ。そういった楽しい話題は色んなまた楽しい話題へ波及してくれさえする。皆楽しいことをしよう。
「いやさ、一昨日書いた短編が跳ねてさ! ランキング載ったわ!」
「へー」
「すごいですね」
「お前ら。そんなこと本当に思っている?」
二人は静かに、しかも微妙に違うタイミングで頷いた。
「思ってないだろ」
「「いいえ」」
「お、おう」
単刀直入に伝えよう。これは茶番である。
「あ、由鷹じゃん! おひさー」
楽しい話は、時に人を引き寄せるのも世の常である。
この前よりかは少し髪は伸びた黒江が由鷹を見つけて声をかけてきた。
なんでこの子はピタッとした服を好むのだろう? 胸が……。
まだ寒いし、黒い服だし。余計に。
これもまた茶番である。
「自分も混ぜて〜」
「うん。そこ座って」
「わかった!」
自然と空いていた犬内の前へ。黒江は長谷川の隣の椅子を引いてから腰を下ろす。
手にはポカリ。斜めがけしたポシェットもそんなに膨らんでいない。なにをしに大学へきたのだろう。
「あ、よろしく〜」
「よろしくお願いします! 長谷川です」
「犬内! よろしく!」
「僕は……。自己紹介いいよね」
「「「うん」」」
十分と経たずに席は埋まった。
楽しい人間には、楽しい人間達が集まるのである。
……おいおい。早くパスタに手をつけろよ、若いお二人さん。とその他二人さん。
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