第16話 バレた

 由鷹が行動に移すことは大抵が早いのである。早すぎるとも言えるかもしれない。

「由鷹くんが言ってた当てって?」

「二人いる。やっかいかも」

 長谷川は黙って耳を傾ける。

「男の子と女の子。読書は好きそう。小説を書くかどうかわからないけどね」

「大丈夫ですね」

 歩きながら会話を続けていく。

 四限まで時間があるため学食へ向かった。もうお昼になっていた。講義が終わり、続々と学生たちが疲れている顔をして歩いていた。

 長谷川は言い放つ。

「お金は出させてください!」

 めがねを付けながら。

 由鷹は、それを見て、

「あんまり出させるのは好きではない」

 とだけ言う。

「わかりました。次回は由鷹くんが出してくださいね」

「り」

「はい!」

 短い会話がつきない。歩くスピードはスローテンポだった。

 大きな緑の看板を通りすぎた。メニューを立ち止まるわけでもなく決める。

 学食の中はすでに席が埋まっている。食券を買い、受付で渡してパスタを受け取る。

 二人同じものを持ち、あたりを見渡す。

「おお! 由鷹くん!」

「お」

 犬内が、四人シートの右奥に陣取っていた。由鷹を見つけて話しかけたらしい。

「どなたですか?」

「うん。ダチ」

「由鷹くんのマブダチ!」

 由鷹は、先に犬内の隣に座る。長谷川も由鷹の前に座った。

「この女の子は由鷹くんの?」

「うん」「はい!」

「「友達です」」

 二人の声のトーンと言い方こそは違うし、意味も?

「ああ、もういんのね……」

 犬内はわかってしまう。

「長谷川 澪と申します」

 長谷川はめがねを外した。

「え!?」

「うん、そう。首席」

「おいおい……」

 犬内は何も言えなかった。無言の時間がつづく。

 この物語もまだ序盤である。

 

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