第14話 お茶会の準備

 三人がキャンパスの奥の学生会館に到着する。やはりガラガラであった。

 席には、まばらに数人いるのみ。

 もちろん講義中だからという要因はあるにはある。それだけではない。

 初回の講義に出席しない学生、新入生でさえも通学すること自体月面倒なのである。

 なーに、寒いとやる気は出ない。当たり前の話。

「んじゃあ適当に座って」

 我先に神戸は座り、リュックからおやつと飲み物を引っぱりだす。長谷川はその光景をぼーっと眺める。

「なに? あげないよ」

「いいえ! びっくりしただけですよ!」

 そう、神戸は棒状のスナック菓子をつまんで、ぽりぽりと、音とスナック菓子の粉をまきながらほおばる。「うそだよ。これからサークル設立しようとしてんのにあげないわけないがな。食べなよ。あとこれ」

と言って一千円札を由鷹へ投げた。

 由鷹はかろうじてつかむ。

「よく取ったね。でも千円か。たまに五千円とかいいときになら万札あげちまうからはずれだよ」

 由鷹と長谷川は絶句する。二人の考えは違ってはいる。

「あざす。自販機行ってきます。神戸さんはコーヒーでいいっすか?」

「おう。俺はブラック」

「承知しました。君は?」

 長谷川のほうを向く。

「一緒に」

「り」

 二人は外へ消えていく。スローペースで。

「本当になんだかねえ……」

 神戸はその仲睦まじさについて聞こえないようにぼやいた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る