Mission

カフェオレ

Mission

 佐藤彩芽さとうあやめには三分以内にやらなければならないことがあった。


 クラスメイトの山岡大我やまおかたいがの下駄箱にチョコレートを入れておくことだ。

 なぜなら、今日は二月十四日、バレンタインデー。

 思いを寄せる大我にチョコレートを渡そうと朝からタイミングを伺っていたが、なかなか思い切りがつかず直接渡すのは諦めた。大我は男女問わず友人が多く、話しかけるきっかけさえ掴めずにいた。机に入れておこうかと思ったが、人目もあってそれも出来なかった。

 そして渡すことが出来ずに放課後になった。内向的な自分には身の丈に合わない相手だったのだと納得しようとしたが、やはり諦めきれない。だから彼の下駄箱に入れようと思っていたのだが、いざその段になると緊張して入れることが出来ない。

 彼女はまだ知らないが、大我が下駄箱に来るまであと三分。ついに彩芽は覚悟を決めて下駄箱にチョコレートを入れようとした。

 その時だった——


 *


 山岡大我には三分以内にやらなければならないことがあった。


 クラスメイトの佐藤彩芽へ告白することだ。

 なぜなら、大我は彩芽の好意に気付いていた。そして、彼も彩芽のことは憎からず思っている。

 バレンタインなので彩芽からチョコレートを貰えるものだと思っていたがその素振りはない。自分の自惚れだったかと猛烈に恥ずかしさに襲われた。しかし、女友達からは貰えるはずとの話だった。

 そして放課後になったが、ついに貰えなかった。しかし、彩芽に思いは伝えたい。出来るなら今すぐ。

 そういえば彩芽は少し前に教室を出たはずだ。まだ間に合うかもしれない。そう思い大我は教室から駆け出した。

 彼はまだ知らないが、彩芽がチョコレートを置いて帰るまであと三分。大我は歩調を早めて下駄箱へ続く廊下の曲がり角を曲がった。

 その時だった——


 *


 私には三分以内にやらなければならないことがある。

 早急かつ重要なミッションだ。


 佐藤彩芽と山岡大我の二人をこの世から消さなければならない。

 なぜなら、

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