最終話 繋がる心と体、二人の愛は永遠に。

7000文字以上と長くなってしまいましたが、宜しくお願いします。

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『ご覧ください! すでにこちらの大型プールでは、夏を満喫しようとする沢山の人で溢れ返っています!』


 二十三インチのテレビには、レジャー施設を紹介するレポーターとプールで燥いでいる人々の姿が映し出されている。


 俺はそれを横目に見ながら、出かける準備をしていた。


「はぁ、今日も暑くなりそうだな」


 雲一つない青空が広がる、七月中旬。すでに世間は夏真っ盛りだった。


 ──寧々香との一件から四年。


 俺は高校を卒業した後、有名大学へと進学して、実家から何県も離れた小さなアパートで独り暮らしをしていた。


 キッチン、ユニットバス、六畳一間と言う少々窮屈な間取りではあったが、まだまだ学生の身分である俺には、十分な生活空間であった。


 すでに二年生と言う事で、こちらの環境には随分と慣れてはいたのだが、時折、人恋しくなることがある。


 親元を離れて独りで暮らすことが初めてだったってのもあるが、やはり恋人である撫子に中々会えないのがとても辛い。


 で、その撫子はと言うと、今は実家近くの短大へと通っている。


 一時は俺と同じ大学を受験しようと考えていたみたいなのだが、それはあまりに無謀であると自身で悟ったらしい。それで、当時の学力と将来を見据えて、自分に合った短大へと進学したのだ。


 故に、寧々香との一件で俺と撫子の仲が両親にバレたから引き離された、とかではなくて、撫子は未だ実家で佳奈美さんと暮らしているので、俺とは離れ離れになっているのである。


 と、言う訳で、俺達二人は両親も認めてくれる仲となっていたのだが、ただ父さんからは『節度を持って交際する様に』と、注意だけされた。


 『学生である身分を弁えろ』と。


 父さんから言われた言葉を『は、社会に出てからだ』と受け取った俺は、撫子との仲を許してくれた両親の気持ちを裏切らない為にも、キスまでの健全なお付き合いに止めていた。


 ……のだが、つい数か月前の事。


 撫子がGWを利用して俺の元に遊びに来た時に……ずっと我慢していた感情が暴走してしまい、ハジメテ同士で最後までヤってしまったのだ。


 ちゃんとホテルを予約してあったのに、撫子が俺の部屋に泊まると言って全然きかなくて、


『おにぃ。いっぱい、シテ……お願い。あたしの全部、愛して欲しいの』


 なんて言うから、俺のある様で無い理性なんて保てるはずもなく、そのまま欲望のままに何度も何度も撫子と体を重ねて……

 

 ──ティロリロ、ティロリロン♬


 不意に、テーブルに置いていたスマホの着信音が鳴り響いた。


「とと、ナデコかな? 丁度、今から出ようと……あ、初瀬峰からだ」


 初瀬峰は寧々香の一件の後、すぐにアメリカへとは渡らずに、高校を卒業するまで日本に残った。


 なんだか、俺と撫子のことが危なっかしくてほっとけなかったらしい。


 そして卒業するまでの間『学校の皆や杜城会長からカモフラージュする為』だと言って、初瀬峰は俺の恋人役を続けてくれた。


 と言っても、一緒に登校したり、放課後勉強したり、一年の頃から続けて来た関係と全く変わらない距離感と付き合いだったけど……


 今はアメリカで、父親の勤めている会社の系列会社で働いており、日本とは勝手が違うから大変だと愚痴っていた。


 そんな彼女とは、今でも仲の良い友達として交流を続けている。


「もしもし、初瀬峰?」


 俺は点滅を繰り返すスマホを手に取って、すぐに電話に出た。


『あ、御藤くん? 久しぶり、元気にしてた?』


「ああ、久しぶり。元気だよ。で、何か用事だった?」


『うん、えっとね。会社の有給休暇を利用して、今日本に帰って来てるの。それで、今日から明後日まで連休でしょ? だから、御藤くんの都合が良ければ、会えないかなぁって思って電話したの』


 それを聞いて、俺の頭の中に撫子の顔が過った。


「そ、そうだったんだ……でも、悪い、初瀬峰。俺も初瀬峰に久しぶりに会いたいんだけどさ、今日から三日間だけはどうしてもダメなんだ」


『あ、何か大事な用事があった?』


「えっと、その、ナデコがさ、この連休中に俺の家に遊びに来るって言ってて……ちょうど今から、駅まで迎えに行くところだったんだよ」


『あ……あ~……それはそれは、タイミング悪過ぎだったね、ごめんなさい』


「い、いやいや、なんか、こっちこそ申し訳ない。折角、誘ってくれたのに」


『ううん、それは良いんだけど。でも、そうだよねぇ。ラブラブな二人の休日が空いてる訳無いよねぇ。久しぶりに御藤くんに会えるかもって思ったら、浮かれ過ぎてそこまで考えが及ばなかったよ。そっかぁ……うん、分かった。じゃ、また今度……』


 そう言って、電話を切ろうとした初瀬峰を、俺は慌てて止める。


「ちょ、ちょっと、待ってくれ初瀬峰。えっと、初瀬峰さえ良ければの話なんだけどさ……その、三人で会うのはどうかな?」


『三人?』


「ああ、三人で。今日、ナデコに会ったらその話をするからさ」


『え、いいの!?』


 と、テンション高めの返事が返ってきた後、すぐにテンション低めの声が返ってくる。


『……いやいや、やっぱり悪いよ。私も撫子ちゃんに会いたいのは山々だけど、愛し合う二人の時間を邪魔するなんて……野暮すぎない?』


 本当は会いたいのに、彼女なりに気を遣ってくれているみたいだ。


 別に、俺も撫子も初瀬峰の事を邪魔だなんて思わないのに……


「そんな事全然無い、邪魔でも野暮でもないよ。だからとりあえず、この話は一時保留にしてくれないか?」


 スマホのスピーカーの向こう側から、街中の雑踏と共に初瀬峰の『う~ん』と言った唸り声が聞こえてくる。


 相当、悩んでいる様子だった……


『う~ん、でもなぁ……空気読めない女じゃない?』


「本当に、そんな事無いって。まぁ無理強いは出来ないけど、でも俺だって初瀬峰には会いたいしさ。どうかな?」


 待つ事、五秒。


『……分かった。御藤くんがそこまで言ってくれるのなら、私に断る理由は全然無いよ。でも、私に気を遣って無理に会おうとはしないでね? 本当にダメだったらダメでいいんだからね?』


「ないない、初瀬峰に会えると聞けば、ナデコも絶対に喜ぶよ」


『そう? それならいいんだけどさ。それじゃ、また夜にでも連絡貰えるかな?』


「うん、了解。それじゃ、また後で」


『は~い、またね』


 俺は電話を切ると、スマホの画面で時間を確認する。


「おし。んじゃ、駅までナデコを迎えに行くかな」


                  ◇◆◇◆


 休みを利用して遊びに来る撫子を迎えに、俺は駅までバスでやってきた。


 夏休み前の連休と言う事で、駅前には多くの家族連れや人々で溢れ返っている。


 俺は停車したバスから降りると、大勢の人が行き交うバスロータリーを抜けて、駅構内へと入って行く。


「えっと、十四時に到着の新幹線……って言ってたっけ」


 壁に設置された電光掲示板で撫子が乗っている新幹線を確認した後、案内板を頼りに新幹線乗り場へと向かった。


 そうして、改札の前まで来ると、ちょうど乗り場へと続く階段から、大勢の人が一斉に降りてくるのが見えた。


 あの中に、撫子もいるのだろうか。


 久しぶりに愛する人に会えるからか、なんだか気分がそわそわして落ち着かない。


 そんな逸る気持ちを抑えながら、俺はそれぞれの目的地へと足早に駆けていく人々の波を見つめる。


 右へ、左へと人の波が割れた、その中央。


「あ」


 いた、撫子だ。


 遠目からでも、その存在感を放つ美少女ぶりに、俺の心は大きく脈打つ。


「あ……お、おにぃ!」


 撫子も俺の事を見つけると、小さめのキャリーケースをカタカタと引っ張りながら足早に駆け寄ってきた。


 以前よりも髪が少し伸びたせいだろうか、どこか大人びて見える。


 今日の撫子は、黒のハーフスリーブにショートパンツとレギンスといった動きやすそうなファッションだった。


 遠出で機能重視なんだろうけど、何着ても撫子は可愛いな。


「ナ、ナデコ。久しぶり」


「うん、久しぶりおにぃ。会いたかった、会いたかったよ……」


 撫子はそう言いながら、今にも泣き出しそうに目を潤ませていた。


「俺もだよ。前回会ったのがGWだったから二か月ちょいぶりか」


「うん、それぐらい。でも、まだあれから二か月ぐらいしか経っていないんだね。それなのに、あたしには何十年にも感じられたよ」


「何十年って、流石にそれは大袈裟だろ」


「ふふっ。だって、そう感じたんだもん」


「……そっか。まぁ、一日千秋の思いとかって言うしな」


「あ、それそれ、そんな感じ。おにぃに会えない日が続くのが、すっごく辛かった」


 そう口にした撫子は、目尻に滲んだ涙を指で拭った。


 そんな彼女の姿につられて、俺まで泣きそうになって来る。


 だけど、彼女の前で涙を見せたくない俺は、なんとか誤魔化そうとして、初瀬峰の事を切り出した。


「そ、そうだ、ナデコ。さっき初瀬峰から連絡があってさ、日本に帰って来てるから明日か明後日か、都合のいい日に会わないかって」


「え? ホント? 弓月パイセンが日本に帰って来てるの? あ、会いたい、会いたい。絶対に会いたい!」


「はは、そうだろ? 夜にまた連絡するからさ、それまでに会う日とか時間とか決めておこうか」


「うん、そうだね。そっかぁ、今日はすっごく良い日だな。おにぃに会えたし、弓月パイセンにも会えるかもだし。とってもいい日」


 撫子は、俺に微笑んで見せる。


「んじゃ、積もる話でもしながら俺の家に行こうか」


「うん」


 俺は撫子の手にしているキャリーバッグを預かって、バスターミナルへと向けて歩き出した。


                  ◇◆◇◆


 ──バスに乗って、揺られること二十分。


 愛する撫子を連れて、俺は自分のアパートへと戻ってきた。


 開閉時に『ギギィ……』と言う音を鳴らす、建付けの悪い玄関を開けて先に部屋へと入る。


「すぐにエアコンつけるから、適当に荷物を置いて座ってくれ」


 撫子は玄関のカギを閉め、持っていたキャリーバッグを玄関近くに置いた。


「うん、お邪魔します」


 そして狭いキッチンを抜けて、俺の居る畳の部屋までくると、中央に置かれている低いテーブルの近くにすとんと腰を降ろした。


 そして、ぐるりと部屋を見渡す。


「昔からずっと思ってたけど、おにぃの部屋ってなんにもないね?」


「え? ああ、そうかもな。俺の趣味なんて野球観戦ぐらいだしな。それに、部屋なんて勉強して寝るだけの場所だろ?」


「えぇ……それって極端すぎない? 部屋って、自分の世界の一部でしょ? 心の中が反映される、とっても大事な場所だと思うんだけど」


「ふ~ん、そういうもんか?」


「うん、そういうものだと思う、あたしは」


「……そっか」


 撫子って、時々哲学っぽい事言うんだよな……俺にはサッパリだ。


 なんだか良く分からないなって思いながら、俺は冷蔵庫から取り出したペットボトルのお茶を、コップに注いで撫子へと手渡した。


「はい、お茶」


「ありがと」


「それぐらいしかなくて、悪いな」


「え、なんで? 十分だよ?」


 そうして、撫子はお茶を一口飲むと、ふと思いついた様に質問して来た。


「あ、そうだ。ねぇ、おにぃ。今日はする?」


 と、目的が提示されない謎の質問に、俺の頭の中に多くの疑問符が浮かぶ。


「ん? するって、なにを?」


「なにをって、エッチ」


「ぶふぉっ!」


 俺は口に含んだお茶を盛大に吹き出してしまった。


「え? どうしたの?」


 冷静に訊き返しながら、撫子はテーブルの上にあったティッシュを取って、俺が吹き出したお茶を拭いてくれる。


「ゴホッ、ゴホッ! ど、どうしたのって! きゅ、急にそういう事を言うからだろうが!」


「そういうこと?」


「……そ、その、きゅ、急にエッチするのか、とか……」


「ダメだった? じゃあ、セック……」


「ちょ! 呼び方の違いじゃねぇよ!」


 慌てる俺を見て、撫子は『フフッ』と笑っている。


「ごめんね、おにぃ。久しぶりに会えたから嬉しくて、つい調子に乗っちゃった」


 そんな彼女の顔を見て、俺は小さな溜息をつく。


「はぁ……いや、まぁ、久しぶりに会えてテンションあがってんのは、俺も一緒だからな。別にいいけど、さ……」


 俺は恥ずかしさを紛らわす様に、畳に零したお茶をティッシュで拭きとる。


 そうしながら、テーブルの方を拭いている撫子をチラチラと盗み見た。


 クールな目元、スッと通った鼻筋、艶やかな唇、柔らかい曲線を描く胸、くびれた腰、そして肉付きの良い太もも。


 撫子の発言で悪戯にエッチな気持ちを刺激された俺は、すでに彼女のことで頭がいっぱいになっていた。


 何気なく誘惑してくる、とんでもない美少女。


 俺は昂る気持ちを抑えきれずに、彼女の姿をずっと目で追っていた。


 こうなってしまったら、ただでは収まらない……欲望を吐き出してしまわないと、済まなくなっていた。


「な、なぁ……ナデコ」


「ん? なに?」


 俺は返事を返した撫子にノータイムで近づくと、彼女を優しく抱きしめた。


「わ、おにぃ?」


 甘い香りと、シャンプーの香りがふわっと漂ってくる。


「……もしかしておにぃ、興奮しちゃった?」


「うん、した。ナデコが悪い」


「確かに。でも、今すぐしちゃうの?」


「もう、エッチな撫子を見てたら、気持ちが収まらなくなった」


「そっか……するのは全然いいんだけど、あたし、汗臭いよ?」


 そんな風な事を言いながらも、撫子は俺の背中に手を回してきた。


「俺だって汗臭い……」


「おにぃのは、好きな人の匂いだから、いいの」


 そう言った撫子の唇を、俺は自分の唇で塞いだ。


「……ん」


 唇を重ねるだけではない。


 お互いの気持ちを確かめ合う様に、唇を唇で甘噛みしあう。


 そして小鳥の様についばみ合った後、淫らな音を鳴らしながら吸い合った。


 だが、その行為は唇だけに留まらない。


 お互いの舌先で触れ合い、舐め合いながら絡ませていく。


 ビリっとした感覚が、舌先から頭の先まで迸っていった。


「ん、おにぃ、ちゅ……おにぃ、好き」


 撫子は頬を赤く染め、半開きの目で俺の事を見つめる。


 彼女の潤んだ瞳が、俺の気持ちをより昂らせた。


「ナデコ……」


 と、俺は撫子の耳元で囁いて、優しく畳の上へと押し倒す。


 仰向けになった撫子に、俺は覆いかぶさる様な姿勢をとった。


「おにぃ、して……おにぃであたしのことを、いっぱいに満たして欲しいの」


 そう懇願する撫子の口を唇で塞ぎ、俺は彼女のふくよかな胸に手を置いた。


 柔らかな感触と弾力に、俺の下半身は更に疼きを覚えて……そして……


                  ◇◆◇◆


 ──夜になるまで、撫子と何度も愛し合った後。


 晩御飯を買いに、俺と撫子は近くのコンビニへと向かっていた。


 等間隔で並ぶ街灯を頼りに、二人で並んで歩く。


 いつ以来だろうか……と、そのことを、とても懐かしく感じていた。


 つい数年前まで、撫子と並んで歩くのは極普通の事だった。だけど、離れ離れで過ごす今の俺にとって、それは良くある日常ではなくなっていた。


 何気なく過ごした日々が、本当の幸せだったんだって、離れてみて初めて気づく。


「ねぇ、おにぃ」


「ん?」


 そう呼ばれて、俺は隣りを歩く撫子へと首を向ける。


「もう夜だし、弓月パイセンと会う時間決めないとだね」


「あ、あぁ、そうだな。明日の……昼前ぐらいとかどうかな? ってか、初瀬峰って今何処にいるんだ? 遠いと新幹線とかになるよな」


「分かんないけど、以前ファミレスで会った時、親戚と一緒に来てるって言ってたよね。もしかしたら、日本にいる間は親戚の家にお世話になってるとか?」


「確かに、そうだったな。明後日はナデコを送る為に地元に帰る予定だったし、その時に会う様にしようか」


「そしたら、おにぃも家に寄る?」


「そうだなぁ。予定ではナデコを送ったらすぐ帰るつもりだったけど、初瀬峰に会ったら遅くなるかもだし、実家に数日泊ってもいいかもな」


「うん、それがいいよ。お母さんも喜ぶし、何より、あたしが喜ぶ」


「なら、そうするかな。少しでも長く、ナデコと一緒にいたいから」


「うん。ふふっ」


 撫子は笑顔で頷くと、俺に手を差し出してきた。


「ねぇ、おにぃ。手、繋ご?」


 俺は差し出された彼女の手を見つめる。


 二人で並んで歩くのもそうだが、このやりとりもなんだか懐かしいなと感じた。


 撫子と恋人同士になる前は「ふざけるな」って言ってあしらっていたっけ。


 あの頃の俺って、義妹の事を好きになっちゃいけないって、必死だったから。


 それは世間体だったり、佳奈美さんを悲しませたくないって想いからだったりで、兎に角、撫子のことを好きになっちゃいけないって……心の隅にあった淡い恋心を、全力で否定していた。


 でも、そんな愚かで浅はかな幻想をブチ壊してくれたのが、撫子だった。


 撫子のキスのおかげで、俺は彼女と恋人になり、幸せな時間を過ごせている。


 初瀬峰の件もそうだけど、恋愛って自分から行動しないと、何も始まらないんだなって思う。だから、撫子はすごいって思う。ホント、撫子ってすごいよ……


「おにぃ?」


 撫子の声に、俺はハッとする……少し、ボーっとし過ぎた様だ。


「手、繋ぐのイヤだった?」


「……ううん、イヤじゃないよ」


 俺はそう言って、差し出された撫子の手を恋人つなぎで握った。


 握った手から、愛する人の温もりと一緒に気持ちも伝わってくる。


 俺を想う、撫子の優しい気持ちが。


「なぁ、ナデコ」


「なに?」


「……俺が学校を卒業したら、結婚しよう」


「え?」


 撫子は大きく目を見開いて、足を止めた。


 呼吸をしているのか不安になるほど、微動だにしない。


「お、俺の、お嫁さんになって欲しいんだ。一生、俺の傍にいて欲しい……」


 しばらく信じられないといった表情で撫子は俺の事を見つめていたが、言った事を理解すると、目に涙を滲ませて大きく頷いた。


「……うん。あたし、おにぃのお嫁さんになりたい。ずっと、一緒にいたい」


「ああ。今までも、これからも、ずっと一緒だ。愛してるよ、ナデコ」


「うん、あたしも。愛してるよ、おにぃ……大好き」


 佳奈美さんの娘である撫子が義妹となり、俺の人生は変わり始めた。


 実母が出て行って、暗く染まった俺の人生に、撫子が彩を添えてくれたから。


 それから十数年と言う年月をかけて、家族としてかけがえのない存在となり、そして愛する人になった。


 これから先、俺の人生には幾つもの困難と壁が立ち塞がることだろう。


 だけど、どんな苦難が待ち受けていようとも、乗り越えて行けるはず。


 だって俺の隣には、常に愛する撫子がいてくれるから……




『とんでもない美少女である義妹(いもうと)は俺の事が好き過ぎて結婚する気でいるが、俺は義妹を嫁にする気なんて全くない。』


                  ~完~



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                 ※ご注意※


 私の拙作を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。


 これにて『とんでもない美少女である義妹(いもうと)は俺の事が好き過ぎて結婚する気でいるが、俺は義妹を嫁にする気なんて全くない。』は完結となります。


 最後の一話は『あとがき』となります。物語ではありません、あとがきと言う名の私の反省と言い訳で、別に読まなくていい奴です。ご注意ください。


 只今、男性向けラブコメを何作か執筆中でして、今作の後半にある様な(話を畳む為に整合性を優先した)展開をなるべく排除して、終始、単純でポップな感じの作品に仕上げる予定です。(8話以降の大幅なゴリ押し変更もしません)


 ご興味がある方や、次も王白アヤセの作品を読んでやるよって方は是非、チェックして頂けると幸いです。


 投稿時期が近づいた際は、私の近況ノートにてお知らせ致します。


 それでは、敬愛なる読者の皆様。また会う日まで、ごきげんよう。

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