【短編/1話完結】はたして全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあったのか?

茉莉多 真遊人

本編

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあった。


 ただ、やらなければいけないことがなんだったのか。それはもはや、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには知る由もなかった。


 だからこそ、このバッファローの群れは全てをとりあえず破壊しながら突き進むしかないのだ。


「あれじゃないか?」


 どこかのバッファローが言った。そうなると、バッファローの群れはそちらに向かって、それが正しいかどうかさえ判断せずに突き進んで破壊していった。


「これはどうだ?」


 別のどこかのバッファローが言った。そうなると、バッファローの群れはそちらに向かって、それが正しいかどうかさえ判断せずに突き進んで破壊していった。


「こうすればきっと」


 また別のどこかのバッファローが言った。そうなると、バッファローの群れはそちらに向かって、それが正しいかどうかさえ判断せずに突き進んで破壊していった。


 やがて、バッファローの群れは気付いた。どのバッファローも何を三分以内にやらなければいけないのかを知らないことに気付いたのだ。


「誰だ、そんなことを言った奴は!?」


「おいおい、お前じゃないのか?」


「そんなわけないだろ? 俺は周りについていっただけだ!」


「じゃあ、誰がしようって決めたんだよ」


「誰だよ」




 ある男は目の前の女に話をしている。


「先生、これはどういう意味なのでしょう?」


「そうですね。おそらく、あなたは今、誰が始めたかも分からない仕事に、会社の上司や同僚、後輩たちと一緒に取り組んでいるようですが、その出口が見つからないままに、誰かが言い始めた期限に間に合わないと焦り始めたのではないでしょうか」


 男は女にそう言われると頭を抱える。彼は最近、同じ夢ばかりを見ていた。


 何をどうしたいのかが分からないバッファローの群れが時間を気にして、全てを破壊しながら突き進むしかなく、同じ所を結局右往左往している夢だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編/1話完結】はたして全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れには三分以内にやらなければならないことがあったのか? 茉莉多 真遊人 @Mayuto_Matsurita

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ