第6話万太郎ともうひとつの顔
底辺ウーチューバーである漆虎万太郎にはもうひとつの顔がある。銀河ハンターギルドに所属するハンターとしての顔だ。
もっとも、ハンターギルドという組織は名前がハンターとついているだけで、実際には色んな仕事の斡旋業者である。
「ギルドからの斡旋業務?」
ある日スマホに届いたメールはハンターギルドから万太郎を指名する仕事の依頼。本来なら登録した方が仕事を探すのだが、本人の過去の実績から依頼のあった仕事を斡旋することもあるのだ。
「えっと何々?」
メールの内容に目を通す。マッラー星系の惑星トラスコに生息するワギューの確保とその肉を下処理してドンラ星系の惑星アーケーズまで輸送して欲しいと・・・
ワギューは地球でいう牛に似た生物で、体長15メートル。頭に鋭い2本の角があり、草食だが気性は荒く、頭に鋭い2本の角があってこれで敵を攻撃する。肉は食用に角は薬になるが余りお金にはならない。そのくせ狩るのは大変なので、万太郎のような中級ハンターに斡旋という形で仕事が回ってくる。
無論、依頼を断っても良いが、受けた方がギルド内での心証はよくなるし美味しい仕事も回ってくるので大抵の者は引き受ける。
「了解。明日現地に向う」
とメールを返信する。これでギルドからの依頼を受諾したことになるのだ。
「ハンターギルド登録番号10026。万太郎です。ご注文の下処理済みワギュー一頭お届けしました」
今回の依頼主である獅子頭のラーイオ人に頭を下げる。
「ウーチューブだっけ?見てたよ。なかなか面白い娯楽だね」
ガハハと笑いながらラーイオ人は万太郎の差し出した書類にサインする。
「とりあえず依頼は完了という事で、あと聞きたいことがあるんだが?」
「なんでしょう?」
ラーイオ人が真面目な顔をして万太郎をみる。
「君はワギューの下処理のときに、その、内臓も綺麗に処理していたよね?あれ食べれるの?美味しいの?」
そう言われて万太郎は合点がいく。この世界、肝臓を食べる習慣はあるけど、その他の臓器を食べるという習慣は地球以外では聞いたことがないということを思い出した。
「あぁ、自分が活動拠点にしている所では食べる習慣があるんですよ。味は人それぞれですが、歯ごたえは良く、自分は好きですね」
「ほう。それは聞き捨てならないな・・・」
ラーイオ人の眼光が鋭くなる。ラーイオ人はゲテモノ食いでも有名な種族だ。
「是非とも食べ方をレクチャーしてくれ。報酬も弾む」
こうして万太郎は、ラーイオ人に地球のホルモン焼きを振る舞い、日本の焼き肉のタレを定期的に納めるという依頼を受ける事になった。
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