第5話 万太郎と幼なじみ
底辺ウーチューバーである漆虎万太郎には幼稚園入園のときから大学卒業のときまで共に人生を歩んだ女性の幼なじみがいる。
名前を獅子吼玲於奈。短いチリチリの金色短髪で大きな蒼い垂れ目のおっとり系のお姉さんタイプ。大学卒業後に地元の国営マスメディアに就職するも、たちまち頭角を表し、中央マスメディアに栄転。今では全銀河の女性アナ十傑にまで登り詰めた才女でもある。
「いやぁ久しぶりだね万太郎!」
ツカツカと足音をたてながら、その玲於奈が酒を飲んでいる万太郎の元にやってくる。
「良くここが解ったな・・・」
「万太郎がここでトグロ巻いてるって満兄に教えて貰った」
ニヘラと玲於奈は笑う。中央では有名な女子アナである。男の万太郎と酒場で会っていたなんて事がバレたら普通にスキャンダルだ。しかし地球は銀河でも辺境も辺境の地で、地球の街中の映像が見られるのはごく一部の動画配信だけだ。
そして、銀河でウーチューブの動画が見られるというのは地球でいうところの地方のローカル番組を都会で見ることよりも低い。
ちなみに、万太郎のやっている動画配信は、日常系を除いては良く出来たフルCG特撮だという認識だったりする。
「マスター。こっちのお姉さんにも俺と同じ酒と焼き鳥を追加で!」
「あいよ!ビール1杯とモモ、バラ、鳥皮3本追加!」
マスタ一が厨房に注文を通す。程なくビールが並々と継がれた中ジョッキと小鉢が運ばれてくる。
「この星のビールというお酒だ」
「へえ・・・」
玲於奈はジョッキを一気に煽る。
「ぷはぁ!これスパークリングワインじゃないよね?苦いし」
ぷはぁ!って・・・
「お前・・・オヤジ臭いぞ」
「え?そうなの」
口元についたビールの泡を手で拭いながら玲於奈は首を傾げる。
「うわっ!更にオヤジ度が上がった」
万太郎は残念な子を見るような目で玲於奈を見る。
「噂レベルでも流れたらダメな絵面だぞ?」
「え?そんなに酷い?」
出された鳥皮の串にかじりつきながら玲於奈は尋ねる。
「うん。少なくとも才女がしてはいけないレベル」
「う~んそれはマズイな~」
玲於奈はゴキュゴキュと半分残ったジョッキの中味を飲み干す。
「いやぁでも本当にいいねこのお酒。苦いのに喉ごしがよくてさぁ。あ、お代わり下さ~い」
玲於奈がお代わりを要求する。そしてそれは、玲於奈が完全に酔いつぶれるまで続いた。
「お前・・・獅子じゃなく虎だったんだな」
「昨日のことは、誰にも、はなさないで、下さい。お願いします」
翌朝、玲於奈は土下座して万太郎に迷惑をかけた事を謝罪したという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます