第3話 クルージングは危険がいっぱい その7Sea済度 。
「アオイちゃん!サクラコちゃん!!」
思わず〈レッド〉が叫ぶ。
「ああっ!」
〈ピンク〉は〈グリーン〉の介抱の為、頭を膝の上に乗せたままなので、身動きが取れない。
〈グリーン〉は未だ目覚めない。
「いけない!」
〈瑚姫〉はそう叫ぶや否や、〈ブルー〉と〈ブラック〉の二人を追いかけて走り出す。
すると、その身体が〈光の粒子〉の様なものに変化し、一瞬で海に落ちて行く二人に追いつく。
そのまま二人を包み込むと、海へと飛び込んで行った。a
〈ブルー〉と〈ブラック〉は、多少の衝撃はあったものの、無事である。
〈光の粒子〉に包み込まれたまま波間に浮いている。
だが、その廻りを〈マーマン〉達が囲み始めた。
〈光の粒子〉が解け、二人は〈瑚姫〉の両腕に抱えられた格好になる。
「お姉さん!」
〈ブルー〉が〈瑚姫〉に声を掛けるが、〈瑚姫〉は意識がはっきりしていない様だ。
おそらく〈光の粒子〉に変化するには、相当量の〈妖力〉を必要とするのだろう。
相手が弱っていると感じたのか、〈マーマン〉達は今にも襲い掛かろうとしている様だ。
一方、船の中では、新たな戦いが始まっていた。
「何なのだ貴様ら!」
「こいつらも犠牲者だろう。」
貨物室からから上がって来た〈伯爵〉と〈安倍孝明〉の二人だが、やがて如何にも怪しげな〈結界擬き〉を展開している部屋の前に着いた。
部屋の前にはご丁寧に名前が張ってあった。
〈Count Dracula〉
「伯爵……。」
「……。」
〈伯爵〉と呼ばれた男がプルプル震えている。
どうやら笑いを堪えているのではなく、怒りに震えている様だ。
ドアノブに手を賭けようとした時、いきなり扉が開いて数人の男女が襲い掛かって来た。
その隙に、一人飛び出して逃げて行った。
「あっ!待てコラ!」
「邪魔だ!」
襲って来る男女は、まるで生気が感じられないが、かなりの怪力を有しているらしい。
だが、ここで手間取ってる訳にもいかない。
「ああ、鬱陶しい!塵に返すぞ!」
「仕方あるまい。穏便に済ましたかったがな。」
「どうせ〈死人〉だ。構う事はないだろう!」
と言うと、〈伯爵〉と呼ばれた男は、自身の身体を〈霧〉に変化さて、襲ってきた男女を包み込んだ。
暫くして〈霧〉から元の身体に戻ると、包み込まれた男女は消えていた。
足元には、塵の山があった。
残っていた男女も、〈安倍孝明〉の足元で塵の山になっていた。
「急ごう。」
「吾輩、気分が……。」
「好き嫌いは良くないな。」
「そう云う問題では無いんだが……。」
霧になって包み込んだ時、相手のエネルギーを少し吸収してしまったらしい。
デッキの戦いでは、〈ブルー〉と〈ブラック〉と〈瑚姫〉が海に落ちてしまった為に、戦力ダウンで苦戦していた。
〈レッド〉もそろそろ限界である。
「ちゅど……、あれ?」
〈フレイム・ジャベリン〉は出なかった。
ここぞとばかりに〈マーマン〉達が殺到する。
「きゃああ!」
「レッド!」
殺到した〈マーマン〉達だったが、何本もの〈触手〉が〈マーマン〉が絡みつき、その行動を制限した。
ピンク色の〈触手〉だ。
〈ブラック〉が〈D・トンネル〉より展開した〈触手みたいなもの〉と違い、こちらは完全な〈触手〉である。
ヌメヌメと、テラテラと、粘液の様なものを滴らせながら蠢いている。
そして、あろうことか、拘束した〈マーマン〉の口の中に、〈粘液の様なものを滴らせた触手〉を無理やりねじ込んでいく。
ビクンビクン反応している〈マーマン〉から〈触手〉が離れると、次の獲物を狙って蠢く。
〈触手〉が離れた〈マーマン〉達は、恍惚の表情を浮かべ、妙に腰を振動させながら仲間である〈マーマン〉達に襲い掛かった。
※ 注 この物語は全年齢対象です。
〈レッド〉がゆっくり首を回し、〈触手〉の発生元を見る。
そこには、背中から無数の〈触手〉を蠢めかせながら真っ赤な顔をして立っている〈ピンク〉がいた。
「モモちゃん……、モモちゃんの、エッチ。」
モモは崩れ落ちた。
アカネよ、それは悪手だ。
折角〈ピンク〉が参戦したのに、リタイヤしてしまった。
ーーー、気持ちは分からなくも無いが。
海の上では、〈ブルー〉達の廻りに、女性の顔が現れた。
〈人魚〉達だ。
みんな〈ブルー〉達を見ている。
〈瑚姫〉達が前後不覚に陥った”歌声”は、彼女達によるものだった。
内側に〈人魚〉達の輪、外側に〈マーマン〉達の輪が出来た。
攻撃の機会を伺っている。
〈マーマン〉達が近づいてくる。
すると、〈人魚〉達は振り向いて〈ブルー〉達に背を向け、〈マーマン〉達と対峙する。
「助けて!」
思わず〈ブルー〉が叫ぶ。
〈人魚〉達は、近づいて来た〈マーマン〉達に”尻尾”を振るって反撃を開始した。
ビタンビタン、平手打ちの様に〈マーマン〉達の横っ面をひっぱたく。
どうやら〈人魚〉達は、敵意を持ってはいない様だ。
「えっ?」
「助けられているのかしら?」
〈ブルー〉と〈ブラック〉は困惑したが、直ぐに応援した。
「綺麗な〈人魚〉のお姉さんたち!やっちゃえ!」
「これは、……。」
〈瑚姫〉が復活した。
「〈人魚〉さん達が、味方してくれているのですの。」
「ほう。」
そして、”イルカ”達がやって来た。
”サメ”や”クジラ”も現れる。
〈ブルー〉にはそれらの海に生き物が、自分の友達であると感じられた。
自分の『助けて!』と云う叫びに反応してやって来たのだ。
一匹の”イルカ”が〈ブルー〉の下に潜り、〈ブルー〉を背中に乗せて浮上する。
「ここはボクにまかせて!」
そう叫ぶや否や、〈イルカに乗ったブルー〉は〈マーマン〉達に突っ込んで行く。
その後を”イルカ”や”サメ”の群れが続き、〈マーマン〉達を蹴散らしていく。
”マッコウクジラ”をはじめ”クジラ”達は、〈口腕〉に向かって行く。
「おチビちゃん。」
「ブラックですわ。」
「なら〈ブラック〉ちゃん、貴方の”能力”で船内の入れる?」
「たぶん、入れますわ。」
〈瑚姫〉は〈ブラック〉を抱えたまま、船の方に泳ぎ出す。
勿論、〈ブラック〉も泳げるのだが、”底”が分からない深い海では、恐怖して思う様に動けない。
少し怯えている今の〈ブラック〉は、いつもの何倍も可愛いかった。
こここにいない〈コータ〉がこの事を知ったら、血の涙を流すだろう。
やがて〈瑚姫〉達は船にたどり着き、〈ブラック〉の〈D・トンネル〉で船内に入ることが出来た。
そこは貨物室だった。
〈レッド〉はジリジリ近づいて来る〈マーマン〉達を睨んでいた。
〈瑚姫のお姉さん〉と〈コゼッタ〉はなお戦っているが、じり貧だ。
〈マーマン〉達が止まった。
怯えた様に後ずさる。
ふと見ると、九つの〈光の玉〉が浮かんでいる。
やがて〈光の玉〉は〈炎の玉〉となったが、やはりゆらゆらと浮かんでいるだけだ。
それでも〈マーマン〉達は恐怖している様だ。
〈レッド〉は直感的に思った。
『これは……、ひょっとして今度は、物凄い”大妖怪’が現れた?』と。
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