第3話 クルージングは危険がいっぱい その2 Ocean愛’s。

ゴスロリ♡5のメンバーは今、横浜港に来ている。

賑やかなのは何時もの通りだが、今日はまた一段と姦しい。

何故なら、メンバー全員にプラスして、それぞれの家族が一緒だから。


アカネは両親と兄で四人。

モモは両親と祖母で四人

アオイは両親だけで三人。

アサギは両親と妹で四人。

サクラコは姉が一人だけだが、それぞれの従者がいるので、合わせて四人。

そして、〈小銭小僧〉改め〈コゼッタ〉。


これから太平洋に向けて、豪華客船でクルージングが始まる。

そう、これが〈謎の子供失踪事件〉を無事解決したご褒美、総統曰く”特別ボーナス”なのであーる。


豪華客船、確かに豪華客船だが、それ程大きくはない。某タイ〇ニックを小さくしたような感じ。

わざと古い外観にしているのだろう。

それにクルージングと云っても、ニホンの領域からは出ないので、国内旅行だ。

日程も三泊四日。

三日間海の上。

勿論、退屈させないイベントは盛りだくさんである。


参加費用もリーズナブルではあるが、一般庶民がおいそれと出せる金額では無い。

しかも、日本慣れした海外のセレブ達にも人気があるので中々チケットが取れない。


更に夏のこの時期の”避暑地”としてかなり 需要が高く、運良く予約取れても三年待ちとか。

なので、キャンセルでもない限りいきなり参加出来る事は無いのだが。


ただこの船は〈ハヤミ・ツーリズム〉の持ち船なので、〈人外災害対策機構 D.E.M.A〉の大スポンサーでもあるサクラコの〈おじい様〉が

絡んでるのかも知れない。


意気揚々と客船に乗り込む五人のご家族+妖怪一人。


そして、その様子を気にしながら、間をおいて乗り込む怪しい大人が数名。


客船の中を改めて見てみると、やはり船内はどこもかしこも豪華一色。

お金がかかっているのが良く分かる。

目利きじゃ無い一般庶民であっても、これでもかと云うくらい主張しているので、納得せざるを得ない。


それぞれ割り当てられた部屋に荷物を置くと、親たちは自己紹介を含めた挨拶の為、ラウンジに集まる。

一つのテーブルに陣取って、話始める。

ラフな格好でも、一々名刺交換するあたり、ニホン人であることが良く分かる。

この中では、アオイとアサギの家族は顔見知りだ。

実は今年の春、親戚になったばかりなのである。

みんなそれぞれ挨拶の後、雑談に移った様だ。


子供達も集まって、客船の中を”探検”する。

アカネとアオイは走り去っていった。

その後をコゼッタが追いかける。

モモとアサギとアサギ妹は話しながらゆっくり歩いて行く。


最後にサクラコと姉のカエデコが並んで歩いている。

カエデコは〈速水・エリゼバス・楓子〉と云う名で、現在サクラーレルチェの中等部2年生。

顔立ちはサクラコとよく似ていて、同じ蒼い瞳を持つ。

違いは身長と、髪の色がサクラコは漆黒なのに対して、カエデコの髪は栗色に近い。

そして中等部2年生なのに、既にけしからんボディを持っている。


更にその後ろにはお馴染みのサクラコの第一の従者、斑鳩洸太朗と、カエデコの第一の従者、斑鳩慧(アキラ)。

アキラはコータの姉で、カエデコとは同級生になる。

コウタと同じく整った顔立ちで、背も高い為、男装の麗人を思わせる。

カエデコとアキラは主人と従者の関係と云うより、親友同士である。


しかしまあ、この四人の目立つ事!

すれ違う人達は例外なく振り返るし、中にはガン視する人達もいる。

サクラコとカエデコとアキラはあまり気にしていないが、コータとしては気が気ではない。


皆、朝が早かったのでまともに食事をしていない。

ようやっと落ち付いて来たので、子供達を呼び戻して、遅い朝食、若しくは早めの昼食を取る事にした。

時間がずれている割には結構人がいる。

ビュッフェ形式なので、気が楽だ。

なんせ、みんなマナーなんて自信ないし。


あとでハヤミ姉妹に教えて貰うか。

あの二人はキッチリ知ってそうだ。


和気あいあいと、楽しく食事をしている〈ゴスロリ♡5〉とそのご家族だが、チラチラとぶしつけな視線を感じる。

その先は大概、サクラコとカエデコとアキラとコータなのだが。

いや、アカネ兄もチラチラ見ている。

今彼は、〈高値に花〉と云う存在が実際に存在している事に、軽く感動している。

落ち着きのないアカネではあるが、兄の方は幾分落ち着いている様だ。

いや、もしかしたらワンチャンあるかも知れない、と思っているかも知れないが。


アサギ妹もチラチラ見ている。

こちらは”チラチラ”と云うより、”キラキラ”だろう。

今日の日記には”妖精さんに会いました”と書いているのだ。


いつの間にか現れた黒服たちが、どこかの家族を連れて行く。


食事の後は、お父さん達は娯楽室へ、お母さん達は買い物へ、子供達+妖怪はプールに行と決まった。

この船にはデッキに二つ、船内に一つのプールを備えている。


子供達は銘々水着になってプールで遊ぶ。

女子の水着は、みんなかわいらしいセパレートだ。


アカネとアオイが水泳で競争している事を除けば、水遊びと云ったところか。

浮袋で浮いていたり、ビーチボールで遊んでいたり。


他にもプール遊びをする家族や、デッキチェアーで寛ぐ人達もいる。

太陽の下、とても健康的だ。

何となく怪しげな人達もいるが。


そしてここでもハヤミ姉妹と従者姉弟は目立ってしまう。

幼いながらも均整の取れた身体つき、アフロディーテさながらの美しさだ。しかもアポロン迄いる。

何人か、取り付かれたように携帯を向ける。


いつの間にか現れた黒服たちが、どこかの家族を連れて行く。


夕食の時間になった。

皆ホールに集まる。

イベントがあるので、殆どの人が紳士淑女の恰好をしている。

コスプレだね。

勿論、貸衣装も充実している。


お母さん達は買い物に満足し、お父さん達は娯楽に満足したらしい。

海外のブランド物が、まるで免税店の様な価格で買えるし、娯楽室はまるでカジノの様だ。

なぜか麻雀もある。

お父さん達は最初、ビリヤードなんかをしていたが、最後にその麻雀をしたらしい。

初めてだというアオイのお父さんがカモになるかと思いきや、天性のカンで一人勝ちした様だ。

アカネとアサギとモモのお父さんがリベンジに誘ってる。


夕食の後はイベントの舞踏会だ。

プロのダンサーがプロの楽団の演奏に合わせて、優雅に踊る。

さながら映画のワンシーンの様だ。


客も踊る事が出来る。

それなりに経験をしている人達でなければ、まず参加しないが。


その中でサクラコとコータ、カエデコとアキラが踊っている。

子供ながら、プロのダンサーに引けを取らない。

可愛くて、可憐で。

鑑賞に耐える美しさだ。

まるで自分も映画の中にいる様な錯覚に陥る。

何人か、取り付かれたように携帯を向ける。


いつの間にか現れた黒服たちが、どこかの家族を連れて行く。


その他にも、幾つもシアターを備えていて、映画の上映をは勿論、、お笑いのライブまでやってる。

今回は特別だから、もっと夜更かして遊びたいのだが、流石に疲れたので、皆早々に休む事にした。


静の夜は更けて行く。

穏やかな波の中、恋人同士だろうか、幾人かのカップルがデッキに屯している。

わざと明るくしていない照明の中、夜の海など吸い込まれそうな恐怖しかないが、それを指摘するのは野暮と云う物だろう。


平和だ。

途轍もなく平和だ。

この海の続く先、戦争をしている国もあるのに、ここには、ただ、静寂な時が支配するだけ。


その中に、何となく見覚えのあるカップルがいた。

男性の方は、高校生くらいにしか見えない。

童顔で、背も高くない。

片や女性は、成熟した大人の女性だ。

女性の方が背も高い。

その女性は意識していないらしいが、フェロモンがあふれ出ている。


”そんなガキといないで、俺らと一緒に行こう”とナンパして来る連中もいるが、何故か直ぐ回れ右をして退散する。


そしてデッキの反対側に、こっちは完全に見た事のある男性が、ビールを片手に暗い海を眺めていた。



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