第2話 水飴神社の秘密 その3 行動。
夏休みの某日。我らが〈ゴスロリ♡5!〉は新幹線の乗客になっていた。
流石はニホンが世界に誇る技術!旅は快適そのものであった。
駅に降りる前までは。
「許さん!〈妖怪:コクショ〉め!退治してやる!」
アカネはやっぱり憤慨している。
「誰?涼しいって言ったの!」
「トウホクだって暑いじゃん!」
「去年、スキーに来たけど、もう来てあげない!」
「雪を降らせよ!」
「盆地なので、しょうがないですわ。」
サクラコを抜かして、みんな酷い。
気持ちは分からんでもないが。
田舎だって、夏は暑いんだよ。
だって夏なんだから。
「スター〇ックスかド〇ール、無い?」
「みんな、こっちよ!」
既にレモンお姉さんが探していた。
みんな暑さに弱過ぎである。
気持ちは分からんでもないが。
田舎だって、以下同文。
ホテルにチェックインする迄、もう一度、打ち合わせをしましょう。
本部と新幹線の車内で、打ち合わせはしているが、そこはそれ。
だって暑いんだもん。
テーブルの上に資料を広げる。
頼んだ飲み物の水滴が資料に付かない様、要注意だ。
資料と云っても、主だったものは、被害にあった子供たちの証言と、記憶に会ったものを描いて貰った絵だ。
証言はあまり当てになる様なものでは無いが、描いて貰った絵には幾つか共通点がある。
「まず神社ですわね。」
皆が同じ様な神社の絵を描いたが、親御さんはこんな神社には行ってないと言う。
確かに、見窄らしい、まるで手入れが無いボロボロの神社だ。
わざわざこんな神社には行かないだろう。
それと、何人かが同じ様な絵を描いている。
「これは、〈こけし〉だよね。」
確かに何体もの〈こけし〉の様に見える。
ただ、色が灰色だったり、赤かったりしている。
「〈こけし〉を奉納している神社でしょうか?」
「その条件で調べ開けれど、そんな神社は無いんだよね。」
「これからの予定として、まず〈片っ端から神社にあたる〉のと、〈地元の物知りに聞く〉のと、
〈図書館で調べる〉の三つがあります。」
「ホテルのチェックイン迄、まだ時間があるので、早速行動しましょう。」
「でも、〈トウホク〉は広いから、今から調べたとして、3日で終われますか?」
「大丈夫。その時は、日を改めてまた来ればいいのよ。」
「そうなんですか?」
「ええ。この案件は、酷い実害が無いので、急ぎで解決しなくもいいの。」
「そうなんだ。」
納得したところで、最初に図書館に行く。
単に”冷房の効いたところ”から”冷房の効いたところ”に移動しているだけじゃないか?
気持ちは、分からんでもないが。
図書館では”神社の場所に確認”と”郷土史の調査”だ。
暫くは皆真剣に調べていたが。
飽きた。
まずアカネが。
なので、図書館に残る者と、外に行く者に分かれる事にした。
レモンにすれば、全員一緒の方が安心出来るが、効率を考えるとバラけた方がいいし、ここは考え何処だと悩んだあげく、
しっかり者のサクラコを残し、他のメンバーで外に出た。
サクラコは掛け値なしの美少女ではあるが、声を掛けづらい高貴な雰囲気があるし、第一、ナンパ目的の野郎共は図書館なんぞに
出没しないと思っていた。
ただ、”声を掛けづらい高貴な雰囲気の美少女”は間違っていないが、”しっかり者”かどうかは、少し不安が残る。
そして、”不埒物は何処にでも出没する”と云う事を、レモンは理解していなかった。
これはレモンも経験不足によるところが大きいので、仕方の無い所だ。
アカネ、モモ、アオイ、アサギ、それにレモンがタクシーで神社を廻る。
案外予算が使える組織なんだな。
ガイドブックや、地図で調べて神社へ片っ端から廻る予定だが、まずは大きな神社だ。
目的の神社じゃなくても、話を聞くために。
最初の神社は、大きくて古いが手入れが行き届いているし、清潔で、尚且つ涼しげな雰囲気がある。
あくまで雰囲気だが。
あと、蝉の声。
折角だからお参りして、あと社務所を訪ねて宮司さんに話を伺う。
取り敢えず、今日はこの繰り返しだ。
どこでも、宮司さんは親切の対応してくれた。
あまり役に立つ情報は無かったが、郷土史に詳しい人も紹介してくれた。
しかし、ここはなんでこんなに神社・仏閣が多いんだ?
民家の間や、ビルの隙間にもある。
祠だけの稲荷神社とか、至る所で目にする。
なんでだろう?
サクラコは、ちょっと外れたテーブルで調べ物をしている。
この図書館は大きくて明るいが、少し冷房が効き過ぎでなので、移動したのだ。
何冊かの資料を重ねて、没頭している。
面白い本を見つけた。
有名ではない神社・仏閣にまつわる話をまとめた本だ。
子供達の描いた絵と、似ている神社の写真が幾つか乗ってる。
民俗学の本の様だ。
「ねえちゃん、めんげな。ちっとこっちさこう。」
いつの間にか、何人かの若者に囲まれていた。
「おれたちいけてっぺ!こったらとこさいねえで、いくべいくべ!」
若者(?)何だろうか。
山から下りて来たサルみたいな顔をしている。
うるさい連中だ。
あと、分かる言葉で話せ。
無視していたが、しつこく絡んでくる。
学芸員のお姉さんが注意するが、あまり効かない。
「うっつぁし!」
「ほら!」
まずい!腕を掴まれた。
「君たち、僕の妹に何か用かな?」
また一人表われた。
背は高いが、細身の青年だ。
体育会系では無いだろう。
サクラコを守るには役不足に思えたが。
「なんだ、おめ!」
一人、青年に掴みかかて来たが、怯んだのはサルの人達だ。
「ううっ!」
役不足と思われたが、この青年には妙な迫力がある。
これは、もしかして”殺気”?!
「か、かえっぺ!」
サルの人達は出て行った。
「お嬢様。」
細身の青年の後ろから、コータが現れた。
サクラコが心配で、隠れてついて来たのだ。
サクラコを助けようとした時、すっと青年が出て来たので、コータは出遅れてしまった。
拍手が響いた。
いつの間にか、図書館に来ていた人達がギャラリーになっていたのだ。
目立って居づらくなってしまったので、図書館を出る事にする。
サクラコにとって、目立つのは本意では無い。
只座っているだけでも絵になる美少女のサクラコなので、目立つなと云うのは無理がある。
それはまるで深窓の令嬢の如く。
実際、深窓の令嬢なんだが。
サクラコはさっき読んでいた民俗学の本を借りようとしたが、青年に止められた。
なんか考えがあるんだろうと、サクラコは素直に従う事にする。
三人は、近くの休憩できる喫茶店か何かを探したが無かったので、その代わりに見つけた甘味処に移動した。
最近は甘味所も少なくなってきたから、珍しいと言えば珍しい。
サクラコには、甘味処なんて初めての経験なので、新鮮だった。
サクラコとコータが並んで座り、青年はサクラコの向かいに座る。
コータはコーラを。サクラコは青年の勧めであんみつを注文した。
青年はジャンボパフェだ。
ジャンボパフェだ。
ここにはモモがいないので、誰からもツッコまれない。
そしてコータはずっと青年を睨んでいる。
「彼氏、そう睨むなよ。僕はこう云うものです。」
と言って、青年は和やかな雰囲気で名刺を差し出した。
「彼氏ではありません!」
コータはサクラコの第一従者を自負している。
彼氏なんてとんでもない!
傍から見ればコータは、中学生ながら背が高く美少年なので、サクラコと並ぶと、とてもお似合いのカップルに映る。
実際にコータは文武両道、控えめで性格も良く、全てにおいて高スペックな最良物件、いやみなくらい完璧超人である。
当然モテる。
モテモテである。
が、本人はサクラコ以外に興味が無い。
サクラコの従者であることが至上の喜びである。
サクラコがコータをどう思っているのかは分からないが。
まあ、本人が幸せなら、それでいいか。
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