第2話 水飴神社の秘密 その1 講習。

今日も真夏日だ。

おかしい。

まだ六月だよ。

これはきっと〈妖怪:フカイシスウ〉の所為に違いない!

とんでもないヤツだ!封印してやる!

そんな妖怪が存在するかどうかは知らないが、アカネは憤慨していた。


「暑いね。」

「ヒショチに行きたいよね。」

たぶん、避暑地に行っても暑いんじゃないかとモモは思ったが、

口に出すと誰かに怒られそうな気がしたので、黙っていた。


二人は〈D.E.M.A〉本部に向かって歩いていた。

アカネとモモは〈人外災害対策機構 D.E.M.A〉に所属する、現代の魔法少女だ。

実のところ、魔法少女見習いなので、今は色々と学ぶ事がある。

休日なのに、お勉強するのだ。


体術や魔法の訓練は大好きだが、憲章とか、座学は苦手だ。

勿論、魔法と云う、特別なチカラを好き勝手に使えない事は理解している。

夏休み前の試験に合格すれば、晴れて魔法少女として活躍出来る。

仮免ではあるが。

だけど、仮免になると、〈妖精さん〉を見る事が出来るらしい。


アカネは〈ゴスロリ♡レッド〉として活躍する自分の雄姿を想像すると、自然と笑顔になるのだった。


本部に着くと、既にサクラコ、アオイ、アサギは来ていた。

軽く挨拶を済ませて、最初は座学。

30分+休憩10分が3回、終わると、今日は初めての魔法の訓練がある。


座学三時間目。

三時間目の講師は、ワカナお姉さんだ。

チャタローお兄さんもいるが。

「今日は、皆さんが使える魔法について、説明します。」

「やったあ!」

アカネは待ち望んでいた科目なので、もう興奮している。

他の科目も、このくらいノリノリでやってほしい所だ。


「アカネちゃん。アカネちゃんは炎を操る〈爆裂魔法〉ね。」

「おおっ?」

「次はモモちゃん、モモちゃんは〈桃色魔法〉ね。」

「えっ?」

「サクラコちゃんは〈闇魔法〉。」

「あら?」

「葵ちゃんは水を操る〈水魔法〉ね。」

「ほう?」

「アサギちゃんは風を操る〈風魔法〉よ。」

「はい?」


「あの、桃色魔法って……?」

「空飛べるの?」

「飛べないわよ?アカネちゃん。」

「桃色魔法……。」

「闇魔法といいますと?」

「うん、サクラコくん、闇魔法に関しては文献も少なく、よく判ってないんだ。」

「桃色……。」

「水芸?」

「違うわよ、アオイちゃん。」

「……。」

「あったかくして寝なくちゃ。」

「アサギちゃん、風邪じゃないわ。」

何故か、モモは無視された。

誰も目を合わせようとしない。


「あの……。」

「さあ、おのおの専用の個室で、魔法を試してみよう!その後お昼にして、今日は解散だ!」

それぞれの名前の書かれた部屋に入って行った。

モモは取り残された。


「……。」

仕方ないんで、モモも〈ゴスロリ♡ピンク 様〉と書かれた部屋に入って行った。


「頑張るんだモモ!挫けるな!きっと明日はいい日になる!」

いつの間にか現れた〈総統〉が、密かにモモを応援するのであった。


「ゴスロリ♡ゴー!」

デフォルメされた豆柴が描かれたキーホルダーを手にかざして、アカネは〈ゴスロリ♡レッド〉に変身する。

赤と白を基準とした、ゴシックアンドロリータに、赤いグローブと赤いブーツ。

いかにも元気溌剌って感じだ。

額には赤いハートマークがある。

そのハートマークには、上部からとがったイヌ耳が生えていた。


一応、ワンちゃん要素もあるので、アカネは安心した。

何を安心したかは謎だ。


アカネは、近くに御姿見の前で念入りに確認すると、満足するように頷いた。


幾分気分が高揚している今なら、思い切った魔法が使える様な気がしたが、どうすればいいのか分からなかった。


部屋がノックされた。

「どうぞ?」

入って来たのは、チャタロー兄いさんだ。


「やあ、早速変身したね。」

「はい。それで、魔法はどうやるんですか?」

「まあ、待ちたまえ。落ち着いて。まず自分の中の魔力を感じるんだ。」


「自分の中の魔力?」

「心を静めて、身体の内にある、エネルギーを感じるんだ。大丈夫、間違いなくアカネちゃんの内に存在しているチカラだから。感じられるよ。」


落ち付けと言われたので、深呼吸してみた。

「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー!」

それ深呼吸と違うから!


「じゃあ、僕は他のみんなにも伝えて来るから。」

チャタローは出て行った。


暫くゆっくり深呼吸をしていると、胸の辺りで何かが渦巻いてる感覚がある。

それは、暖かくあり、回転しながら血液の様に全身に流れている様な感じだ。


またノックがあって、チャタローが戻ってきた。

「どうだい?」

「うん。分かった気がします。」

「では次に、その魔力を少し、流れを持ってくるような感じで、手のひらに集めてごらん。」


「うーん……。」

「ううーん……、こう、かな?」

手のひらに、何かのエネルギーが渦巻いているような感覚がある。


「そのまま、あそこに立ててある丸太に向かって、放出するような感じで。」

10メートルくらい先に、等間隔で太い丸太が何本も立ててある。


「えっと、えいっ!やあ!」

何も起こらない。


「なかなか難しいや。」

「まあ、初めてだからね。」


「おりゃ!とりゃ!」

「ありゃ!こりゃ!」


「うーん、だめかな。」

「ちゅどーん!」

いきなり手のひらから1メートル位の炎の槍が飛び出した。


ドドーン!!!

辺り一面吹き飛んだ。

丸太は勿論、壁にも穴が開いた。


「……、えーと。」

「……、す、すごい出力だ……。」

暫し二人は茫然と見入っていた。」




「ゴスロリ♡ゴー!」

デフォルメされたがラガマフィンが描かれたキーホルダーを手にかざして、モモも〈ゴスロリ♡ピンク〉に変身した。

ピンクと白を基準とした、ゴシックアンドロリータに、ピンクのグローブとピンクのブーツ。

全体的に、可愛いイメージだ。

額にはピンクのハートマークがある。

そのハートマークには、上部からネコ耳が生えていた。


そして、チャタローに言われた通り、心を落ち着ける為、瞑想する。

すると、直ぐに胸の辺りに暖かく優しいエネルギーの様な存在を感じた。

それを、身体中に張り巡らせることも出来た。

アカネより上手に制御している。

だけど……。


モモはそれから何もしなかった。

手のひらの集めて放出?

ナニを?

だって桃色魔法だよ?

桃色って、なに?なんなの?


……。

これは全年齢対象だよね?


結局、何も出来なかった。

モモの悩みは尽きない。




「ゴスロリ♡ゴー!」

デフォルメされたミニレッキスが描かれたキーホルダーを手にかざして、サクラコも〈ゴスロリ♡ブラック〉に変身した。

黒と白を基準とした、ゴシックアンドロリータに、黒いのグローブと黒いブーツ。

大人っぽいセクシーさがある。

額には黒いハートマークがある。

そのハートマークには、上部からウサギ耳が生えていた。


サクラコチャタローに言われた通り、心を落ち着ける為、深呼吸するする。

「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー!」

おまえもか!




「ゴスロリ♡ゴー!」

デフォルメされたベルーガが描かれたキーホルダーを手にかざして、アオイも〈ゴスロリ♡ブルー〉に変身した。

青と白を基準とした、ゴシックアンドロリータに、青いグローブと青いブーツ。

みずみずしい躍動感がある姿だ。

額には青いハートマークがある。

そのハートマークには、上部から尾びれがリボンの様に生えていた。


アオイはワカナに指導して貰う。

同じ様に、心を落ち着かせる為、大好きな俳優とデートしている姿を想像する。

却って興奮しそうだが。

因みに好きな俳優は〈キアヌ・○-ブス〉だ。


「やあ!とお!」

変化が起こる迄、時間は掛かりそうだ。




「ゴスロリ♡ゴー!」

デフォルメされたツバメが描かれたキーホルダーを手にかざして、アサギも〈ゴスロリ♡グリーン〉に変身した。

緑と白を基準とした、ゴシックアンドロリータに、緑のグローブと緑のブーツ。

爽やかで清潔感のある雰囲気を纏っていた。

額には緑のハートマークがある。

そのハートマークには、両脇から翼が生えていた。


アサギもワカナに指導して貰う。

同じ様に、心を落ち着かせる為に、緑の草原と青い空、吹き渡る風、その中で昼寝している自分の姿を想像した。


「ぐう。」

アサギは寝てしまった。



案外大物なのかも知れない。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る