第1話 結成!ゴスロリ5 その4 組織。

次の日曜日。

先週の寒さがまるで嘘の様に晴れて、今週は気温が上がった。

今日は特に日差しがキビシイ。

「暑いね。こんな日は、日焼け止めが汗で流れて、目に染みるんだよね。」

モモは待ち合わせの間、ふとそんなことを独り言ちた。

小学4年生でも、流石に女の子だ。今から肌に気を付けているらしい。


「そろそろ迎えが来るね。」

ちょっと大き目な腕時計に目を落として、アカネが答えた。

アカネはまだ気にするお年頃になっていない様である。


同級生なのに?


バスがやって来た。

いや、車体が小さい。ハ○エースか。

横にはしっかりと、どっかで見た様なアニメノキャラクターが描かれている。

あくまで、”どっかで見た様な、ひょっとして、違うのかも”というキャラクターである。

ここは大事なトコである。


ハ○エースのドアが開いた。スライド式のドアだ。

アカネは乗り込もうとしたが、止まって、辺りを見渡した。

「ねえ、サクラコちゃんは?」

「まだ来てないね。」

取り敢えず乗って、座席に座った瞬間、サクラコが現れた。

まるで瞬間移動の様に。


「お早う御座います。さあ、参りましょう。」

流石はイイトコのお嬢様である。

行動が読めない。


「おはよう。」

「あはよう。」

あかねはおかしな日本語になっているが、気にせず、サクラコが現れた辺りを見渡している。

モモは、アカネが誰かを探していると思ったが、何も言わないでいた。

サクラコがその誰かを撒いてやって来たことが明白だからだ。


「おはよう。」

「おはよう。」

ふと、後ろの席に、同じくらいの少女が二人、座っていた。

「おはよう。」

「おはよう!」

「お早う御座います。」


「ねえねえ、きみたちも〈妖精さん〉に選ばれたのかな?」

後ろの席の、青いTシャツを着た、ちょっとボーイッシュな女の子が声を掛けてきた。


「そうだよ!わたしは暮内 茜、小学四年生だよ!宜しくね。」

「私は百地 萌々です。同じく椚第一小四年。宜しくお願いします。」

「初めまして。速水・ビュクトリア・桜子ですわ。」


「僕は花田 葵、紬小学校の四年生。宜しく。」

「私は比和 あさぎです。棗小学校の四年二組です。宜しくお願いします。」


「みんな四年生何だね。」

「本当。偶然ですわ。」

モモはひょっとしたら、〈妖精さん〉はロ○コンじゃないかと思ったが、空気を読んで言わなかった。


「そうだとも!君たち五人でチームを組んでもらう事になる。」

村﨑先輩が後ろを振り返って言う。

こらっ!よそ見運転すんじゃねえ!


和気あいあいとした雰囲気の内に、車は都心からやや外れた所にある大きな立体駐車場に入って行った。

車ごとエレベーターで地下に運ばれる。

ずいぶん深く潜って行く気がする。

暫くして、エレベーターは停止し、車の前の扉が開いた。

その先はトンネルだ。

かなり明るいトンネルを進むと、同じ様な車が何台も止まっている駐車場に出た。

そこには茶太郎お兄さんが待っていた。

「交代だ。」

村﨑先輩に替わって、茶太郎お兄さんが案内してくれるらしい。

 

茶太郎お兄さんの後について行く。

幾つかの扉を経て、今度は人専用のエレベーターに乗る。

エレベーターは上昇する。


一々下がったり上がったりする必要があるのか!と思ったが、みんないい子なので口には出さなかった。


エレベーターを降りて、また幾つかの扉を経て、〈総統〉と書いてある部屋に出た。


「YAT RANGERの茶木茶太郎です!入ります。」

「どうぞ。」


茶太郎お兄さんがノックして声を掛けると、中から渋い声が帰って来た。

部屋の中には、重厚な机があり、其処に、仮面を付けた人物が座っていた。


彼が間違いなく総責任者だろう。

しかしアカネ達は困惑した。

何故なら、その仮面といい、雰囲気といい、どう見ても悪の組織のボスにしか見えなかった。


うん、まぎれもなく、〈総司令〉とかでは無く、〈総統〉だ。

片手をあげて、敬礼したくなる。〈イー!〉とか言って。


「話は全て聞いている。我が〈D.E.M.A〉は君たちを歓迎する。後は茶太郎君から説明を受けたまえ。」

「総統さんは、説明してくれないのですか?」

流石はアカネだ!他の四人は若干引いているのに全然物怖じしない!


「何!き、君はこの姿が怖くないのかね?」

「全然。」


「そうかあ、そおーかあ!総統になって苦節20年!やっと理解してくれる子が!」


「では失礼します。」

茶太郎は感涙にむせぶ総統を無視して、みんなを連れて出て行く。


「あっ、待って……。」

バタン!一番偉い総統は無視された。

誰も否は無かった。だって面倒くさい事になりそうだったから。


今度は〈第一重要談話室〉という部屋に入った。


「みんな、座ってくれ。」

そう言うと茶太郎は、壁に掛けたインターフォンに向かって話し出す。

「俺だ。お茶を頼む。」

何故、机の上じゃなく壁にあるのだろう?

疑問は蓄積されていく。


「改めて挨拶しよう。俺は『〈人外災害対策機構 D.E.M.A〉所属。〈D.E.M.A戦隊 YAT RANGER〉』の隊員でコードネームはチャレンジャー。

モットーは”何でも挑戦”だ。」

そしてアカネから再び自分の紹介が始まった。


紹介が終わったところで、先週、園長先生から受けた説明が繰り返される。


「どうだろう?この条件で良ければ、契約しよう。」


実働は、基本一週間に5時間。不測の事態で時間外勤務になる時は、別途至急手当あり。福祉厚生有り。保険有り。学業を含め各種サポート有り。ets……。



「宜しいんじゃないでしょうか。」

サクラコちゃんが答える。

アカネは思った。

正直、わたしにはよく分からないので、任せちゃおう。


「わたしも、問題ないと思うわ。」

モモちゃんだ。

「僕もそれでいいよ。」

「はい。」

アオイちゃんとアサギちゃんだ。

これで全員かな。

めでたし、めでたし。


「あら?」

皆でサインを済ますと、また身体に新しい力が入ってくるのを感じる。

悪い感じはしないし、何となく、胸の辺りが暖かい。


「ところで、〈D.E.M.A〉(ディーマ)って、どういう意味ですか?」

「説明しよう。〈Disaster Evildoers Mediate Aggregation〉の頭文字を繋げたのものだ。」

「サクラコちゃん、分かる?」

「えーと、人外災害調停集団?かしら。」

「だいたいそんなトコだ。」

「あやしいなぁ。」


「〈YAT RANGER〉(ヤットレンジャー)は?」

「モモちゃん!よくぞ聞いてくれました!YATは〈Youkai Accommodate Team〉だ!」


「サクラコちゃん?」

「えーと、妖怪適応チームの隊員?かしら。」

「だいたいそんなトコだ。」

「あやしいなぁ。」


「なんで妖怪だけ英語じゃないの?」

「それは、英語にしちゃうと、〈妖怪〉だろうと〈鬼〉だろうと〈悪魔〉だろうと、全て〈Demon〉ななっちゃうからだ!」

「違うのですの?」

「断じて違う!一括りにされてたまるか!」

よく分からないが、譲れないモノがあるらしい。


「さて、次は〈変身〉についてだが、これから先は別の担当者になる。行こう、案内するよ。」

また別の部屋に行くらしい。

みんなが席を立ったので、アカネも慌てて残ったお茶を飲み干し、後に続いた。


部屋を出て、右に行ったり左に行ったり、階段を下がったり。

「ねえ、分からないよ。」

「迷子になっちゃうよ。」

「何故こんなに複雑ですの?」

「僕もう疲れた。」

「はい。もしかして、意地悪?」


「いや、違うんだ!増築増築でやって来た為、通路が複雑になっちゃたんだ!」

「そうなんだ。」

アカネは納得した。


地下まである立体駐車場の増築って、どうなんだろう?


そして、重厚なドアの前に来た。


〈SECRET LABORATORY〉


「サクラコちゃん?」

「秘密の研究所かしら。」

「堂々と秘密って表示しちゃって、いいのかな?」

モモの疑問はもっともな所だ。


「茶太郎です。入って宜しいでしょうか?」

「開いてるわよ。」

「失礼します。」


扉を開けると、白衣を着た女性と、カジュアルな服装の女性がいた。


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