第11話 ☆ 伊香保の日記-5 ☆
長い一日だった。
とにかく、やることがたくさんあった。いそがしい一日だった。
ずっとこのときのために行動してきたと言っても過言ではない。
あいつも白骨先生も教えてくれなかった場所、あの人ですらあたしに教えてくれない場所へようやく赴くことができたのだ。心躍る。
当然、彼氏くんは連れて行く。でなければ意味がない。
しかしいざ着いてみると手がかりがほとんどなくて困った。
あいつから得たデータは肝心のところが抜けてるし。
あの人はここにきて未だに非協力的だし。
日帰りでは目的を達成できなかったので、もう一日滞在しなくてはいけなくなった。
彼氏くんをどう説得しようか悩んだけど、折良く降った雨にまぎれて時間稼ぎして、無理矢理お泊まりせざるを得ない状況にした。
泊まるところはあかちゃんの家が民宿をしていたのでちょうど良かった。
久しぶりに会う彼は少しだけ成長して大人っぽくなってた。きっと中学に上がる頃にはもっと格好良い男子になるだろう。
でも一発ひっぱたくのは忘れない。
彼氏くんがお風呂に行ってるときに、あの人が彼氏くんと二人だけで話をしたいと言ってきた。
何を考えているのか分からない。
けれど話したいと言うなら、そうさせてあげようと思う。引き替えに神社跡地のさらに奥へ行く方法だけ、教えてもらった。
彼氏くんの携帯に、あの人の電話番号を勝手に入れた。
あの人が嫌がっていた愛称で入れてやったのは意趣返しだ。ざまみろ。
彼氏くんとのお泊まりは初めてだったけど、なぜか彼は何もしてこなかった。
これから彼氏くんにすることを思えば、少しはいい思いをさせてあげたい。
お礼参りの数だけお願いをきいてあげるという約束をしていたので、それに乗じてこっちから迫ってみた。
最後までしても全然OKだったのに、彼氏くんったら胸だけなでて終わっちゃった。
これでもうお終いかと思うと、なんか心が痛む。
明日はおそらく雄に逢うことになるだろう。
そうしたらもう、彼氏くんとはお別れだ。
でも、それはそれで、やっぱりさびしい。切ない。
迷いも出てきている。それは認める。
こんな気持ちは何度か経験している。
やばい、彼氏くんのこと、好きになりかけているかも。
彼氏くんのほうは、どうだろう? あたしのこと、ちょっとは好きでいてくれるといいな。
けどやっぱり、あの人のことをあきらめきれない。
ごめんね、彼氏くん。
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