第4話 ☆ 伊香保の日記ー2 ☆

 あいつを一番始めに選んだのは、初めての彼氏だからという理由だけではない。

 早くに片付けるべき案件だったからだ。これがすんなり済めば、あとは比較的楽だ。

 ところが、部屋の中でとんでもないものを見つけてしまった。

 予想してしかるべきだった。しかし、どうしてこう、男ってのは考えなしなのか。

 残っていたのは砂だけだった。部屋中探してみたが、肝心のものは見つからなかった。

 気になるけど、とりあえずほかに収穫はあったから良しとしよう。あいつの集めていたデータはさすがと言うか、なかなかのもの。腹立だしいけど感心せざるを得ない。

 ただ、ちょっと引っかかる出来事があった。

 帰り際に、奇妙な女の人に声をかけられた。

 アパートに入るときに見かけたときから気にかかっていたが、あれはひょっとしてあたしの知っている人なのではないだろうか。

 まさかとは思う。一回しか会ったことないし、確信は持てない。第一、あそこにいるはずがない。

 あれ? でもあの人、箒で何か掃いてたような気がする。あれは砂ではなかったか?

 あれが、あいつの部屋にあった砂と同じものだとしたら……。

 いや、結論は急がないでおこう。まだ推測の段階なのだから。

 今は出来ることをするしかない。行動あるのみ、だ。


 ところで彼氏くんはと言うと、ほとんど役に立たなかった。分かってたけど(笑)。

 しかもまたなんか、正しそうなこと言ってたし。

 ま、次こそは役立ってもらおっかな。

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