KAC20241 タイトル:孤独な戦い 社員食堂編 お題『三分以内に……』
マサムネ
孤独な戦い 社員食堂編
私には、三分以内にやらなければならないことがあった。
いや、正確には、別にやらなくてもいいんだけど三分以内にやろうというのは私の目標であった。
ここは社員食堂。
いま、私は出来立てのから揚げ定食を目の前にしていた。
私は、これを三分で食べきってやるのだ。
何故かって?
速さとは、うまさだからだ。
(※完全なる個人の意見です)
口内がパンパンになる幸福感。
混ざり合い、口内調味される料理たちの躍動感。
そして大量に喉を通過していくときの快感。
それらが私を至高の時へのいざなってくれる。
ゆっくり食べていてはそれを味わえないのだ!
(※良い子は絶対マネしないでね)
隣では、近くのコンビニで買ってきたのか、カップ麺で昼食を済まそうとしている同僚がいる。
まあ、カップ麺もうまいけどね。たまに無性に食べたくなるよね。
その同僚は、今お湯を入れてきたところなのか、スマートホンのタイマーをセットしていた。
フフフッ、それが鳴るころには、私の食事は終わっているのだ!
こうしてはいられない、左手にご飯茶碗、右手に箸を持ち、いざ、勝負!
早速から揚げを口に運ぶ。
そこで大失態!
ここの社員食堂のから揚げは揚げたてアツアツなのだ!
いかん、上あごをやけどした。
(※マジで危険です。気を付けてね)
水を飲んで冷やす。
そしてとりあえず付け合わせの千切りキャベツを食べよう。
ああ、硬い、痛い。上あごが痛い!
助けてもらうために米を投入。
ふう、少し助かった。
何気に、ドレッシングのかかった千切りキャベツは、十分おかずだよな。
さて、しかし、三分での完食を目指すにはここで休んでいられない。
日本人は、昔から熱いものを熱いまま食す人種だ。
その証拠に、熱いお茶をすすって飲むだろう?
あれは空気を混ぜつつ、霧状に細かくして飲むことで、急激に冷まし、熱いままでも飲むことを可能とする高等技術なのだ!
(※個人的見解なのですが本当のところはどうなのでしょう)
それを飲み物ではなく、食べ物に応用した技術がこれだ!
秘技 ハフハフしながら食べる!
あ、あつい! それでも熱い! でもうまい、うん、何とかなる。でも衣で上あご痛い。
結局我慢か! まあいいや、食べれてる。
だんだん慣れてきたし、冷めても来た。
こうなればこちらのペース。
喉につまり掛けたら早めに味噌汁で流し込みながら、流れるような動きで食べる。
最初から、おかずの量と米の量から、おかずを何口で食べ、その一口に対して入れる米の量は計算済みだ。最初のやけど分はすでに調整し、いまは完全に予定通りの流れになっている。
つまり、
お前はもう、食べられている
なのだ。
水を飲み。すべての食物が胃に収まる感覚が、最後の余韻を私に与えてくれる。
上あごのやけどは確実に明日まで後引くけどね。
ピピピピッ、ピピピピッ。
タイマーが鳴り、ようやくカップ麺のふたをすべて開け、食べ始める同僚。
勝った。
私はすでに食べ終わっているぞ!
ははははっ! ははははっ!
は! あ、あれは!!
あのカップ麺の蓋。
よく見ると『ど〇兵衛』ではないか!!
ということは、三分ではない! 五分だ!
私は、負けたというのか。
いや、ご飯はおいしく食べればいいのだ。
うんうん。負け惜しみじゃないぞ。
私が言いたいのは、ちょうどよくおいしい食べる速度があるよねって話。
うん、よく噛むのは大事だぞ! よい子はしっかりかむのだ!
食べ物による窒息事故ってのはほんとにあるからな!
でも、好みの速度ってない?
KAC20241 タイトル:孤独な戦い 社員食堂編 お題『三分以内に……』 マサムネ @masamune1982318
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます