一日目終了
「これにて大会一日目の全ての試合が終了しました。激闘に次ぐ激闘に私、息をするのも忘れる程でした」
「素晴らしい初日でしたね。明日は準々決勝が行われるので皆さま楽しみにお待ちください」
マネッティアとサルビアが大会一日目終了の挨拶を終えた。会場にいた観客も満足そうに会場を後にした。誰もが生で観戦したプロレスに興奮してその昂まる思いを胸に残して歩いていく。
国王も大会の成功と試合に満足しており、明日、行われる準々決勝を心待ちにしていた。
バンカーとストロンガーは王都を観光していた。行く先々で声を掛けられてストロンガーは非常に気分が良かった。
「ご機嫌じゃねえか」
「当たり前だ、バンカー。やっぱりプロレスラーは目立ってなんぼよ」
「そうだな、だけどしっかりとファンには対応しろよ」
「分かってるって。俺の事が好きな奴らを無下にする訳ないだろ」
「それならいいが」
「完璧超人はファンサービスも完璧だからな」
ストロンガーは本当に調子に乗っていた。
カナードとジャイロは空から王都を眺めていた。王都の夜景は美しく、この光景が観れるのは有翼族の特権である。そんな風に夜景を堪能していると大通りに人集りが出来ているのをジャイロが見つけた。
「なんか人集りができてますね」
「降りてみるか」
二人が人集りに近付くとその中心にはノーゼンがいた。
「お!ノーゼンちゃん!」
カナードの呼び掛けにノーゼンが気付いた。その顔は先程までの穏やかな表情から一変して真剣な眼差しになった。
「カナードでしたか。どうしました?敵情視察ですか?」
「そんなんじゃねーよ。それに俺らは何度も試合をしてるからな。今更調査する事なんてないだろ」
「余裕ですね」
「そう見えるか?」
二人の間に火花が散る。周りの人間も二人の会話を真剣に見守っていた。
「まあ、どちらでもいいです。明日勝つのは私ですから」
ノーゼンの言葉に女性ファンから応援の声が飛ぶ。
その言葉に反応してカナードのファンが、
「言い返してやれ!」「負けるな!」とカナードも応戦しろと檄が飛ぶ。
「勝つのは俺さ」
カナードの言葉にファンは大いに盛り上がった。その盛り上がりを既に負けてしまったジャイロは見守る事しか出来なかった。
すると後ろからおじさんに肩を叩かれながら、「まあ、兄ちゃんもよく頑張った」と慰めの様な応援をしてもらった。
カズマ達は宿で夕食を食べていた。一応大会でのライバル同士なのでヘルウォーリアーズ以外の参加者は個室に分けられて食事をしている。
「全く人間とやった気がしないわい、力任せに叩きつけよって」
ベアルが先程の試合について愚痴をこぼしている。
「あれは腕ではなく足をとりにいくべきでは?」
「ボルガンの背筋を考えればそれでも足を上げて叩きつけたかもしれないな」
カズマとバフェットは試合の反省をしている。その中でエルロンだけが黙々と食事をしている。
話の中に入らないエルロンにカズマは気にかけた。
「どうしたエルロン」
「あ、いや、僕の次の相手がボルガンなんで……今日の試合を観てたら、ちょっと……」
「ちょっと?」
「不安で、ちゃんと試合になるかなって」
エルロンは暴力的強さのボルガンに恐れていた。そして大観衆の前でまともな試合になるのかが不安であった。
「なるようにしかならんわい!ワシもあれは試合だったのか分からん!」
「僕も次はバンカーと戦います。あの人も驚異的です。全く敵わないでしょう」
バフェットも次の相手は苦戦が必至の相手である。
「怖くないんですか?」
「怖くはありません。負けるのは嫌ですけど。ただそれもプロレスの醍醐味です」
「ならあの大男共を倒せる技を練習しよう」
カズマはそう言うと食べるスピードを上げた。皆の食事が終わると外に出て技を掛け合いながら、あーでも無いこーでも無いと語り合った。
「カズマさんは元の世界ではどうやって大きい身体の選手と戦っていたんですか?」
エルロンはちょっとした疑問を口にした。
「ん?俺か?そうだな、実はあんまり戦った事は無いんだ。身長や体重で階級分けされるからな」
「それ初耳です」
「あれ?そうだっけ?」
藪蛇であった。エルロンはまた不安になってしまった。
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