第四話

「おじさんが・・・サンシャインマン?」

「マスター、それくらいにしておけ。」正は怪人を全て倒し、顔には返り血が飛んでいた。

「今の俺はヒーローではない、その名はもう過去の名だ。」

「そうかい・・・ハハ」


「あれは・・・イサオ?」

一方で亮は帰り際、例の不良連中とイサオがどこかへ行くのを見かけた。

「(あいつら性懲りもなく・・・!)」

亮が追いかけると彼らはどこぞの空き地に集まり、その後は何人か怪人が集まってきた。

「(なんか喋ってる?よく聞こえない・・・)」

聞き耳を立てると、次第にはっきりと会話の内容が聞こえてきた。

「ねぇねぇ、最近ちょっと少なくなってるんじゃない?お金」

「すいませんイサオさん、俺たちなんとか頑張ってるんですけど・・・」

「言い訳は聞きたくねぇんだよ!」イサオは声を荒げて不良の一人を蹴り飛ばす。亮が知る温厚なイサオはそこにはいない。

「おい、ここで何してんだ?」

熱心に見入っていたため背後の仲間に気が付かなかった亮は、イサオの前に連れられた。

「あれ?亮じゃん、どしたの?」

「どしたのって・・・なんだよこの状況!?」

「あ~この人たち?前に一回絡んできてさ、ウザかったからちょ~っと脅かしてあげたら急にへこへこしちゃって、かわいそうだから遊んであげてるの」

「遊ぶって・・・これじゃいじめじゃないか!」

「いじめだなんて失礼だな~、あそうだ!」

そう言うとイサオは不良に振り向き、一人の足を思いっきり踏みつけた。不良の足からは骨が砕けるような音が鳴り、足を押さえてのたうち回った。

「こいつ、この前亮の足踏んだ奴だったよね、どう?」

「どう?って・・・」

「僕は君の代わりに仕返ししてあげたんだよぉ~感謝してよね」

「いや・・・感謝はできない。イサオのやってることは、よくないと思う」

するとイサオの顔から笑顔は消え、不良たちを見るのと同じ目を亮に向けるようになった。

「残念だよ、君とは仲良くなれると思ったんだけどさ」

「ちょうどコイツらにも飽きてきたころだし、やっちゃっていいよ」

号令とともに、周囲の怪人たちが襲い掛かってきた。


伸は正と一緒に、小屋まで歩いていた。

「伸、怪人にはなれるか?」

「いいや、まだ慣れない」

「早くなっておけ、そのほうが色々と都合がいい」

「都合がいいって?」

「今のお前は帝国と党の両方から狙われる存在だ。」

「きっといずれ俺一人では守り切れなくなる。」

「おじさんが初めて怪人になったのっていつ?」

「あれは俺がまだサンシャインマンだった頃のことだ」


【数年前】

「とどめだサンシャインマン!」

「ぐっ・・・フン!」

怪人の攻撃を間一髪でかわしたサンシャインマンは、すぐに体勢を立て直し必殺技を放つ。

「必殺!サンシャインフラーーーッシュ!!!!」

「ぐわあああ!!!!」

そのとき空が暗転し、禍々しい像が目の前に現れた。

「なんだお前は!?サンシャイン・・・」

「させぬ!」

必殺技は途中で止められてしまい、行き場を失ったエネルギーはサンシャインマンを巻き込み暴発した。

「我が名は創造神、全ての怪人の祖である」

「貴様が怪人を減らすのは我への反逆に等しい」

「ほう・・・?じゃあなんだ、神サマが天罰を下しに来たってわけか」

「その態度・・・我を恐れぬか」

「化け物の神なんて、恐るるに足らずだ!」

「ならば貴様自身が化け物となるがよい、フン!」

「何っ!ぐっ・・・あああああ!!」


「そうやって一通り苦しんだのち、気が付くと俺は怪人になっていた。」

「えっ!おじさんって怪人に負けたんじゃなかったの?」

「表向きではそうなっているがな、恐らく党のやつらの情報操作だろう」

「その後分かったことだが、初めて怪人になるには一定の感情の高ぶりが必要になる。」

「俺の場合は創造神への憎しみと怒りだ。」

「一度変身できればあとは自由に切り替えられる。最初が肝心だ」

「なんだか難しそう・・・」

「そうでもない、それにお前は・・・」

「僕がどうかしたの?」

「いや、この話はまた後にしよう」



亮たちをうめき声すら上げられなくなるまで暴行し、イサオたちは満足げに帰っていった。

「(イサオがあんな奴だったなんて・・・)」

「あなた、いい眼をしていますね」

いつの間にか亮のそばには一人の男が立っていた。

「怪人が憎いでしょう?信じていた友達に裏切られて・・・おお可哀そうに」

「・・・・・」

「その憎しみ、有効活用してみませんか?」

「どういう意味だ?」

「私、こういう者です」

男が差し出した名刺には『人間解放クラブ 山下』と書いてあった。

「気が向いたらこの名刺を持って本部にお越しください、私の側近として取り立てましょう」



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