第18話
「はぁ…はぁ……っ…見つけた…。」
お兄……。
「……配信は続けろ。」
とても静かで、冷たい声
「お兄…?怖い…よ?」
「ごめんな。これで、全部終わる。」
「死なないでよ」
「さて。まずは話そうか。僕のことを。本音を。僕は大切な人を亡くした。これは前にも話したね。その時、僕の心はギリギリ崩れなかった。その後、いつも憐れみの目を向けられるようになった。それが嫌で、明るく振る舞った。どんなに辛くても、どんなに嫌でも、笑っていたら、心配はされない。そうして自分を隠して…隠して………隠してっ!本当の自分を殺した。俺に本当の自分なんてものは存在しない。自分を見失って、心が、砕けて、崩れ去って。戻ってない。もう、崩れるものがないってのは楽だった。傷つかなかった。割れた心を、嘘で固めた。これが俺だ、僕だ、自分だ。嘘じゃない。みんなみんな、周りのことばかり気にしてる。周りばかり気にしすぎて、自分を後回しにしてる。色々と、背負い込んでしまう。そして、背負い込みきれなくなり、壊れる。気を付けろよ。取り返しがつかなくなる前に。言葉には、表せない気持ちだって、多いんだよ……それだけだ。」
空気が、重い。私は、ずっと、気付けなかった。
「……私も。」
後ろから、声がした。
「感情なんて無くなった。ご飯の味も、ほとんどしない。心が崩れたら、生きることも辛くなる。死にたいって……思うようになる。それでも、生きてる……。大切な、人が、いるから。」
風が吹いている。何も、言えない。川の水が、増えてきている。
「もう……いい。どうでも」
なんで。なんで、
「なんで!なんで皆、隠してたの!?どうして隠すの!?私は怖かったのに…死なないでよ!絶対に、もう……1人は嫌だからね……。この際だから私も全部言う。隠しても、笑っても、必ず嘘はバレるから。だから私は嘘をあまりつかないようにしてる。死にたいなんて思ったことない。うまく言葉が出ないなぁ。…本当の自分は、必ずあるから!2人共諦めないでよ…。生きる事も。2人がいなくなったら、私も!…私は、ずっと…考えてたから。」
……うまく言えなかった。でも、伝わるよね。
お兄、沙紀ちゃん、これからも……。
・・・
次の日。
「おはよ。」
「おはよ。」
いつもの日常に戻った。
あの後、コメント欄は荒れてなかったけど、ネットが荒れてた。これが人間なんだーとか、本当の自分とはーとか、自殺はこういうことが積み重なってーとか。色々と。心のケアとかの問題についての議論も繰り広げられてたなぁ。
「あ、ニュースにもなってる。」
こういう若者をどうするか、もっと悩みを打ち明けられる場を、親無しの子供について、……色々と話し合ってる感じだなぁ。
「…行ってきます。」
これからも。
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