第12話
――時は俺達が小学2年生の頃まで遡る――
「沙紀ー!」
「なーにー?」
「明日ー水族館に行くって!」
「え!本当!!」
「ほんとー!」
「やったー!楽しみ!」
皆で水族館に行くことになった。
久しぶりの遠出だった。
次の日、全員車に乗り、水族館に向かった。父さん2人が前に、母さん2人と花梨が後ろに、俺達は真ん中の椅子に座っていた。
無事に水族館に着き、俺達ははしゃいだ。ここでのことは、あまり覚えていない。
水族館から出て、駐車場に行き、車に向かった。
それは、あまりにも突然で……母さんに、後ろから押された。俺達は転んだ。すぐ後ろを、車がものすごいスピードで走り、直後、凄まじい音がした。見ると、車は燃えていた。
「お母さ……!」
母さん達は、血を流していた。
「お母さん!」
「お母さん!」
父さんの顔は青ざめていた。沙紀の父さんは電話していた。
「お母さん!」
俺達の声が駐車場に響く。
しばらくして、サイレンの音がたくさん聞こえた。耳に響く。花梨は父さんの背中に捕まっていたらしい。
母さんは、病院で死亡が確認された。
俺は死を受け入れられなかった。
帰り道、「お母さん達、帰って、くるよね」と言った。
沙紀も、「帰ってくるよね?」と、言った。
その後、すぐに前から車が走ってきて、正面衝突した。
父さんが、ハンドル操作を誤り、対向車線に飛び出してしまったらしい。
凄まじい衝撃が、全身を走った。気を失った。
気がつくと、車の外だった。サイレンが耳に響く。
車は前方が破損。後方はガラスが割れただけだった。
「…痛い」
顔に傷が出来ていた。割れたガラスが当たっていた。
「お父…さん……お父さんは!?」
父さんも、帰らぬ人となってしまっていた。2人とも――。
俺と、沙紀と、花梨は無事だった。警察に、保護された。
その後、しばらくしてから家に帰れた。今後生きていくのに必要な事は警察の人に教えてもらった。
家に、引き籠もった。ほとんど食事をしなかった。
鏡には、傷のついた顔が映る。
沙紀は、すぐに立ち直った。俺の家に来て食事を用意してくれた。花梨にも、教えていたらしい。
それが3ヶ月続いた。そして、引き籠もりを、やめた。
きっかけは、沙紀の言葉、
「ねぇ、翠人、いつまでそうしているつもりなの…?……お母さんとお父さんは、もう、帰ってきてくれないんだよ……ずっとそのままで、お父さんとお母さんが喜ぶと思ってるの…!もう……帰ってこないんだよ……もう…」
涙を、流していた。
「…わかってる……わかってる……けど!けど……俺が、殺したも同然なんだよ……だから……どうすればいいのか、わかんないんだよ……。」
「私も……わかんなかった……だから……だからその罪悪感を被って生きていくって決めたの!それが……生きていく代償なんだよ。だって…私達が…殺したんだから……。」
「生きていく…代償……」
それ以上は、何も言わなかった。言えなかった。
3日経って、立ち上がることができた。
俺達のせいで、父さんと母さんは死んだ。
お金は給付金と遺産しかなかった。
俺が小6の時、花梨がユーチューブをやりたいと言った。お金を稼ぐため。素顔とかをからだめだと言ったら、Vチューバーになると言った。機材は、家にあるものを使うとも。
それが、Saraの始まりだ。
花梨がユーチューブをやりたいと言ったのは、沙紀がVチューバーを始めたからだった。
沙紀も、お金を稼ぐために始めた。そして、歌で自分達と同じような人を救いたいから。という理由もあった。
俺も、花梨と一緒に始めようとしたが、機材が足りなかった。買うお金もなかった。心剣格で大会に出てしまったからだ。賞金は、沙紀のために使った。
俺も、お金を稼ぐためにVチューバーになったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます