第7話

ツブヤイターにコラボの知らせを載せたら一瞬で大量のいいねがきた。

学校でも話題に。ツブヤイターでも話題に。

Vチューバーを始めてたったの1週間程で3大Vチューバーとコラボした新米Vチューバー、月陰。注目を浴びすぎている。


「…準備は」

「大丈夫だよ。お兄。」

「兄妹だと言うことは」

「言う。」

「…了解。」

「始めて。」

配信開始。


「こんつきー。月陰だよ。」

「こんさらー。Saraの部屋にようこそー。」

「今日は僕の部屋だけどね。」

「ああ、ついクセで。」

|:こんー

|:コラボキタ━━(゚∀゚)━━!

|:何するんだろう?

「えーっと、まずはSaraから、」

「はいはーい。驚きの事実ー!なんと、私達は兄妹なんですよー!」

|:は?

|:ウソ…だろ!?

|:おいおい……

|:マジか

「嘘じゃないよ。ほら、お兄も、」

「嘘は言ってないよ?」

|:お兄…

|:YunaだけじゃなくSaraまで親しいなんて…

|:うわー

|:呪うなよ。

「はい、ということでー。雑談配信です〜」

「ということでの使い方間違ってない?」

「間違ってない!…と思う。」

「いつもの自信はドコ行ったー」

「棒読みやめろー!」

「…と、まぁこんな感じです。はい。」

|:コントだ

|:兄妹だ

|:マジだ

「雑談って言っても何話せばいいの?」

「いつも私の配信観てるよね…?」

「…」

「あ、目を逸らさないで!ホントのこと言って」

「…いつも観てます」

「あらやだ、嬉しいわー。じゃなくて、ってもうコントじゃん!」

「今さらかよ。」

|:今さらだよ

|:……(遠い目)

|:↑帰ってこーい。

|:これが現実さ…

「なんかコメ欄荒れてない?」

「…あー…」

「ほっとくか。」

「そうだね。ほっとこう。」

|:ほっとくのかい

|:おーい?

|:もうコメントしなければ良いんじゃね?

|:天才

|:寂しくなるし

|:盛り上げ要素の一つだよ!

|:ソーダソーダ…うめぇ〜

「…そういえばさ〜、月陰がお兄だと分かった時さ、」

「そういえばが過ぎる…」

「部屋に突撃しようと思ったんだけどさ」

「おい…」

「自分の部屋から出れなかった」

「おい…え?」

「ベットの温もりには勝てなかったよ…」

「…理解不能。スリープモードに移行します」

「移行しないで!?理解して!」

|うん?

|:結局どういうこと?

|:つまり、お兄が月陰だとわかり部屋に突撃しようとしたが布団の温もりに負け、部屋から出れなかったと言うことだろう。

|:わからん

|:まとめ乙

|:いつものことながらありがとねー。

「どうやって気づいたんだったっけ?」

「お兄が心剣格で…あ、」

「…サンキュ」

「お兄と同じ動きしてるな〜と思った時に、ビリっと来たんだよね」

|:なんのお礼なんだ?

|:あー…

|:セーフ

|:え?え?(困惑)

|:気にしない、気にしない〜。

「そうか〜。」

「それじゃあSaraのお悩み相談コーナーに入ろうと思いまーす。」

「唐突」

「えっとねぇ、」

「このコーナーでは視聴者からきたお悩みに答えるコーナーとなってます」

「お、この人のお悩みねぇ」

「ルーレットで決めてたのか。」

「…これ大丈夫かなぁ…」

「…… あー……」

「…めっちゃ重いんだけど…」

「どうしようか…」

「うん、きっと大丈夫!」

「通報とかしないでね」

「匿名4201さんからのお悩みで、『周囲が凄すぎます。こんな自分は生きてる価値なんてあるのでしょうか。自殺してしまおうかと考えてしまいます。どうすれば良いのでしょうか。』だって…ううー、重いよ〜。」

「Saraさん?」

「えっとねぇ…周囲が凄いってことは、自然と周りと自分を比べているんだね。それで、周りと比べたら自分は……って思考になってるんだと思う。」

「自分の得意なことが周りの人が皆できる、それが自分よりも上手。って事も…」

「お兄、何言ってるの?」

「気にしないで」

「えっとねぇ、だから、なるべく周りと比べないこと。自分は自分、他人は他人って割り切ること。それが大事だと思うな。」

「その割り切ることが難しい」

「それで、…自殺ねぇ…」

「こんな言葉がある。『自殺する人は天国に行きたいんじゃない。今ある地獄から、抜け出したいだけだ。』地獄から抜け出す方法は、自殺だけじゃないんだよ。別の方法を考えれば良い。多分ね。」

「きっと大丈夫。地獄を乗り越えた先には幸せが待っているから!」

「何言ってるのさ。地獄を乗り越えたって天国には行けない。地獄を抜け出した先はまだ真っ暗で、抜け出す方法によって道が分かれているんだ。どんな未来があるのかはわからない。1秒先は闇ってね。」

「お兄、何言ってるの?」

「…なんかすみません」

「……よく分からないけど、次にいこうか、ね。」

「ああ……」


・・・


それから1時間半が過ぎた。

「もうそろそろ終わろうか…」

「疲れた。お兄、膝枕。」

「足痺れるから却下。」

「それじゃあ、おつさらー」

「おつかげー」

|:おつー

配信終了


…疲れた。今日はもう寝ようかな。

「お兄、ありがとね」

「なんだよ、改まって。」

「別に。」

「おやすみ。」

「おやすみ。」

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