第3話

ツブヤイターに今日の動画は無いことを知らせておく。えっと、今の時間は…ヤバい、遅れる。


・・・


「遅い。」

「ごめん。」

「遅れたら翠斗のせいだよ。」

「はいはい。さっさと行こうか。沙紀。」

「うん。」

――沙紀――俺の幼馴染。陰キャ。教室ぼっち。

「ぁ―っ!」

「大丈夫だから。」

人が来ると俺にくっついてくる。

「まだ人間嫌いか… 」

「怖いの。」

「ん。」

昔、色々とあり、こうなった。

「ほら。」

手を差し出す。

「ありがと、でも、もう少し、こうしてたい。」

「お好きにどーぞ。」

1週間に1度、こうやって一緒にいる日を作っている。壊れないように……。

「なぁ…そろそろ離れてくれない?学校が近いし。」

「なんで」

「勘違いされるだろ」

もう手遅れだろうけど

「別に、翠斗ならそういうふうに思われても」

「注目を浴びるけど」

「やだ。」

「昼休み、いつもの場所でな。」

「ん。」



教室に入る。

「おはよう」

「おはよう」

「翠斗、昨日の配信見た?」

「配信?」

とぼけてみる。

「昨日は火龍もSaraもYunaも配信してないけど?」

「え、知らないの?月陰君のこと。」

「そんなに有名なの?」

「3大Vチューバーに認知されてる。」

「火龍とコラボする。」

「最近始めた新米Vチューバー。」

「そ…そうなんだ。」

認知されすぎたかな…。身バレは特に気をつけないと。


昼休み。

「今日は」

「パス」

「羨ましいなー!」

「なんで?」

「あの沙紀さんだろ?美女だって噂の沙紀さんだろ?羨ましいんだよ〜。」

「ついてくるなよ。」

「分かってるって」


俺はいつもの場所である屋上――の手前に来た。

扉を叩く。

「沙紀」

「合言葉は」

「そんなものあったっけ?」

「よろしい」

扉が開く。

変わった合言葉だと自分でも思う。

沙紀の隣に座る。

「ひざまくら」

「弁当が食べづらくなるけど」

「ちょっとだけ。」

「分かった。」

距離が近い。いつものこと。

「ねぇ、翠斗。」

「ん?」

「…いや…えっと……なんでもない…まだ言わない。」

「そっか。」

昔は、明るかった。俺を照らしてくれた。真っ暗闇の中にいた俺を。だけど、変わった。変わってしまった。変わる前に戻りたいと思うけど…いや…まだいいや。

弁当を食べ終え、教室に戻る。


放課後は心剣格の練習をした。




――心剣格――

世界大会も行われる世界的格闘ゲーム。火龍が活動している。火龍は世界大会第3位。トーナメント制だったため、その年の優勝者であるプレイヤー――0――に負け、3位という結果となった。火龍がVチューバーを始めた理由がこれだ。

1対1で闘う。基本2Dだが、3Dで闘うことも可能。

ステータスは3種類。スピード、アタック、ディフェンス

キャラクターは、スピード型、アタック型、ディフェンス型、バランス型に分かれている。

スピード型…ヒット・アンド・アウェイが得意。ディフェンスが低い。使用人口1位

アタック型…懐に潜り込み強力な一撃を与える。スピードが低い。火龍が使うキャラクター。使用人口2位

ディフェンス型…手数で勝負する。並の攻撃では刃が立たない。アタックが低い。使用人口3位

バランス型…全てのステータスが一致している。使用人口が2番目に少ない4位。

ここまで見れば普通の格ゲーだが、このゲームには使用人口圧倒的最下位の剣士がいる。弱いのだ。剣を折られて終了する事が多い。最弱キャラクターだと言われていた。前回の世界大会までは。

謎のプレイヤー、0。彼は剣士を使っていた。

剣士はバランス型だが、コマンドを打つことでどんな型にもなれる。そして、隠しコマンドが多く、未だにそれを見つけたプレイヤーがいなかった。さらに、隠しコマンドを見つけたとしても扱えない。そんなキャラだ。

プレイヤー0、彼はその隠しコマンドを見つけ、実戦で使うことができる、性別以外謎に包まれているプレイヤー。

火龍、世界大会3位の実力者。Vチューバー。彼の目標は、プレイヤー0に勝つこと。



月陰は、火龍とコラボするのだ。心剣格で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る