第3話 俺は時をコンマ数秒単位で数えられるし、いつでも体感時間を変えられるけど。お前は トリコ?

 まあ何はともあれ日時は三月十五日の午後四時 四十五分十六秒税務署閉庁十五分前。だが実際に受付まで呼ばれる時間を鑑みると、実際そんなに時間はない。経験上、この税務署で受付まで呼ばれるにはおおよそ十二分ほどかかる。つまり二分四十四秒以内にこのバッファローの群れを超えれば俺の勝ち。それ以上が経てば何があっても俺の負け……

 というのも、先程も言ったように自分はデブで運動音痴うんちのメンタル雑魚/\ざこざこ野郎だ。歩いた後に足が痛くなるのなぞ初期装備仕様のうちだし、息切れ気力切れが通常運転デフォルトだ。こんな風に外に出て家に帰ったら、そこから一週間は外に出たくないし、出れないだろう。少なくとも土日の間は寝込んでるし、九日間を以て体力を取り戻すという雑魚神様なのである。で、そこから更に外出に必要な精神力を、また九日かけて取り戻し、漸く再出発可能になる。つまり次に来れるのは最低でも来月二日以降だ。

 そうなると、どうなるか?稼いだ収入にもよるが、延滞税がかかるのだ。こんな気力体力だから外出するのも最低限の時間的余裕だけもって、時間ギリギリまで粘って出不精する。それが俺、デブの出不精、デブ/\精ってか?ははは。


 つまりギリギリになったとはいえ、それでも時間的な余裕はあったつもりだが、それなのに全てはバッファローのせいでご破産である。実際、こうやって考えてる時間も惜しいくらいだが、それでも俺には特技がある。

 それは体感時間の操作および、正確な時刻の把握である。やろうと思えば擬似的に時だって止めれるザ・ワールドできるかもしれない。まず疲れて寝込むだろうし、やらないけど……

 これが異常な事に気付いたのは、小学生の頃だった。俺の天敵たる体力測定だが、ストップウォッチで遊ぶやつがいて、それに混じってキッカリ十秒を測る。これに俺は立て続けにピッタリ十秒を出し続け、なんならジャスト一分ですら五回は見せつけてやった。俺からすれば、時計の音をカッチコッチと脳内再生すれば余裕で、あとはタイミングの話でしかなかったが。他のやつに言っても全然わからんようだった。なんなら、集中すれば視界にある時計を映し出す視界にコピペするなんてのも出来たし、それを消さずにしておけば狂う事も全然なかった。頑張って朝から出しておけば、その日の時間はいつでも確認できる。うっかり間違えて消しても、また時計を見て再出現させれば良いだけだ……が、これは異常だったらしい。これにより小学生の俺は、ぽっちゃりデブから時計デブとして認知される事になる。


 そんなもんがあれば運動余裕だろうって?それは素人の考えだ。体力雑魚は、まず筋肉の量や質からして違う。脂肪を付けるだけの内臓機能はあっても筋繊維は常人より遥かに少ないのだ。自分の場合どれだけ鍛えても中坊レベル中学生平均以下にしかならない。

 つまり燃料タンクは100ℓな無駄にあるのに、エンジンは原付レベル。そんな車があれば、自転車より遅いのは確定的に明らか。マジで雑魚!!そしてどれだけ体感時間を遅くしようとも、ドッジボール大会では俺が避けるより、当てる側のが早いのだ。

 漫画とかで言うなら、未来視できるキャラが、未来視が間に合わないくらい早く攻撃されて負けるのと同じだ。いや比べるのも失礼なくらい、俺のが弱いのだが。それくらい、俺の体力と脳力のうちからには差がありすぎる。全てがアンバランスなのだ。


 だが、そんな事を嘆いていても仕方ない。残り二分四十秒。どうやってこのバッファローを避ければ良い?バッファローは全てを破壊しながら進んでいく。

 いや実際には奴らも道を選んでいて、壊せそうな民家とか柵は破壊して進むものの、石垣なんかは絶妙に避けてたりする。つまり本当の意味で全てを破壊できるわけじゃない。ついでに脇に草があればんでいるやつもいる。所詮はバッファローなのだ。

 だが丸腰の人間ごときが到底敵う存在ではない。避けて進むには多すぎる。回り道をすれば確実に閉庁時間。兎角、この流れバッファローは避け難い。果たしてどうしたものか。


 こんな事なら税理士を雇ってでも何とかするべきだったが、なまじ体感時間を引き伸ばして考えれる分、どうしても分からん部分以外は税務署の人に聞いてやっていたのだ。前回はそれでなんとかなった。

 生き急ぐ現代人に合わせた突発的な行動だと君は思うだろうか。しかし、深く考えこむより衝動こそが大切だ。そう、岡本太郎も言っていた。つまり、グダグダ考えてても仕方ない。こうなれば、全てを破壊しながら進んでいくバッファローの群れだろうと人間のが上なんだ!おれは おれは……!!!全てを破壊しながら転がり進むデブになる!!!創作は……いや現実だろうと…………世界は爆発だッッッ!!!


 「うおおおおおおおおおおおおおおおゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおゴロゴロゴロゴロゴロゴロごろごろゴロゴロゴロッゴロごろごろっごろごろごろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおゴロゴロゴロゴロゴロゴロごろごろねこごろごろゴロゴロごろごろごろごろおおおおおおおおおおぉおォおぉォォッッッゴロゴロごろごろゴロゴロゴロごろゴロゴロごろごろゴロごろごろりごろぞろりごろりごろゴロゴロリァ!!!!!!!!!!!

 」


 ――残り時間、約二分

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