5.誤解
荒れ果てたとある列島の大地に、その発掘隊は降り立った。隊長率いる総勢20名を超えるその考古学チームは、かつて豊かな緑が存在した時代にこの列島で反映した国家の遺跡を調査すべくその国の首都があったとされる地域の発掘調査をするべく派遣されたチームだった。
海抜20メートルと少しの茶色い大地は当時の地面に砂礫が10メートルほど堆積してできた土地で、高層建築物の瓦礫がところどころ見え岩石砂漠の様相を呈している。遠くに見える傾いた二本の尖塔は千年前にたしかにここに超高度な文明が築かれていたことを物語っている。
チームが足を踏み入れたのはついこの前放射能汚染による立入禁止が解除された場所だ。一行は念の為防護服を身にまとう。
千年前ー第三次、及び第四次世界大戦によって世界中にばらまかれた大量破壊兵器の中には千年経っても放射能が残り続けるものもある。この大戦の末期、「人類終末宣言」が出され当時の文明と呼べるものはあらかた消え去った。習慣、記録、その文明のあらゆるものが今となっては未解明だ。
半日の調査の後、調査チームはかなり保存状態のいい住居跡を発見した。最初に発見した若い隊員は興奮でヘルメットのシールドを曇らせながら報告した。午後から住居跡の大規模な発掘が行われ、複数のほぼ完璧な保存状態の本が見つかった。
「すごいぞ…!厳重に保管されていた一部の公式記録以外の本が見つかるのは初めてだ…!ここにはきっと民間人の生活を解き明かす鍵になるだろう!」
隊長はさっそく厳重にそれらを梱包し、大昔の文字の専門家がいる博物館へと送った。
数週間の解読の末、その資料に関する情報は論文にまとめられ、「考古学を覆す大発見」として世に広まった。
「これらの資料の内容はどれも似通っていたり、一貫した物語であったりしました。」記者会見で研究者が話す。
「この資料は当時の宗教観を表しているものだろうと推測されます。どの資料にも『転生』『ハーレム』『異世界』といった長文が表紙に書かれており、その内容はある人物が文明レベルの低い異世界に転生し、当時でいう『現代文明』の力を用いて異世界で高い社会的地位を得るというものでした。」
記者たちはペンを走らせ、研究者が口を開くタイミングに合わせフラッシュを浴びせる。
「またこれらの本は大量生産されていた証拠がありました。このことから、当時の社会には異世界転生を理想とする宗教が普及しており、これらの資料は聖典の一部だったのかもしれないと考えられます。」
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