4.出禁
陽介が入っているサークルは入ったときからまともに活動しておらず、暇な大学生がダラダラするだけの空間となっていた。陽介はそれを承知でこの空間を欲してサークルに入り、副部長の平田、留年生の鈴木、そしてたまに来る同期生の緒方と雑に時を過ごす日々を送っていた。
あるとき、たまたま講義が同じで仲良くなった山口が「部室」と呼ばれている空き部屋を訪れたことがあった。陽介が忘れ物を取りに来るのについてきたのだ。突然の女子の来訪に驚いたサークルメンバーの間では、その後一週間、山口が話題によくあがった。
またあるときは同じ男子校に通っていた西田が遊びに来た。その時は特に何もなかったが、西田についてメンバーに聞かれたときは、なぜか長々と話したのを覚えている。陽気で人当たりのいい西田はその後も何度か「部室」を訪れた。
それから半年後、もう一度山口が来た。このころ陽介と山口は既に友人と言えるほどに仲良くなっていた。以前と違い敬語を使わず会話する陽介たちを見て、メンバーにあれやこれやと関係を探られた。
それから週が開けた4日後、陽介は突如として出禁を言い渡された。
「サークルの雰囲気を壊さないでくれ。」
理由をきいた陽介に、最後に平田から聞こえた言葉だった。それっきり口をきこうともせず、陽介は「部室」を出ていくほかなかった。
一晩悩み、弁明のため翌朝「部室」を訪れるとそこはただの空き部屋に戻っていた。
その日の昼、サークルがなくなったらしい、と口にしたのは西田だった。山口にもこのことを話すと、山口はすでにそれを知っていた。
梅雨明けの近い7月の半ばごろのことだった。
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