3.傘ループ

梅雨入り間際の雨が本降りになってきて嫌気が差したので、傘をたたみ駅前の喫茶店でやり過ごすことにした。

カプチーノをすすりながら少しだけ仕事をして、それも嫌になって一章読み終えた頃、雨脚が弱まったので本をしまい店を出た。扉の前の傘立てを見ると自分の白い持ち手のビニール傘がなくなっていた。

湿気の多い息が漏れた。

やれやれ、今日はツイてない。しばらく傘立てを眺めたあと、立ててあった二本のうちよりきれいな、黒い持ち手な方のビニール傘を引き抜いて、親指でネームバンドのプラスチックのボタンを外した。

畳まれていた生地は濡れて互いにはりつき、すぐには開かなかった。

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