36、おしおき☆アラカルト

「いや、お主らが悪ノリで言いそうだったから先手を打った」

 龍星のツッコミをどこ吹く風といった感じで受け流すモエギに向けて、

「そこは別に先手を打たなくてもいいのでは」

 陽樹がさらなるツッコミを入れたが、

「まあ、そこら辺はわしのほうの悪ノリというやつじゃ。それはさておき、リュウセイよ、ちょっと写真の出来映できばえを見せておくれ」

 こちらも馬耳東風ばじとうふうという感じに軽くそらされる。


 龍星がモエギにスマホを手渡すと、

「むふふー」

 いかにもご満悦といった感じで、モエギがスマホの画面をしみじみと眺める。

「いやもう、なんていうかな、実に感慨深い。自画自賛じがじさんと言われようと見惚れてしまうな。しかし、わしが見目麗しいのは今に始まったことではないが、リュウセイとハルキも負けず劣らず端正な顔立ちよのぅ。歌って踊れる神主系アイドルユニットとしてプロデュースすれば、グッズや配信であわよくば一攫千金いっかくせんきん、わしの神社にも信者が増えてウハウハというのも夢ではないかもしれんな」

「妙な皮算用を始めるな」

「アイドルになればモテて、それこそ女の子に『きゃあ、やだぁ、もうステキ!』と言われるかもしれんぞ」

「さすがにアイドル路線はナシかなぁ。僕としては歌はちょっと……」

「そうか。まあ無理強むりじいはせん。しかし気が変わったらいつでも申し出るがよい。当神社はやる気のある若者を随時募集しておるからの」 


 だいぶ機嫌を直したモエギはスマホを龍星へ返すと、

「それでじゃ、リュウセイにハルキよ。とりあえずはこの画面を待ち受けにしてそれとなく他人に見せびらかすがよい。そうして『ここに映ってる美人のお姉さんたちはだれ?』などと聞かれたらしめたものじゃ。『萌木神社で知り合った。あの神社、すごく御利益がある』と喧伝して、神社に人が大勢来るように仕向けよ」

「半分詐欺だろ、それ」

「僕らが神主みたいな姿で映ってるから神社のステマになるね。でもどちらかというとステルスマーケティングというより、僕らには一銭も入ってこない捨て身のマーケティングを略してステマって感じ」


「なかなかに上手いこと言うではないか。まあそれはよしとして、わしとリュウセイ、ハルキとシズカが並んでいるところを切り取ってハートマークで囲んだりなどと加工したら、なんかよい感じになるじゃろ。『神社でデートなう』とかにも使ってもよいぞ」

「だから、この格好で映ってたらそういう小細工はバレるだろ」

「小細工いうな」

「小細工だろうが」


「本当に融通の利かない神司どのじゃなあ」

 愚痴っぽくというよりもどこかおどけたような口調でモエギが言うと、

「俺が目指す理想の男子は曲がったことをしないんですぅ」

 負けじと、龍星も砕けた口調で返す。


 数秒の沈黙ののち、

「フフ、フフフ……」

 と、ふたりとも打ち解けたように微笑みを浮かべた。 


 場の雰囲気がくだけたものになる中、

「さぁて。では改めて……今度こそシズカにわしの神力を分け与えるとするか」

 と宣言したモエギはシズカの前に立ち、彼女をしゃがませた。


 真面目な顔つきになったモエギは深呼吸をすると、今一度、龍星と陽樹のほうへと向き直り、

「最終確認じゃが、本当によいのか? このままじゃと、わしは童女姿になってしまうが、ふたりとも後悔せぬか? 心残りとかはありはせぬか?」

「……全然改まってないな」

「ここまで来て、決心がゆらぎすぎでしょ」

「神力を集めていけば、またその姿に戻れるんだから今は宣言どおりにシズカさんに神力を与えるべきだろ」


「手厳しいやつらじゃ。もう少しわしに対して敬意を払ってもよいものを……まったく誰じゃ、こやつらを神司に選んだのは……」

 言葉だけなら不平不満といった感じだが、彼女の口調はここまでのやり取りを楽しんでいるかのように弾んでいた。


 そして、モエギはひざまづくように身をかがめたシズカの頭上に手をかざす。


「服の着替えみたいに指を鳴らすだけじゃダメなのか」

「神使とはいえ、シズカの属性は妖怪じゃからな、流し込む神力の加減を間違えたらダメージになってしまう。であるからして、繊細せんさい緻密ちみつな調整、チューニングが必要になる。こればかりは大雑把おおざっぱに済ませるワケにもいかぬから、神経を使うというか、楽な作業ではないな」


「なんか集中が必要なら黙って見てたほうがいいかな」

「その程度ではさじ加減を誤ることはないが、まあ一種のショーとでも思って気楽な感じで見ておれ。注意しておく点があるとすれば、お主らはその位置から前へと出るでないぞ。神力の受け渡しとなるゆえ、不用意にこちらに近づくとお主らに貸し与えた神力も吸い寄せてしまう」

 振り向いたモエギが龍星と陽樹の立っている足下を指さす。


「でも僕らの神力を使えば、ヒメ様も楽になるというか、小さくならずにすむんじゃ?」

「ありがたい申し出じゃが、今現状お主らの神力はシズカとの戦いで受けたダメージの回復に使われておるからな、それを取り上げるわけにはいかぬわけよ。まあ痛みにのたうちまわるお主らを見るのも一興ではあるのじゃが」

 言葉の最後にあわせるように、見ている者の背筋がゾクゾクするようなサディスティックな微笑を一瞬だけ浮かべると、モエギはシズカへと向き直った。

 

 目を閉じ、呼吸を整えたモエギのかざした手に、あたたかみのある淡い光がともっていく。

 彼女の袖から式神の蝶が数匹舞い踊るように出てくると、モエギとシズカの周囲を光のらせんを描くようにして飛び回った。

 徐々に蝶の放つ光は強さを増していき、飛ぶ速度も速さを増していく。

 やがて光は目を覆いたくなるほどの眩しさとなって、速度も目で追えぬほどのスピードへと変わった。

 らせんの軌跡は絡み合う線と言うよりも、もはや面に近くなり、光の球をつくりだしてふたりの姿を覆い隠す。


 そして光は唐突に弾けるようにして消えた。

 蝶たちの姿は見えなくなり、光が消えた地点にはモエギとシズカの姿があった。


 シズカの見た目にはなんら変化がないように見える。

 しかし神司となっている龍星と陽樹には彼女の周囲に薄い膜状にも似たオーラとなっている神力が感じ取れた。

 それだけでなく、妖力と神力という相反する力がほどよく調和することで、巫女姿や妖怪の姿をしていたときよりも妖しさと神秘さが増し、妖女とも聖女とも言いがたいミステリアスな雰囲気をも感じさせた。 

 

 一方のモエギは、こちらは変化が一目瞭然で、龍星と陽樹のふたりにとって見覚えがあるちびヒメの姿へと戻っていた。

 着ていた浴衣も体に合わせたサイズとなっており、それがいっそう天女姿との落差を感じさせる。

 実際のところ、ふたりが最初に出会ったときよりも大人びた感じも身にまとう神力もわずかながら増しているのだが、あからさまに元気がなく、別人のように感じられた。


「大丈夫か?」

 龍星が見かねて声をかけると、

「うう……はかない栄華じゃった。夏の夜にありながら、ただ春の夜の夢のごとし」

 意気消沈している態度を隠そうともせずに、モエギがぼやく。 

「なげくな、ぼやくな。ちゃんと元の姿に戻れるように協力してやるから」

 龍星が元気づけるかのように言う。

「そうは言うがの、元の木阿弥もくあみ、ドーピングしたとはいえ、せっかく上がったレベルがドレインされてレベル1に逆戻りじゃぞ」

「ゲームっぽく例えられると辛さが分かるね」

 陽樹が同情するように言った。


「俺にはあまりピンとこない」

「リュウセイはゲームをせんのか」

「最近は手をつけるようになったけどな。ゲームに関してはほぼ右も左も分からない初心者だ」

「なら、今度わしやシズカとゲームで遊ぶとしようぞ。アナログでもデジタルでもわしらはどちらでもよいが、手っ取り早くデジタルでひと狩りとか行ってみるか。そうそう、ゲームにおいてシズカはなかなかの手練れじゃぞ。特にネトゲはお手の物といった感じじゃ、クモだけに」

 少し立ち直った様子で、はつらつとした口調で言うモエギに、

「あ、あの……本当にいいんでありんすか?」 

 シズカがおずおずとした態度で尋ねる。


「くどい。わしが許すと言ったのじゃからそれでよい。それでも礼が言い足りぬのなら、わしよりもそこに立つお人よしな二人組に申すがよい」

 モエギは龍星と陽樹を目線で示す。

 表面上の態度こそ素っ気ないものだったが、言葉や動作の端々にはだいぶ軟化したものを感じ取れた。

 

 シズカが恐縮した態度で龍星と陽樹に深々と頭を下げる。

「こなたのご恩は忘れんせん。ありがとうございんす」

 彼女の言葉に、ふたりの神司は少し照れたような表情を浮かべて、

「元はと言えば、俺らというか俺のやらかしから始まったことだしな」

「結果論だけど僕ら以外が巻き込まれてたら、もっとまずい展開になってただろうしね」


 そんな会話をしている三人を見ながら、

「まったくだまされただけではなく、こっぴどく痛めつけられているというのに甘っちょろい連中じゃのう。さてシズカの今後はよいとしても、やはり今宵のやらかしについてはそれ相応の罰は与えねばな。ふむ、お仕置きせっかんフルコースというか、おしおき☆アラカルトという感じの罰を思いついたぞ、これは腕が鳴るのぅ」

 モエギは悪戯イタズラを思いついた子どものように笑みを浮かべる。


 その表情からただならぬものを感じ取った龍星が、

「おい待て。お仕置きって、一体何をする気だ?」


「さっきも言ったように命までは取りはせぬ。だがのう、しでかしたことに対して罰がなければ、いくらわしがフレンドリーな甘やかし系女神だとしても示しがつかぬ。そこでじゃ、とりあえずは時代劇のワンシーンよろしく帯に手をかけ独楽こまのようにまわして邪魔な浴衣をひっぺがしたのちに、わしの力を駆使して、ナースにチャイナドレスにバニーガール、婦警さんやメイド服にセーラー服、新旧スクール水着に今はなきブルマー+体操服などと、われらの前でありとあらゆる衣装によるほんのりお色気風味をプラスしたワンマン・コスプレ・ファッションショーを披露してもらおうというだけじゃ」


 モエギは立て板に水のごとく一気に言ってのけると、くすぐりにいくように手を動かしながら、腰を落としぎみにした体勢となり、にやりとした表情を浮かべたまま、じりじりとシズカのほうへと迫っていく。


「な、なにもそんなことまでしなくても」

 モエギを止めようとする陽樹に、

「おしおきでももう少しマシな内容を選ぶべきだろ」

 龍星も同調する。

 

 ふたりの言葉に、モエギは足を止めて振り返ると、これまでにないほど呆れかえった口調で、

「はあ? お主らは何を言っておるのだ? お主らも健全なる男子ならば心の中で思い描いてみよ! このおっとりグラマーが羞恥しゅうちに頬を染め、お主らの飢えたケモノのごときよこしまな視線からどうにかして逃れようと身悶みもだえするさまを! 至福しふく眼福がんぷくと小躍りするほどに楽しいぞ~、うれしいぞ~。そうじゃ、リュウセイとハルキをアイドルにせずとも、ここに逸材がおるではないか……うむ、そこらに横たわっている女子らと組み合わせて昨今のアイドルグループのようなユニットをつくるもよし、昭和後期のアイドルのようにフリフリのミニスカを試してみるのも悪くはないな。フフフ、コスプレショーのレパートリーにさっそく加えようぞ」

 少し前までのクールビューティーさはどこへやらという感じで楽しげに語り、ふたたびシズカとの距離を詰めていくモエギ。

 龍星は彼女の後ろにそっと回ると、ハリセンへと形を変えた炎天でその頭を軽くはたいた。


 パシーンッ。

 静寂を取り戻していた山林に心地よいまでの快打音が響き渡り、木々の葉がくすくすと笑い声を立てるかのようにざわめく。


「あたたっ!」

 モエギは頭を押さえて振り返ると、

「お、お主は……力の大半を失っているとはいえ、神仙天女に対してその仕打ちか! いくらわしがプリティーでチャーミングでそのうえフレンドリーな女神で、お主はその神司であるということを差っ引いても、無礼であろう! 不敬であろう! 不遜であろう!」

 うるうると瞳をにじませ、龍星へと抗議のまなざしを向ける。


「なら、そのプリティーでチャーミングでそのうえフレンドリーな女神に仕える神司として言わせてもらうが、お前さんの発想はどうにもフレンドリーやチャーミングという単語からかけ離れすぎて、もうどちらかといえばエロオヤジの領域ゾーンに入ってる。そういうセクハラめいたことをしたがる神様のいる神社だと知られたら、ただでさえ少ないと言ってた参拝客がよけいに減るだろうが。だいたいの話、誰が飢えた獣だ。俺の理想としている男子はそういうことをしないと重ね重ね伝えてあるんだが」


 正鵠せいこくを射た指摘に、

「うう……なりたてホヤホヤの神司のくせに正論を吐きおってからに」

 モエギはぐうの音も出ずに、恨みがましい目で龍星をにらむ。


「なんかだんだん取り扱い方法というかコツが分かってきたような気がする」

「神をモノのように言うな、というか雑に扱うな。しかしこうなってしまうと、残念ながら楽しいおしおきタイムは別のものを考えなくてはならん……無念じゃ」

「残念でも無念でもないよ」

「本当か~? お主は理想の男子像がどうのこうのと言ってはおるが、裏を返せば、そこに到達できておらぬゆえに自分へと言い聞かせるための方便ではないのか? 欲望に従順なのは悪いことばかりではないぞ、今からでも遅くはない、お着替えおしおき☆アラカルトを見てみたいと言ってもバチは当たらんというか、そもそもわしが当てんし、なんならリクエストも受け付けるぞ」

「……いや、今の言葉、そのまま自分に返ってくるとは考えないのか」

「なんじゃと?」

「親しみやすいフレンドリーな女神が理想だと言ってただろ。つまり裏を返せば、そこに到達できてないということになるよな」

 龍星の指摘に、

「ぐぬぬ……痛いところを突きおって……あーそうですとも! フレンドリーな女神がきちんと実践できておれば、こんなちびちびした姿になんぞなってはおらんわっ!! あーもう、前言撤回じゃ。お主の可愛げのないところは星右衛門そっくりじゃ、いや星右衛門よりたちが悪い。天久愛流の使い手は皆こういうふうに育つのか、じゃとしたら……ん? どうした、シズカ。摩訶不思議まかふしぎなものを見るような面持ちをしてからに」


「いえ……姫様がこんなふうに人と打ち解けているのをあまり見たことがなかったので」

 そんな感想を口にしたシズカに続いて、

「そう言われてみると、リュウちゃんが初対面の女の子とここまで会話が弾むのは珍しいかも。端から見てるとなんだか、仲の良いお兄ちゃんと妹みたいに見えるし」

 陽樹の感想に、シズカは得心が行ったようにうなずいてみせる。


「こんな妹がいたら毎日がてんやわんやだよ」

 龍星がややうんざりした感じでモエギのことを指し示すと、

「こんなん言うな。だいたいハルキにしても、リュウセイがお兄ちゃん、わしが妹とはどういう了見じゃ。兄弟けいてい姉妹しまいで例えるのなら、わしがお姉ちゃんでリュウセイが弟じゃろうが」

 モエギは彼の指を軽く払いのけるようにはたきながらも、龍星とは正反対にどこか明るい表情を浮かべながら答えた。


「なんでうれしそうなんだ」

「仲良く見られてるということはフレンドリーであることには成功しているわけじゃからな。つまりは理想像へ近づいてることになるから、わしのほうがリュウセイより一歩、いや一歩と言わず二歩か三歩はリードしていることになるじゃろ」

「競争なのか、これ」

「そのほうが張り合いが出るじゃろ。フフフ……早いところ信仰も元の姿も取り戻し、甘やかし系お姉さんとなって、リュウセイを骨抜きのメロメロのわし依存症になるまで甘やかしてやるのじゃ、今からでも心しておけ」

「いや、だからフレンドリーなのはいいんだけど、そういう男に対して警戒心のない無防備っぽい接し方はやめろ。あと『わし依存症』とかメチャクチャ怖いんだけど」


「わし依存症のなにが悪い」

「神様依存症と言い換えればなにが悪いか分かるだろ」

「大丈夫じゃって、宗教とかじゃないから」

「全然大丈夫に聞こえないし、神様依存は結局のところ宗教だろうが。というか、今の流れだと俺の勝利条件がまったく分からない」

「ぶっちゃけて言うとじゃな、どちらが勝とうが負けようが、わしがリュウセイを甘やかすという規定ルートは実のところ変わらないのじゃ。リュウセイがなんやかんやで勝ったとしたら『頑張ったのう、えらいえらい』と褒めちぎって甘やかすし、わしが勝ったら『残念じゃったのう、次は頑張るとよい』と慰めねぎらい甘やかす予定じゃからの。とは言いつつも、どうすれば勝負がつくのか、わしにもよく分かっとらん」

「なんだそりゃ……まったく本当にとんでもない神様だな」

 呆れるように言った龍星に、

「そうとも。わしはとんでもない神様なのじゃ」

 モエギは晴れ晴れとした裏表のない表情で笑顔を見せた。


 龍星は傍らに立つモエギへ見交わすように目をやった。

 出会ったころよりも大人びて見え、また子どもっぽくも見える。

 泣いて笑って怒ってまた笑うという情の激しい起伏や、慈愛に満ちたまなざしを見せることもあれば畏怖を覚えるような冷酷さも見せる。


 会って間もない短い期間で、表情や感情だけでなく、身にまとう雰囲気さえもまるで服を次々と着替えるかのように目まぐるしく変えていくモエギに、

(神様ってのはこうも気まぐれなのか、それとも女の子ってのはみんなこうなのか?)

 ふとそんな感想が浮かんできた。


「どうした? お主まで摩訶不思議なものを見るような顔をして。またなんぞか悩み事か? モエギお姉ちゃんが聞いてやろうか?」

 空元気ではない明るさと少しの高慢さを取り戻したモエギに対して、

(この先々、こんなふうに振り回されていくんだろうな。いろいろと大変かもしれないけど、まあそれはそれで飽きないか)

 などと思いながら、

「悩みというか……これから先、お兄ちゃんとしてどう頑張ろうかなと考えてただけだ」

 胸中を誤魔化すように答える。


「憎まれ口を叩きおって……ますます可愛い弟のように思えてくる。甘やかすのが今からでも楽しみじゃ」

 とモエギが軽く舌を出し、満面に楽しげな笑みを浮かべる。

 その笑顔をちょっとだけ、ほんのちょっとだけ可愛いと龍星は感じた。

 ただし、口に出すとなんだか騒々しいことになる予感がして、感想は心の中にそっとしまい込むことに決めた。

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