第9話
「おっす、魔王様! いっぱい仲間連れて来ましたね!」
ちゃんと方向を理解しているのかも怪しい
ついに合流すると、新しい弓を拵えている不死身の少年が嬉しそうに手を振った。
「あれ、でも白羽の矢と数が合わな────」
「無駄話をしている時間はないよゾンビボーイ! これからヒト族の里に奇襲をかけるんだ。のんびりしてると、どこかを
俺っちは余計なことを口にしそうなアンデッドキッドを遮る。
万にひとつも、俺っちがヒト族に負けることはない。
が、ヒト族が持つ最先端の技術と軍事力が未知数なのも事実。
億が一にも負けないよう、舐めプは禁物だ。
「そうっすね、急ぎましょう! 待ってる間に王都へ乗り込む最短ルートを見つけておいたので、夜には到着できるはずっす!」
さすがエルフとの混血、目がいい。
ソルドメスターさえ撃ち殺さなければ百点だったのに。
アンデッドキッドが歩き出すと、他の男たちは「こんなお調子者臭をぷんぷんさせたクソガキについて行っていいのか」といった様子で顔を顰めた。
しかし、俺っちが特になにも言わないのを確認するなり、懐疑的な表情を緩めて素直に道案内に従う。
「そういやオイラはアンデッドキッドっす! 短い付き合いかとは思うっすけどよろしく!」
ゾンビの少年がキラキラの笑顔で自己紹介をする。
そこでなにかに気づいたのか、
アンデッドキッドは長身のゴリラの足元を指さして口を開く。
「あれ⁇ 猿顔のおじさん、足が手だ!」
なにを言い出したのかと視線を下方へ向けると、そこにはたしかに手があった。
義足ではなく、義手。
不思議なことに猿顔の大男は、他の指四本と向き合う方向に接続された親指を持つ手を、金属製の脚(正確には腕)の先端に備えていた。
「そっか。オイラ
不意に、長身のゴリラが足を止めた。
「……猿顔と言ったな?」
「え────」
横薙ぎの風。
瞬間。
アンデッドキッドの腹部に大きな風穴が開いた。
「あがッは────ッ⁉︎」
彼の身体を貫いたのは、猿顔と言われた男の太い前腕。
貫通させたその腕が無造作に振り払われ、吹き飛んだ不死身の少年の身体が遠くの木に衝突して爆散する。
手に持っていた巨大な棍棒を振りかぶるサイクロプス。
バウバウバウ‼︎ と三つの音が重なり合うケルベロスの吠え声。
そして、身構えた拍子にずれた王冠を気にせず、突然現れた脅威に対し長い杖を取り出すゴブリンキング。
「おいお前! 大事な
複数の殺意を向けられるなか。
平然とした長身のゴリラが俺っちに返答するため、ゆっくりと口を開いた。
「悪いな。言ってなかったことがある」
懐から取り出したバナナを握りつぶすなり、飛び出した果肉を一飲み。
「俺はヒト族の傭兵、ゴリゴルゴス。誰の仲間でもねぇ────」
皮を適当に投げ捨て、
猿顔の大男は言葉を吐き捨てる。
「────俺を『猿』呼ばわりするやつの敵だ」
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