カップラーメン宇宙戦争

亜未田久志

成層圏まで約100km


 英雄には三分以内にやらなければならないことがあった。


 俺はカップヌードルにお湯を入れてしまった。

 地球の危機だというのに。

 どうしたものかと。

 首を傾げていると。

 緊急通信が入る。

『超惑星間弾道ミサイルは既に発射された! 火星のインベーダー共は既に動き出している! 戦え英雄ヒーロー!」

「と言ってもだな……今、俺はカップヌードルを……」

『馬鹿野郎! 地球を救えばコース料理の一つや二つタダなんだぞ!』

 そういう問題じゃない、そういう問題じゃないんだ戦友。

 俺は今この期間限定Wチーズカレーヌードルが食べたいんだ。

 今じゃなきゃダメなんだ。

 だけどそう伝えても彼は激昂するばかりだろう。

 刻刻と時間は経って行く。

「あと……2.5分」

『おい! 英雄ヒーロー! なんとかしてくれ! ミサイルはもう月の防衛網を突破したぞ!』

「……早いな」

『ああ! 新物質による加速は亜光速に迫ると言われている!』

「ハッ! 新開発のチーズが溶けるのが早いからもうこんなにもいい匂いが!」

 とあるCMで言っていた。

『カップヌードルは二分が美味しいんだよ?』

 理論。

 あれの信憑性がどこまであるのかは知らないが。

 ちょっとアルデンテなかための麺が美味いのは事実だ。

 つまり残り――一分!!

『おい! たった今通信が入った! ミサイルの中身は新開発された超粒子という――』

「ハッ! 全粒粉麺……だと!?」

 はたしてそれが美味しいのかは定かではないが、新たなる試みである事は間違いなかった。

『おい!! いい加減にしてくれ!! もう時間がない!!』

「待てよ……とろみ剤!?」

 入れ忘れ、ではない、カップヌードルでは珍しい後入れ調味料だ。

「よりカレーに近いコクに……!? まさかそのための全粒粉麺!?」

 つまり、つまりこのカップヌードルは!

「お湯に浸からせれば浸からせるほど、上手くなるのでは!?」

『ああ……終わりだ……ミサイルが成層圏にまで……』

「対艦刀を出してくれ」

『は?』

「ミサイルを両断する!」

 戦友が思考停止している間に愛用の機体に乗り込み発進カタパルトへセットする。

『た、対艦刀スタンバイOK! 英雄ヒーローが発艦するぞ!』

「ニッシン・C・マッテマス! 出るぞ!」

 俺の名はニッシン、今日も今日とて、世界を救うぜ。

 カップヌードルを食べるついでにな!

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