第33話 イベント開始

今回は配信が入ります。

“”で囲った部分は配信のコメント。

『』の部分は放送上、遠隔での会話となります。

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 それから数日後、ついにイベントの開始日になった。


「待機所に凄い人数がいますね?」


 今回のイベントはリアルタイムでの生放送も予定している。

 そのために有名配信サイトに枠を立ててるんだけど、開始前なのに既に20万人以上が待機してる。

 初めてのイベントだし、皆気になってるのかな。


「そろそろ時間だけど……ミミ、大丈夫そう?」


『はい、お任せください。リソースの比重をこちら側へ傾けました』


 他のダンジョンも閉鎖しているわけじゃないけど、それでもいつもよりは入場している人がかなり少ない。

 それだけ、こっちのイベントが注目されてるってことかな。


「里楽さんも大丈夫?」


「はい……放送準備完了です」


 今回の放送、配信の設定やなんかは里楽さんにお願いして、ミミが説明・解説を行うことになっている。

 ミミにはなにかもお願いすることになっているからホント苦労かけるね。

 もうちょいでレベルが上がって負荷が解消されるはずなんでそれまで頑張ってもらおう。


「よし、そろそろ時間だね」


 時計を見ると時間開始はすぐに迫っていた。


「……3……2……1……放送を開始しました」


 里楽さんが放送を開始した。


“おっ!? 始まった!?”

“きたあああああああ!”

“初めての公式放送助かる!”

“ダンマスさんは放送参加するんですか!?”

“抽選漏れたあああああああ!”


 一気にコメントが流れてきた。


「おー、なんか凄いコメントの数だなぁ……とてもじゃないけど全部は追えないね」


 まぁ、どのみち反応するつもりはないけど。

 別のパソコンに映っている配信画面でも無事に映像が流れている。

 その映像は、今回の舞台となるゴーストタウンを空から見た映像だ。


『お集まりの皆様ありがとうございます』


 その背景を背にミミがルール説明を始める。

 説明は淀みなく順調だ。おおよその内容は決めてたからね。


「おっし、それじゃあ、私も参加してくるか」


 僕らと一緒に放送を見ていたレインさんが立ち上がった。


「レイン姉! 頑張ってね!」


「流れ通りよろしくね」


「おう」


 レインさんはアプリからダンジョンへ入っていった。

 僕のパソコンから見たところ、無事に入れたみたいだ。


『というルールになっております。不明点がありましたら、ヘルプからご確認ください』


 おっと、ミミの説明ももうちょっとで終わりかな?


『そろそろイベントを開始いたします。当選した方でまだ入場してない方は早急に入場をお願いします』


 今回のイベントは20人が同時に参加することになっている。

 レインさん以外は基本的にランダムだけど、慣れている人を多めになるように抽選しておいた。

 初めてのイベントだし、その方が安心だからね。


「うーん、見た感じ半分は日本人っぽいかな?」


 なんとなく眺めてみた感じだとやっぱり日本人が多いかな? やっぱり慣れている人たちから選ぶとどうしてもそうなるか。


「でも世界中の方が集まっている感じですね」


 日本人が目立つけど、それ以外のアジア系、白人、黒人様々だ。


「早速、交流もしているみたいですね」


 既に参加者同士で話し合っている人たちもいる。

 なんとなく、聞こえる限りだと自己紹介とルールの確認とかだろうか?

 協力型にしておいてよかった。こういう交流も大事だもんね。


『ハロー、こっちの声は聞こえてる?』

『えっ? が……外国人さん!? ないすとぅーみーちゅー?』

『はは、無理に英語使わなくても大丈夫だよ。そもそも、このダンジョンの中だったら普通に相手の言葉伝わるみたいだし』

『そうなんですか?』

『うん、だって、私は英語喋ってるけど、そっちには日本語で聞こえてるでしょ?』

『日本語にしか聞こえないですね……』

『そんな感じで普通に会話は伝わるからね、安心していいよ』

『はい……あ、僕は日本人で名前は……』

『うん、私はレイン、頑張ろうね』


 早速レインさんも参加した人に話しかけていた。


「この翻訳機能も凄い便利ですね……」


「まぁねぇ、流石にこれがないと厳しいだろうし」


 前に大愛さんがレインさんを前にしてたじたじになっていたのを見て入れなきゃと思いついた機能だ。

 これの開発はめちゃくちゃ大変だったんだけど、それはまた別のお話。


『それでは、人数も揃った様子ですので、これより、敵側の役割の方を決めさせていただきます。皆様自分のスマホを取り出してください』


 もうそんな時間か。


『自分の画面にゾンビマークが表示されている方は敵側となります。周りの人にバレないように立ち回ってください』


 皆が周りから隠すように自分のスマホ画面を見ている。

 その表情は露骨な安堵だったり、隠すように無表情だったり様々だ。


「えっとゾンビ役はどの人かな?」


 ゾンビ役の人は、他の人を自分の側に引っ張り込んでいくことができる。

 そうして味方を増やして討伐を妨害するのが役割だ。


「あの黒い服の人か」


「あの黒い服……なんかどこかで見たことあるような?」


 今回ゾンビ役に選ばれたのは、真っ黒なスーツにサングラスをかけた男性だ。

 確かに、雛香の言う通りなんか見覚えがある気がする……


「……ねぇ、里楽さん」


「……ええ、うちのSP部隊の1人だと思います」


 やっぱりか! 見覚えあると思った。


「あー、あの弱い人たち!」


 僕がさらわれたと勘違いして乗り込んできた時に雛香にのされた人たち。その人たちがあんな服装だった。


「……見た感じB班の隊長ですね……ビリーかと」


 僕には見分けはつかなかったけど里楽さんには見分けがついたらしい。


「はー、凄い偶然だなぁ……真田さんもびっくりしてそう」


 というか、一応SPさんでしょ?

 こんなイベントに出ていて大丈夫なのかな?


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そんなわけでイベント開始です。

今回の人狼……ゾンビ役になったのは閑話でも出てきたビリーさんです。

閑話読み飛ばしちゃった人のために説明すると、真田さんの部下の1人で部隊を束ねる隊長の1人ですが、雛香にボコボコにされたのでダンジョンで訓練させられてる人です。

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