第32話 ゴーストタウンの噂

 結局、雛香とはそういうことはしてないことをちゃんと説明して納得してもらった。

 そもそも、お互いの気持を確認しただけで、それがどう変わるというわけでもない。

 基本的には今まで通り……いや、ちょっと雛香といちゃつく時間が増えるだけ……だと思う。


「……」


 うん、雛香を膝の上に乗せて撫でてる姿で言っても説得力はないと自分でも思うけど。


「お兄ちゃん手が止まってる。もっと撫でて」


「はいはい」


 今日くらいはね……ほんと、今日は大変な一日だったからね。

 あ、でも……


「そういえば……テスト途中でやめちゃったな……」


 あのまま帰ってきてしまったから、結局最初の襲撃までしか確認できていない。


「ひとまずもう1回テストするかなぁ」


 流石にぶっつけは不安だし。


「雛香も行くからね!」


「うん、それはいいけど……そういえば、雛香、2人だけじゃなくても大丈夫か?」


 やっぱり今日やって思ったけど、もうちょっと人数が欲しいなぁと思った。

 それに、少し考えていることもあって、


「実はレインさんに初回のイベントに参加してもらいたいと思ってな」


「レイン姉に?」


 運営サイドの人間を1人入れておいて、いい感じにイベントを制御してもらうっていう役割だ。

 いわゆるサクラってやつ。


「雛香がやってもいいよ?」


「いや、雛香は嘘つけないだろ? それに雛香には万が一の時のために僕のそばにいてもらったほうがありがたいし」


 何が起きるかわからない。

 緊急事態の時は僕自らが出動することだってありえるかもしれない。

 まぁ、99%ないと思うけど。


「雛香がいれば心強いしね」


「そういうことなら、雛香はお兄ちゃんのそばにいるね!」


 雛香はそう言って、僕の腕を抱えてきた。

 別に今じゃないんだが……


「そんなわけで、他の人にも参加してもらうからな」


「うん、わかったー」


 無事に了承は取れた。

 それじゃあ、もう一度ゴーストタウンに行ってみることにしようか。



「ふむ、ここが例のゴーストタウンか」


 翌日予定通りにレインさんを連れてゴーストタウンにやってきた。


「車であれだけかかったのに、一瞬で来れるのは凄い便利だね」


「移動に便利そうです」


 レインさんだけではなく、フィンさんと里楽さんも一緒だ。

 2人も一緒に参加してもらうことになっている。


「それじゃあ、とりあえず、頑張りましょうか」


「うん!」


「おう、任せておけ」


 2人はやる気満々だなぁ。

 僕もぼちぼち頑張ろう。主に索敵とか……



 前回確認した1回目の襲撃の部分までは順調に乗り切ることができた。

 しかし、


「……疲れました」


 その時点で里楽さんがダウンしてしまった。


「里楽さん、大丈夫?」


「ええ……少しだるいだけですので休めば回復するでしょう」


 里楽さんもともと体力がないからなぁ……

 少し残念だけど、体調不良はしかたないか……

 というわけで、里楽さんは家に戻ってもらうことにした。


「フィンさんは大丈夫ですか?」


 雛香、レインさんは言うまでもなく大丈夫そう。残りはフィンさんだけど。


「うーん、ちょっと疲れたけど、姉さんに付き合わされた地獄の訓練に比べれば全然余裕だよ」


 フィンさんも大丈夫そうだね。


「それにしても、里楽さん気分悪そうな感じだったけど大丈夫かな?」


「なんか変な呪いとかじゃなければいいね」


「呪い?」


 なんかフィンさんが変なこと言い出したんだけど?


「実はこの街から人がいなくなったのは呪いだなんて噂があるらしいんだよね」


「そんな噂あるんですか?」


「まぁ、アメリカの土地にはそういうのはつきものみたいなものだからね、あんまり気にしなくていいと思うけど」


 うーん、僕としてもただの噂だとは思うけど。

 だって、ここの土地の魔力も特に変な感じしないし。


「ちなみに、噂だとどんな呪いがかかってるって話なんですか?」


「うーん、色々とあるよ? この土地を追い出された先住民族のシャーマンが生きづらくなる呪いを残したとか、この土地で悪魔召喚が行われたとか、さらに古の魔女が人払いの呪いをかけたなんてものもあったよ」


 なんか色々だなぁ……


「呪いとか……凄いファンタジーですね」


「それ飛鳥が言うことではないけどね」


 フィンさんが苦笑してるけど、まぁ、それは……ね。


「わかりました、とりあえず、ないとは思いますけど注意はしておきます」


「僕の方でも、もうちょっと詳しいことを調べてみるよ。元々ここに住んでいた人とかからも話を聞いてみたいし」


 確かに、そういう情報もあった方がいいかもね。


「まぁ、あの2人の様子を見てると、呪いなんてただの噂だと思うけどね」


「ですね」


 僕らの視線の先には、


「隙あり!」


「くそっ! やられたか! しかしこっちのはもらったぞ!」


 我先へとゾンビを倒していく雛香とレインさんの姿があった。


「どっちが多くゾンビを倒せるかバトルって……」


「クリアするだけなら余裕って感じだねぇ」


 2人の様子を見つつ難易度調整とかはできないよなぁ……

 その辺りはリアルタイムで見つつ調整していくしかなさそうかなぁ。

 というか、レインさん本番で同じことやらないよね? ちょっと心配になってきたんだけど。

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