第31話 子供!?
「うーん……」
雛香とお互いの気持ちを確認した。
今はこのことを誰かに……家族に話すかどうかを雛香と話し合っている。
「あんまりおおっぴらにするもんじゃないとは思うんだけど」
そもそも、一般的に見たらあまりよくない関係ではあるからね。
「でもパパとママには話しておきたいよ!」
そうなんだよなぁ……
というか、雛香がその辺りを隠せるとは思えないからなぁ。
「いや……雛香がまたなんか言ってると思われるだけの可能性も……?」
「酷い!」
「冗談だって」
流石にちゃんと今度からは認めるって。
「まぁ、父さん母さん、それにレインさんたちくらいには話しておくか」
そのあたりならまぁ身内だしね。
「里楽ちゃんは?」
「えっ?」
「里楽ちゃんももう、家族みたいなもんじゃないの?」
いや、お前……どの口が?
さっきまでその里楽さんに嫉妬してたの忘れたのか?
「あー、でも、話しておいた方がいいのか?」
お互いに無意識に距離が近すぎるところもあったし、それを抑制するって意味でも。
とはいえ、今更里楽さん抜きでのダンジョン運営も大変なことは間違いないんだよな。
「そのあたりどうなんだ? 僕と里楽さんが距離を置いた方がいいか?」
わからんので、直接聞いてみることにした。
「うーん……多分、また里楽ちゃんに嫉妬? しちゃうとは思う……けど、さっきも言ったように里楽ちゃんも大切な家族だからね!」
「雛香にとって家族ってことは、僕にとっても家族ってことになるけど」
「家族と距離が近いことは当たり前だよね!」
ふむ……
「つまり、嫉妬はするけど、距離が近いのは許すと?」
あれ? 結局どっち?
「その分お兄ちゃんが雛香の事を好きって言ってくれればいいと思う!」
あー、そういうこと……
「じゃあ、里楽さんにも話すことにしよう」
そうと決まれば今日のうちに話してしまおう。
話すと決意はしたけど、いざとなったらそれなりに緊張して臨んだんだけど……
「えっ? 今更?」
「あらあら」
父さん、母さんからそんなあっさりとした反応をされてしまった。
えっ? 僕、今ちゃんと話したよね? なんか別の話とかしてないよね?
他の人の顔を見るけど、皆同じようにぽかんとしてる。
唯一違うのは母さんが凄い嬉しそうなくらいだ。
「いや、父さんそれでいいの? 僕たち一応兄妹なんだけど」
なんで僕自身がこんなこと言ってるんだろう?
「いや、だってねぇ……」
父さんはちらっと雛香の方を見る。
「飛鳥の方はともかく、雛香の方はあからさまだったし」
いや、それは……わかるけど。
「飛鳥の方は自制してるんだなぁとは思ってたけど、雛香の事を大切にしてるのはわかってたからね。いずれ落ちるだろうって思ってたよ」
「そんなふうに思われてたの!?」
衝撃なんだけど?
いや、これでも結構葛藤したんだけど?
「雛香ちゃん頑張ったわね! 今日は御赤飯かしら?」
「母さん!?」
御赤飯はまた意味違ってこない!?
というか、それ古くない!?
「待ってください!」
おっ! レインさんが立ち上がってキッチンへ向かう母さんを止めた。
「ここは日本ではなくアメリカです! お米は常備してません!」
レインさん!? ツッコミどころ違くない!?
「あら! それは大変ね!」
「大丈夫です、お任せください。すぐに日本食のあるレストランにお願いしましょう!」
フィンさんまで!?
「いいね! 知り合いがやってるいいお店があるんだよ」
「あらあら、じゃあ、すぐに連絡しないと!」
父さんもそこに乗っかった!?
にこやかに今日の夕飯について話す4人。
ちらっと雛香の方を見ると……
「雛香は唐揚げが食べたい!」
駄目だこいつら……
まぁ、お祝いしてくれる気持ちはあるのはわかったよ。
「……」
さて、この流れで完全に置いていかれちゃってるのがもう一人。
「えっと……里楽さん?」
さっきから固まったままの里楽さんだ。
何やら真剣に考えているように見える。
「飛鳥さん……わかっているのですか? お二人は兄妹なんですよ?」
「里楽さん!」
おお! 初めてまともな反応が!
なんか嬉しくなっちゃうけど、違う、ちゃんと返事をしないと。
「わかってるよ、でも、気持ちは抑えられなかったんだ……」
「気持ちを抑えきれない……」
僕の言葉に里楽さんはまた考え込む。
「飛鳥さん、もう一度聞きます、わかっているのですか? お2人は兄妹なんですよ?」
「わかってるって……」
「いえ、飛鳥さんはわかっていません!」
里楽さんは珍しく口調を荒げた。
どうやら、真剣に僕らのことを考えてくれているみたいだ。
でも僕だって引くわけには……
「お2人の子供は遺伝的なリスクが存在するのですよ!」
引くわけには……
「……えっ? 子供?」
あれ? なんか……あれ?
「近親交配を繰り返して滅びた歴史的名家のことはご存知でしょう? 近しい遺伝子同士になると、生まれてくる子供には奇形や病気の割合が通常より高いということを」
いや、確かにそれは聞いたことあるけど……
「それを気持ちを抑えられずになんて! 子供が可哀想だとは思わないのですか!」
「いや、気持ちを抑えきれずにってのはそういうことじゃなくて……」
「飛鳥さんはもう少し、真剣に将来のことを考えるべきです!」
なんか方向性はおかしい気がするけど、一応ちゃんと心配してくれてるんだよね?
「そこで私には提案があります」
「提案?」
一体どんな……
「早く次のポーションをダンジョンに導入しましょう!」
「……ダンジョンにポーション?」
「飛鳥さんのポーションであれば、できた子供になにかあったとしても、回復できる可能性がありますよね?」
いや、それは……どうなんだろ?
確かに、めちゃくちゃ効果の高いポーションは身体の異常をなくすみたいな効果もあったりするけど……
「それをもって、兄妹の恋愛は大丈夫! というのを世間に知らしめましょう! 大丈夫です! 父が裏から手を回してくれるはずです!」
「話がでかくなりすぎなのでは!?」
途中からわかってたけど、里楽さんもなんか暴走してるね!
「それはいいね!」
「ええ、ちゃんと世界中に2人のことを祝ってもらわないといけないわ」
「確かに、そうなると、早いところ強くなってそのダンジョンを攻略できるような人材を整える必要があるね」
「うちの部隊の人間を動員するか……」
「大丈夫! 自分のことだもん、雛香が頑張るから!」
「いえ、しかし、雛香さんにはお腹の子供が……」
結局里楽さんも、話し合いに参加した。
「……」
そして置いてかれる僕は、
「もうどうにでもなれー」
投げやりにつぶやくしかなかったのだった。
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過去1酷い話になったことを自覚している。
でも、書いてて過去1楽しかったです。
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