第21話 マルチダンジョンその2

 4人が扉の中へ入ると、そこは浜辺だった。


『海だぁああああ!!!』


 雛香なんか、叫んで海へ走り出す……


『Wait! 待ちなさい!』


 直前、レインさんに首根っこを掴まれていた。


『いきなり単独行動は規律的に駄目だ!』


『あい……』


 状況を思い出したのか、雛香も大人しくする。


『変な形のフィールド……』


 大愛さんはフロアの確認をしている。


『3方向に浜辺が広がっている……そっちからモンスターが出てくるのかな?』


 フロアは上から見ると、辺が内側に曲がった三角形みたいな形をしている。


『宝箱……』


『あ、ええ、それっぽいですね』


 その中心にあたる部分に、里楽さんが宝箱を見つけた。


『さて、まずは装備を選ぶんでしたっけ?』


『宝箱に触れる……』


 里楽さんが宝箱に触れると、眼の前にメニューが現れる。


『なるほど、この中から選ぶ……』


『あ、私も。雛香さんたちも選んでください』


『あいよ!』


『うん!』


 大愛さんに促されて、レインさんと雛香も宝箱に触れた。


『好きなやつでいいよね?』


『いいんじゃないか? 変にバランスとる必要もないだろう』


 そうして、4人はそれぞれ武器を選んだ。


「雛香が片手剣、レインさんが大剣、大愛さんが槍、里楽さんが弓か」


「なんだかんだバランスがいい感じだね」


 うん、前衛2人の中衛1人、後衛1人の綺麗なバランスだね。


『えっと、特殊な敵ってやつを倒して宝石を手に入れればいいんだよね?』


『ええ、でも、敵は……』


ピー!


『なんだ!?』


 笛の音がダンジョン内に響き渡った。


『開始の合図ではないでしょうか!』


 大愛さん正解! ここからがイベントの始まりだよ!


『皆さん! 敵です!』


 大愛さんが指差す先、海の方から何かが上がってきた。


『蟹……にしてはでかいな?』


 それは、人間の腰ほどまである大きさの蟹だった。


『あれが敵! それじゃあ行ってくるね!』


『あっ! こら! 私も行く! 2人は援護と周りの警戒を頼む!』


 雛香が早速飛び出し、レインさんもその後を追った。


『おりゃぁああ!』


 まず一撃、雛香が蟹を攻撃する。

 一撃では倒すことができず、3回ほど切りつけて倒すことに成功した。

 しかし、


『あれ? 何も落とさないよ?』


 蟹は何も落とさず消えていった。


『なん……! 雛香! 避けろ!』


 首をかしげている雛香の背後から、再び蟹が迫ってきていた。

 しかも、その数は3匹同時だ。


『おっと!?』


『まったく! 油断するなと!』


 雛香が避けたところに、レインさんの大剣が横薙ぎして蟹を吹き飛ばした。


『ナイス! 一撃凄いね!』


『いや、多分、最初のやつとは種類が違うんだろう。少し大きさが小さかったし、色も違った』


『あー、言われてみればそうだったかも?』


 雛香のやつ、ちゃんと見てなかったな?


『ってまた来たよ! 確かにちょっと小さいやつ!』


 またしても海から蟹が上がってきた。


「最初のやつが耐久力があるけれど遅いやつ。次のやつが耐久力低めだけど速いやつってことであってるかな?」


「ええ、フィンさん正解です」


「なるほどね、無限に湧いてくるモブモンスターってやつかな?」


「それじゃあ、特殊なモンスターはどんなやつなのかしら?」


「父さん、母さん、それは見てればわかるよ」


 そろそろ一匹目が……


『うん? あっ! あれ!』


 無数に湧いてくる蟹を処理していた雛香が突然空を指差した。

 そこには、一匹のかもめのようなものが浮いていた。


『普通のかもめ……ではないか? っておい! まさか!』


 そのかもめは里楽さん達のほうへと向かっている。


『爆弾を持ってやがる! 気をつけろ!』


 レインさんが里楽さん達に向かって叫ぶ。


『えっ!? 爆弾!?』


『……撃ち落とします!』


 驚く大愛さん、里楽さんは冷静に弓を構えてかもめに向かって放った。

 一直線に飛んでいく矢がかもめに命中して、かもめが墜落する。


『爆弾……あれ? なんか光っている?』


 墜落したかもめが消えていく、その場に残されていたのは爆弾ではなくキラキラと光る石だった。


『これが宝石』


『あ、なるほど、これを宝箱に入れればいいんだね』


 大愛さんがそれを宝箱にいれる。


『あ、数が出たよ。5分の1だって、だからあと4個集めなきゃってことかな?』


『ですね』


『なるほどな、蟹のやつはただの雑魚で、さっきのかもめみたいなやつが特殊なモンスターってことか』


『蟹は近づいてハサミで攻撃しかしてこないっぽいもんね』


 レインさんと雛香も戻ってきてその状況を確認した。


『その特殊なモンスターはかもめだけなのかな?』


『複数の種類がいるのではないでしょうか?』


「実際のところどうなんだい?」


「何種類いるか気になるね」


 見てればわかる……と言いたいところだけど。


「今回は全部で7種類の特殊モンスターですね。それぞれ違った特徴を持っていますよ」


 さっきのかもめみたいに空から攻撃してきたりするやっかいなモンスター達だ。


「へぇ! それは面白そうだね!」


 うん、今のところは単純に面白いだけだと思うよ。

 ……今のところはだけどね。


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