第20話 マルチダンジョンその1

『ほほう、これがダンジョンの中か』


 予定を調整して、テストを始めることにした。

 僕はいつも通り、外からその様子を見ている。


「飛鳥はいつもこんな感じで様子を見ているのかい?」


「いわゆる神視点ってやつだね」


「あっ、雛香ちゃんだ! おーい!」


 今回観戦しているのは、僕だけじゃなくて、父さん、フィンさん、母さんが一緒だ。

 ちなみに、母さん、こっちからの音声、今は聞こえないよ。


『むっ! ママが呼んでる気配がする! ママ! 雛香頑張るよ! お兄ちゃんもちゃんと雛香のこと見ててね!』


 なんでわかるんだよ。


『あっ! レイン姉がいる! やっほー』


『……無事に合流できましたね』


 ダンジョンの中に、雛香と里楽さんも入ってきた。

 よしよし、無事に同じダンジョンに入ってこれたね。


「残りの子も女の子なんだっけ?」


「うん、レインさんよりは下だけど、僕らよりは上の人だね」


「なるほど……女の子ばっかりのパーティだね」


「……それで僕は遠慮したからね」


 フィンさんがレインさんを推したのはそういう意味もあったのか……


『……えっと、遅れました』


 おっ、大愛さんもやってきた。


『大愛ちゃん! 久しぶり!』


『えっ? あ、ヒヨコさん、お久しぶりです』


 あ、そういえば、雛香の本名伝えてなかったっけ。


『ヒヨコ?』


 里楽さんが首を傾げている。


『そっか、名前……大愛ちゃん、お兄ちゃんの名前は聞いてるんだよね?』


『はい、メイゼスさんではなく、飛鳥さんと呼ばせてもらってます』


 あの時は隠してたけど、僕の方はちゃんと名前教えてある、雛香のは単純に忘れてたわ。


『それじゃあ、雛香も教えようかな。雛香は雛香って言うんだよ』


『雛香さんですね、改めてよろしくお願いします。えっと、それで残りの方は……』


 大愛さんの目が里楽さんとレインさんに向く。


『……里楽です』


 おおっ! 里楽さんがちゃんと名乗れてる!


『……えっと、里楽さんですね? 私は朝倉大愛です』


 自己紹介としては、全然足りてなくて大愛さんがちょっと困ってる感じだけど、まぁ、おいおいだね。

 さて、最後はレインさん。


『Hi girl! It's so nice to meet you! I'm Rain, Asuka's cousin(こんにちはお嬢さん! はじめまして! 私はレイン、飛鳥の従姉弟よ!)』


『え、英語!?』


 あ、そっか、忘れてた大愛さんって英語……


『えっと! ないすとぅーみーちゅー、あいあむ……だいああさくら!』


 わからないよなぁ……うん、そんなイメージはある。


『Nice to meet you! Daia!(はじめまして大愛!) あなたも飛鳥の友達なの?』


『い、いえす! あいむ、飛鳥のフレンド!』


 会話がおかしなことになってる!

 まぁ、気持ちはわかるけども。


『……あれ?』


 と、大愛さんが気がついたようだ。


『ひょっとして日本語通じてます?』


『No! I can't speak Japanese!(いいえ! 私は日本語喋れないわ!)』


『えっ? 通じて……通じてるじゃないですか!』


 うん、まぁ、レインさん普通に日本語わかるんだよね。


『ははは! ごめんよ! ちょっとおもしろくなっちゃって!』


 今までのはからかってただけだね。レインさんは初対面の相手でもこういうことする。


『改めて、私はレイン! 飛鳥の従姉弟さ』


『あ、はい、朝倉大愛です、飛鳥さんの友人です』


 改めて握手。レインさんが悪気なさすぎて怒る気にならないんだよね。

 ともかく、この4人が今回のテストメンバーだ。

 うん、こう見ると、スペック高めのメンバーが集まったなぁ。

 里楽さんの運動能力だけが心配かな。



『えっと……これから、どうすれば……』


 挨拶も終わったところで、これからどうすればと、周りをきょろきょろする大愛さん。


『お集まりの皆様、今回はダンジョンのマルチ対応テストにご協力ありがとうございます』


 そこにミミのアナウンスが入る。


『まず始めに、このダンジョンの内容について軽く説明させていただきます』


 今回も本番想定で、ミミにその辺りの説明をやってもらうことになっている。


『まずこの浜辺のダンジョンですが、全部で3階層のダンジョンとなっております』


『えっ? 3階しかないの!?』


『はい、しかし、この階層は特定の条件を満たさない限り次の階層に行けない特殊な構造となっています』


 要するに、その階層をクリアしないと次の階へはいけないっていう仕組みになっているってこと。


『特殊な条件?』


『はい、皆様には宝石を集めてもらいます』


 さて、これが今回のイベントの肝だ。


『宝石?』


『この宝石は一定時間ごとに出現する特殊モンスターを倒すことで入手することができます。制限時間以内に宝石をフロアの中にある宝箱に指定の数いれることで階層クリアとなります』


 簡単に言えば、敵を倒してアイテムを入手してそれを集めるって感じだね。


『この宝石は1人に付き1個ずつしか持つことができませんのでご注意ください、さらにこの宝石は一定時間経つと消えるようになっています』


 特殊モンスターを倒しまくっても、宝箱にいれないと無駄ってことだね。


『また、このイベントダンジョンではアイテムの持ち込みをすることができません。また特殊モンスターが宝石を落とす以外にアイテムを入手することはできません』


『えっ!? それじゃあ、無手で戦うってこと!?』


『いえ、最初に好きな装備を選ぶことができます、またいくつかのポーション類も支給しますのでご活用ください』


『あ、最初にくれるんだね! 良かった! 無手だったら倒すのに時間がかかっちゃうところだったよ』


 まぁ、雛香だったら無手でもなんとかなりそうだけど、里楽さんとかは無理だし。


『その他、何かご質問はありますでしょうか?』


『うーん、雛香はないかな』


『……把握してますので』


『今のところは大丈夫です』


『……ひとついいかな?』


 レインさんが、手をあげた。


『万が一誰かがやられてしまった場合は、その人だけ退場となるのか、それともチーム全員失敗なのかどちらだい?』


 あ、確かに重要かもね。


『やられてしまった場合は、その場で行動不能となりますがチームとしてのミッションは続行になります。また、手に入れた宝石を消費して味方を復活させることも可能です。全員が行動不能になると失敗になります』


『なるほど……味方を助けるか数を集めることを優先するかというところか』


『はい、なお、一度宝箱に入れた宝石は再び取り出すことはできませんのでご注意ください』


『わかったよ、ありがとう』


『はい、他にご質問がないようでしたら、あちらの扉からフロアへ移動してください。宝箱に触れると装備とアイテムを手に入れることができます』


 うん、大丈夫かな? このあたりの説明内容に関しては、後でもう1回確認しておこう。


『よーし! 頑張るぞ!』


 雛香を戦闘に、4人は扉をくぐってフロアへ入った。


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今回のお話はとあるゲームを参考にしてます。

いくら集めの鮭畜は楽しいぞ!

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