第17話 ダンジョン計画
その後も、父さんとダンジョンについての話を続けた。
「もちろん、飛鳥のことはできる限り内密にはするつもりだけど、それでもどういうことをするのかは報告してもらう必要はあるかな」
まぁ、基本は会社の土地だからね、そこは仕方ない。
「ただ、基本は飛鳥のやりたいことをやれるようにするつもりだから、安心していいよ」
父さんは、甘いなぁ。まぁ、僕も変なことをするつもりはないけどね。
「ということなんだよ」
「なるほど……」
早速、何をするかを考えることになった。
「へぇ! 本当にダンジョンを作っちゃうんだ!」
相談相手は里楽さんと雛香。
最初は雛香がダンジョンに遊びに行くと言っていたので、里楽さんとおおまかな案を相談しようと思ってたんだけど、話をしたら雛香も手伝いたいというので3人で話し合うことになった。
まずは簡単な案を出してみて、それを父さんに話してみるということになっている。
「それにしても、ゴーストタウンをそのままダンジョン化ですか……改めてとんでもない能力ですね……」
「だよね! お兄ちゃんだったら世界も獲れちゃうんじゃないの!?」
「世界を獲るなんて興味ないよ」
そんなことしてもつまらないし、いや、そもそもできないとは思うけど。
「あ、ちなみに父には報告したのですか?」
「うん、その辺りは先に父さんの方から連絡がいっているみたい」
そもそも、父さんの会社に土地を押し付けられたのも真田さんからの提案らしい。
やっぱり真田さんが裏で糸を引いてるんだなぁ。
……ひょっとして、僕がダンジョンを作るっていうのも思い通りだったりするのかな?
「まぁ、そういう政治的な事情は僕らは気にしないでいこう」
楽しんでもらえるものを作る。ただ、それだけでいい。
「了解しました。ちなみに、飛鳥さん的には何か案はあるんですか?」
あ、それ聞いちゃう?
「うーん、やりたいこととしてはいっぱいあるんだけど……」
そもそも、前世の頃もダンジョン化は色々としてきた。
洞窟や森をダンジョン化したり、時には火山をダンジョン化したりとか、色々と手掛けてきた。
街まるごとは……流石にやってこなかったけど、街の周囲には手を出したことがあるね。
「ただ、気をつけないと、実際の土地に作るっていう意味がなくなっちゃうからね」
「……? どういうことですか?」
「今だって、スマホっていう起点はあるけど、自分の身体でダンジョンに入っているでしょ? 要するにそれとの差別化は何か考えなきゃいけないんだよ」
例えばだけど僕のスキルを使えばダンジョン空間内にゴーストタウンを再現することだってできる。
「現実にちゃんとあるっていうのをちゃんと強調できるような内容にしないといけないよね」
「なるほど……差別化は確かに重要ですね」
そこが今回の重要なポイントかな。
「あと気をつけなきゃいけない点として、死人はまずいってところかな……」
「……確実にダンジョンを作った人間が罪に問われますね」
まぁ、つまり僕のことだよね。
「命をかけた戦いにならないのはちょっと残念だけど、お兄ちゃんが捕まるのは絶対に駄目!」
うん、まぁ、その生命をかけた戦いは今のところはなしの方向で。
「しかし、そうなると、どういうダンジョンにするのかが難しいですね」
里楽さんが悩み始める。
「そもそも、飛鳥さんが作ったダンジョン空間とリアルな空間をダンジョン化したものではどういう違いが出るのですか?」
「……うーん……どっちも制御っていう意味だと大差ないけど……強いて言うならダンジョン化した空間は解除しても現地に残るってとこかな?」
僕が作ったダンジョン空間は消したらそれは消えてしまう。
でも、現地をダンジョン化してもう一度ダンジョン化を解除してもその土地が消えることは当然ない。
「現実を書き換えているようなものというわけですか」
厳密には違うけどそんな感じかな。これ以上詳しい説明してもわからないだろうし。
「なるほど……現地に残る……つまり外からも入れるということですか?」
「あー、それは確かにできるね、逆に遮断することもできるけど」
その土地に本当にあるダンジョン、そこに行くことで入ることができるというダンジョンは確かに魅力的かも。
「ただ、それだと少し荒れそうですね」
「今の冒険者は世界中にいるからね…多くが日本人だし」
日本の冒険者にわざわざアメリカに行ってダンジョンに入ってとか言いづらいよね。
いや、それが一番楽ではあるんだけど……
「その土地が現実にあるものだと実感させることができれば……」
うーん、と2人して悩んでしまう。
えっ? もう1人? 雛香ならいつの間にか、僕の後ろに周って背中に抱きついているよ? 何してるんだこいつ。
しばらく考えて、1つ案を思いついた。
「……少し思いついたことがあるんだけど……」
ただ……
「ちょっと大変そうだなぁって思っててね」
「……どういう案なんですか?」
簡単な話ではあるんだよ。
「……ちょっとした不定期イベント会場みたいな感じかな?」
「イベント会場?」
里楽さんは首をかしげている。
「まぁ、簡単に言えば、不定期にイベント開催してアプリを使っている冒険者に参加してもらうっていう感じ? もちろん全員は無理だけど」
現実の空間っていうのは、限りがある、当然全ての冒険者が参加することはできない。
だから必然的に参加者は選ぶ必要がある。
「そこで朝から晩までの街防衛イベントみたいのを開催するとか。もちろん、報酬は考えなきゃいけないけど」
「なるほど……ちょっとした日帰り旅行みたいな感じになるわけですね」
「そういうこと、んでイベントを開催してない時は出入りを自由にしておく。そうすれば、本当にある土地って感じが出るんじゃないかな?」
最近ではアニメで見た場所を聖地巡礼なんて言葉もあるくらいだ。
これだったらイベントに参加したら本当に旅行しに行っているような感覚になるんじゃないかな?
「しかし、それだとそのイベントに参加できなかった人からは不満が来ませんか?」
街の規模にもよるだろうけど、参加できなかった人からは不満がくるかもね。
「人絞る関係で不満はあるだろうけど、例えばイベントの様子をリアルタイムで生放送したりとか、後は誰が活躍するかを予想してもらうとか、そういう視聴者参加型にすれば多少は不満も減るんじゃないかと思う」
「ある意味で自分たちも参加している感覚になるわけですか」
ネットの生放送っていうのは結構な力があると思う。
生放送で見ただけで、やっていないゲームでもなんとなくやった気持ちになったりできるし、応援したりすれば満足感も得られるしね。
「もちろん、マンネリにならないようにイベントの内容はじっくり考えなきゃいけないけどね」
その辺が大変そうだよね。
「しかし、いい案なのではないでしょうか? 確かに今との差別化もできています」
良かった。里楽さんにも受け入れられたみたいだ。
「で、ここで問題なんだけど……」
イベントの内容は考えれば良くて、それ以上に大変なことがある。
「……複数人の同時参加ということですね」
そうこのイベントという案は複数人が同時に同じ空間にいる必要がある。
「マルチ対応……どうするかなぁ」
これが一番大変な問題だ。
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