第14話 従姉弟

「さぁ、着いたよ」


 車を走らせること20分程度、フィンさんが車を止めた。


 車から降りて、眼の前にあるのは大きな家。

 ここは、レインさんとフィンさんの家だ。

 アメリカに来た時はいつもこの家に泊まることになっている。


「里楽さん、大丈夫?」


 隣にいる里楽さんに声をかける。


「……大丈夫です」


 大丈夫じゃなさそうだね。歩くのもつらそう。


「はぁ……しょうがない、ちょっと失礼するよ」


「えっ……飛鳥さん!?」


「恥ずかしいのはわかるけど、ちょっとじっとしててね」


 里楽さんを抱き上げた。いわゆるお姫様だっこ。


「雛香、僕の荷物をお願い」


「……うん……その代わり後で雛香にやってもらうからね!」


 どうしてそうなるのか。

 いや、今は里楽さんを家に寝かせるのが先かな。


「飛鳥、こっちだ」


 レインさんが既に家の鍵を開けてくれてる。


「ありがとうございます」


 里楽さんを抱えたまま、家の中へ入る。


「泊まる部屋はいつもの部屋でいいですよね」


「ああ、そうだね。飛鳥たち用に2部屋を用意しておいたから好きに使ってくれ」


 あ、そっか。いつもだったら、僕と雛香だけだから1部屋でいいんだけど、里楽さんと一緒の部屋にするわけにいかないよね。

 僕は言われた通りに、並んだ2部屋のうちの1部屋に里楽さんを寝かせた。


「……ご迷惑をおかけします」


「気にしないで、ゆっくり休んでね」


 体調不良になるのは仕方ない。

 機内で寝てないってのもあるだろうけど、時差ボケもあるだろうしね。

 里楽さんに布団をかけて、僕は部屋から出た。


「あ、お兄ちゃん」


「雛香」


 ちょうど、前から雛香が僕のスーツケースを押してきた。


「僕たちはこっちの部屋だ」


「2人っきりの部屋だね! ちなみにベッドは?」


「もちろん別」


「ちぇっ、残念」


 流石にこの歳になって同じベッドは駄目でしょ。

 いや、別に妹を意識してるわけじゃないけど。


 ちなみに、里楽さんを寝かせた部屋もベッドが2つある。

 というか、本当はもっと空いている部屋があるんだけど、いつものことで雛香と一緒の部屋になるんだよね。

 幼い頃の習慣って恐ろしい、今まで気にしてなかった。


「……雛香、里楽さんと同じ部屋にするつもりは……」


「ない!」


 だよなぁ……


「雛香はこっちね! えやっ!」


 部屋の中へ入るやいなや、雛香はベッドに飛び込んだ。

 行儀が悪い……が気持ちはわかる。


「ふぅ……」


 僕もなんとなくベッドに寝転がった。

 やっぱり、なんだかんだ僕も飛行機の移動で身体が疲れてたんだろう。

 思わず、瞼が重く……


「……いや、流石に駄目だろ」


 完全に閉じきる前に起き上がった。

 従姉弟の家といえど、いきなり部屋で寝るのはね。


「ひとまず、改めて2人に挨拶してくるか」


「あ、雛香も行く!」


 雛香もベッドから起きてきて、僕と一緒に部屋を出た。


「おっ? 戻ってきたね。お嬢ちゃんは大丈夫かい?」


 リビングまで行くと、レインさんがソファに座っていた。


「ええ、もともとあまり体力のない子なので、疲れたんでしょう」


「そうかいそうかい、それじゃあ、休めば回復するかね」


「ええ、多分大丈夫だと思います」


 病気とかではないはずだし、眠気さえなくなればポーションを飲んで身体的には元気になるはず。


「飛鳥、雛香も座りなよ。コーヒーとジュースを入れてきたよ」


「あ、フィンさんありがとうございます」


「フィン兄、ありがとう!」


 キッチンからフィンさんが飲み物を持ってきてくれた。

 僕らもそれを受け取ってソファに座る。


「そういえば、伯父さんと伯母さんはいないんですか?」


 家に入ってから、姿を見てないんだけど。


「ああ、2人は仕事で出張中だから、しばらく帰ってきてないね」


「かれこれ半年くらいは帰ってないんじゃないかな?」


 そんなにか……まぁ、2人共忙しい人だからなぁ。

 ちなみに、伯父さん伯母さんは揃ってデザイナーをやっていて、世界中を飛び回っているのだ。


「ってことは雛香たちがいる間は帰ってこないの?」


「うん、まぁそうなる可能性が高いかな」


「そっかぁ、ちょっと残念」


 まぁ、忙しいものは仕方ないよな。


「今はこの家はフィンさんが1人で住んでる感じですか?」


「うん、そうなるね、姉さんもたまに泊まりに来るけど、すぐにまた仕事に行っちゃうし」


「こっちに帰ってきた時は、なるべく顔を出すようにしてるが、やはり色々飛び回ってることが多くてな」


 レインさんも相変わらず忙しくしているみたいだ。

 ちなみに、レインさんの職業は……


「えぇ! じゃあ、レイン姉もすぐにまたどっか行っちゃうの!?」


 久しぶりに会ったのに、と雛香が嘆く。

 それに対して、レインさんは首を振った。


「いや、今回はしばらく休暇をもらったよ。少し気になることもあるしな」


 気になること?


「そっか! 良かった! 後で雛香の成果も見せるからね!」


「ああ、楽しみにしておくよ」


 レインさんの気になることってのが、僕も気になるけど、まぁ、それは後で聞くとしよう。


「あとは……僕らの両親のこととか聞いてます?」


 そもそも、僕らにアメリカに遊びに来ないか? って誘った母さんたちなんだけど。


「ああ、明日にはこっちに着くって聞いてるよ。仕事もしばらく休みを取ったってさ」


「あ、そうなんだ」


 どうせ合流するって思ってたから、聞いてなかったけど、これで久々に家族勢揃いできるね。


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GW投稿最終日! と思ったら明日も休みだと気が付きました。

というわけで、明日まで延長2話投稿延長します。

あ、あと20万PV超えました! ありがとうございます。

引き続きよろしくお願いいたします。

あ、☆の方も引き続きよろしくお願いいたします。






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